第3話 空が割れた日 8 ―激突!!ガキセイギVSシードル!!!!!―
8
「ボッズー、どうやら俺達見付かっちまったみたいだな」
「どうやらそうみたいだなボッズー」
二人は気付いた。敵が自分達を見付けた事に。そう、シードルが先端を向ける飛翔体はガキセイギ達である。
しかし、二人は慌てない。
ビルの高さを優に超えて飛んでいるのだ。快晴の空の中を飛ぶ真っ赤な存在を『見つけるな!』という方が無理な話だと二人共が分かっていた。
が、もう少し近付きたかった。
例えば、今は親指程の大きさで見えるシードルが、手のひら程になるくらいには。
しかも、シードルは謎の震えを見せている。
「ヤバいな……あれは何かをしてくるぞボッズー!」
この震えは"何かをしてくる"前兆だと明らかだった。
「何をしてくるのか、"ゾワゾワ"で思い出せてないのか?」
「ダメだボズ、分かんないボッズー」
震えの真相は分からない。だが、二人の認識は同じであった。
「そっか、まぁあの感じだと仕掛けてくるよな……攻撃を」
「だな、めっちゃ籠めちゃってる感じだボッズーね……弾丸を」
二人は震えを攻撃の前段階だと捉えた。
この解釈は正しいだろう。何故なら、シードルが震える度に先細りの先端には、白く目映く光る球体が形成されていくのだから――球体の光はシードルが全身に纏う白い光と同じ物に見える――震える度に球体は大きくなり、熱を持っていくとも分かる。
球体の周りはユラユラと陽炎の様に揺れる。揺れは球体が大きくなる度に強くなる。『そんな物を作ってどうするつもりなのか?』そうシードルに問い掛けなくても、答えは明白、攻撃しかない……そしてボッズーの言葉通りに、生み出される球体が『弾丸』ならば、いつ発砲されてもおかしくない段階に既になっているだろう。
「どうするボズ? 逃げるか?」
ボッズーは聞いた。
「ん? 逃げる?」
セイギは首を傾げた。
「いやぁ、逆だぜ! ブッ飛べ! アイツの正面に向かってな!!」
「うん! そう言うと思ってたぜボッズー!!」
『逃げるか?』とボッズーは聞いたが、この質問はボッズーが引っかけただけだ。ボッズーは分かっていた、セイギが何と答えるのか。二人の意思は同じなのだ。一ミリのズレもなく同じなのだ。だからセイギの考えはボッズーにも分かる。
「ブッ込むぞボッズーッ!!」
ボッズーは躊躇う事なく、球体を作るシードルに向かって真っ正面から突っ込んだ。
――しかし、シードルも負けてはいない。
セイギを見付けたシードルの震えは残像を残す程に激しい。その激しさは仲間を招いた。震える仲間に気が付いた他のシードルもセイギ達に先細りの先端を向けた。
――それでもボッズーはスピードを緩めはしない。緩めるどころか加速させる。
「行くぜぇ!!!」
ボッズーの加速と共にセイギの士気も増していく。シードルとの距離が一気に縮まる。残り数メートル。未だセイギの大剣が届く距離ではないが、あともう少し、あともう少しで届く。
ドォーーンッ!!!
……が、先に仕掛けたのはシードルだった。シードルは大砲を撃った。シードルが放った球体がセイギに向かって飛んで行く。
「来たかッ!!」
球体は一気に迫るが、セイギが怯む事はなかった。怯むどころかセイギは、放たれた球体を避けようともせずに真っ正面から迎え討つ。
「ドリャァッ!!!」
横一線――セイギは大剣を横に振り抜き、放たれた球体を真っ二つに斬った。
そして不思議にも、斬られた球体は光の粒となり大剣の刃に吸い込まれていく。
「まだまだ行くぞッ! ボッズー、突っ込め!!!」
「OKボッズー!!」
球体は連発が出来ない様だ。球体を撃つとシードルの震えは大人しくなり、震え初めの微震に戻った。
この隙をセイギとボッズーは逃しはしない。
「行くぞボッズーッ!!!」
ボッズーは"上の翼"に風を吸い込み、"下の翼"で噴出した。シードルとの距離は一瞬にして鼻先が突き合う程の距離になる。
近付いてみてセイギは知った、シードルの体長はセイギの倍以上、おそらく五メートルは超えていると。しかし、そうだとしてもやはり、セイギは怯まない。
「テヤァーーー!!!」
セイギは大剣を振り上げると、シードルの先端に向かって勢い良く振り下ろす。
