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ガキ英雄譚ッッッッッ!!!!! ~世界が滅びる未来を知った俺たちはヒーローになる約束をした~  作者: 立神ビーグル
第一章 正義の英雄の帰還 編

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第3話 空が割れた日 6 ―正義の英雄ッ!―

 6


「貴方はどんな時でも笑うのですね」


『俺を信じろ!!』と言われ、正義の旧友は問い掛けた。

 だが、彼もまた小さく笑った――


「貴方の笑顔は、やはり希望を与えてくれるものだ」


「ん? 希望? 俺の笑顔が? なんだそれ、どゆ意味?」


「いえ、深く考えないで。でも、私は知っています。また私は、貴方の笑顔によって希望を取り戻しました。やはり貴方を選んで良かった。本当に良かった……」


 噛み締める様に言った旧友の声は涙ぐんでいる様にも聞こえた。

 そして、彼は言った。


「分かりました。私は貴方を信じます。きっと勝てると……」


「へへっ! あぁ、任せろって!!」


 正義はやはり笑った――しかし、旧友との再会はもう終わりにしなければならなかった。


「あっ――」


 ……と、旧友が突然、叫び声をあげたのだ。


「ん? どうした?」


「もうこんな所まで来ていたのか……」


「え?」


「もうすぐ、空が……空が割れます。正義さん、今から貴方を肉体へと戻します! 宜しいですね?」


「来んのか……遂に!!」

 

 質問など不要だった。正義の答えは決まっている。


「あぁ、頼む! 戻してくれッ! 始まるな、戦いが!! キミに貰ったガキセイギの――英雄の力で、俺は戦う!!!」


 力強く答えた正義の瞳には真っ赤な炎が燃えていた。それは、敵を目の前にして赤井正義の《正義の心》が燃え始めた(あかし)だった。


《正義の心》――それは英雄の(あかし)であり、悪しき心を討ち倒し、絶望を希望に変える聖なる力。


「そうです。始まります、私たちの……戦いが。ガキセイギ、頼みましたよ! 世界を、必ず救って下さい! 必ず倒して!!」


 正義の瞳に宿った炎は旧友にも見えたのだろう、共鳴する様に旧友の語気は強くなる。


「あぁ、負けやしねぇ! 絶対に勝つッ! だから見ててくれ俺達の戦いを!! そして、平和になった世界で俺達はまた会おうぜッ!!!」


 旧友に鼓舞された正義の心は、より熱く燃え上がる。


「ありがとう……貴方を選んで本当に良かった……さぁ、今から貴方の魂を肉体に戻します」


「おう!! ………あッ――」


 正義は激しい風を受ける感覚と強い重力を受ける感覚を再び感じた。


「うッ………うわッ!!」



「さようなら」



 二つの感覚に襲われた直後、純白の世界は蜃気楼の様に揺れ始め、旧友の声は遠くへと消えていった――


 ―――――


「うわッーーーー!!!!!」


「ひぇっ!!!」


「ワワワワッ!!!」


 気を失っていた正義が突然起き上がると、『正義を起こそう』の一心で懸命に正義を揺さぶっていた希望とボッズーは目を丸くして驚いた。

 希望は草原に尻をつき、ボッズーは飛び上がった。


「やっと起きたかボッズー! 何で寝てた、何が起こったんだボッズー!」


 驚き終わったボッズーは、怒る様な口調で正義に問い掛けた。


「会ってたんだ」


「会ってただボズ?」


「あぁ」


 正義が旧友と会っていたとボッズーは知らぬ。「どういう意味だ、ちゃんと話せボズ!」と再び問い掛ける。

 ……が、正義も理由を話さねばとは思う。思うも、旧友は『もうすぐ空が割れる』と言った。今は時間がない。「ごめん、今は無理だ」と答えるしかなかった。


「今は無理ってなんで――」


「時間がないんだ。ボッズー、よく聞け、これから空が割れる。ぐずぐずしてる暇はない、まずは希望を非難させるぞ!」


 正義は勢い良く立ち上がり、それから希望の手を取った。


 草原に尻をついていた希望を立ち上がらせて正義は歩き出す。向かうは輝ヶ丘の大木、一度目の轟音が鳴り響いた時に正義は空を見上げる為に大木から離れていた。正義は再び大木に近付く――そんな正義に向かってボッズーは質問を続けた。


「空が割れるって……俺達はそれを防ぐ為に頑張ってきたんだろ? 割れちゃダメだろ、諦めるのかボズ?!」


「諦めはしねぇよ、でも時間が変わった、でも俺達はまだ五人揃ってない。お前だって、俺達が揃ったら何が出来るのかを"ゾワゾワ"で思い出せてないだろ?」


「そ……それはそうだけどボズ!!」


 ――『ゾワゾワで思い出す』、正義の旧友は過去に『私の代わりにあなた達を導いてくれる存在』とボッズーをいった。この言葉の意味は、英雄に関してや、敵である《王に選ばれし民》に関しての知識を、ボッズーが豊富に持っているあるからである。しかし持っている知識の全てが"はじめから閲覧可能"ではなく、記憶喪失か、深いド忘れかの様に、何故か脳の中で眠ってしまっていて、思い出す切っ掛けを得なければならなかった。切っ掛けを得た際にボッズーはゾワゾワとした寒気を覚える。その為、正義とボッズーは眠った知識が甦る事を『ゾワゾワ』と呼んでいる。


「俺達を英雄に選んでくれた男の子は、俺達が力を合わせるって何をどうすれば良いのかをボッズーが教えてくれるって言ってた。でも、お前は今日まで何も思い