縦一線――セイギの斬撃はシードルの先端を割った。否、先端を割っただけでない。そこから生まれた亀裂はシードルの全身に稲妻が如く走っていき、直後、激しい爆発が起こった。
「ヨッシャッ!!!」
シードルが木っ端微塵に爆発するとセイギは小さなガッツポーズを取った。けれど、喜ぶにはまだ早いと知っている。敵はまだいるのだ。だからセイギは止まらない。一体目を倒してもすぐに次の標的に向かって飛んだ。
すぐに動いたのは敵も同じくだ。仲間がやられても怯える事は無かった。
現在、セイギの眼前にいるシードルは三体。残った三体はいつの間にやら作り上げていた球体を、セイギに向かって一斉に発射する。
「ボッズー、避けるぞ、潜るッ!!!」
「ほいやっさ!!!」
敵が攻撃を発射したと知ると、セイギはボッズーに向かって叫んだ。
指示を受けたボッズーは翼の形を素早く変化させる。ジェット噴射が如く飛ぶ四本の翼から、優雅に羽ばたける二本の翼へと――ボッズーが《ビュビューンモード》と呼ぶ四本の翼はスピード重視であり、動きは直線しか取れない。逆に優雅に羽ばたける二本の翼は極めの細かい動きが取れる、敵の攻撃を避けるのならば二本の翼の方が良いのだ。
そして、セイギとボッズーは"空を潜った"。
『潜る』……それは空を飛んでいる状態では不適切な言葉だろうだが、セイギとボッズーの行動に適切な言葉はこれしかない。セイギは全身を伸ばして海に飛び込む様にして、言葉通りに空を潜ったのだから。
空を潜り三体分の攻撃を避けた二人は、そのまま優雅に泳いだ。まるで人魚の様に。優雅に泳いで向かうのはシードルの真下。敵は続け様の攻撃は出来ない、敵には隙が出来ている。
今こそチャンスだ。
ボッズーは再び翼を、四本の《ビュビューンモード》へと変えた。
セイギからの指示は無い。
指示は無くても、ボッズーとセイギの意思の疎通は完璧。セイギが何を求めているのか言葉を貰わなくともボッズーには分かるのだ。
ボッズーは翼を四本に変えると、再び"上の翼"で風を吸い込み、"下の翼"で噴出した。
「トォォォリャ!!」
セイギはジェット噴射が勢いで急上昇。
真下を取ったシードルに向かって大剣を突き上げる。
セイギの斬撃は突きも強い。シードルの胴体は突き破られ、無惨やな大爆発――破壊から爆発までは一秒程の間が空く、その隙にセイギとボッズーは上昇を続け、残りの二体を足元に見る場所へ移った。
「フンッ!!!」
セイギは休まぬ、続け様に動く。
セイギは三体目の標的と定めたシードルに向かって飛んだ。
「ドリャァ!!!」
セイギは大剣を袈裟斬りの形で振り、三体目も破壊した。目にも止まらぬ速さだ。二体目を破壊してから三体目を破壊するまでは僅かばかりの時間しか経っていない。
……が、しかし、『僅かばかりの時間』もシードルにとっては十分な時間だった様子。何故ならば、四体目は既に攻撃の準備を整えてしまっていたからだ。
ドォーーンッ!!!
新たな球体を作り出した四体目は、三体目を破壊したばかりで未だ剣を振り下ろす格好でいるセイギに向かって攻撃を発射した。
「!!!」
敵との距離は遠くない。近いくらいだ。球体が物凄い速さでセイギに向かって飛んでくる。
「うわっとッ!!」
間一髪、セイギはひらりと体を翻し、球体を避けた。
「あっぶねぇ!!」
寸前だ、危なかった。少しでも避けるのが遅ければ直撃していただろう。しかし、セイギはこんな事で肝を冷やす男ではない。まだまだ行くのがこの男だ。
敵の攻撃は連発は出来ない。震え始めてから球体が作られるまでには十数秒ほどの隙が生まれる。
「オリャァーー!!!」
セイギは隙を逃さない。
ボッズーの噴射で一気に四体目に近付き、セイギは大剣を振るった。激しい爆発が起こり、四体目も塵となり消える――
セイギによって、シードルは全滅した。
世界が破滅する驚異は去り、人類の平和は守られた――と、成れば良い。だが、敵は世界を破滅に導く者だ。そう易々と勝利は得られなかった。
「あれは……!!」
ぬか喜びの暇すらセイギには与えられなかった。四体目を倒した直後、セイギの目の隅に映る紅の穴に何かが光ったのだ。
「おいおい、来たか……」
「そりゃまだいるかボッズー!!」
セイギとボッズーは紅の穴に視線を移した。
すると二人の瞳に映った。それは増員。紅の穴から続々と、無数のシードルが現れたのだ。




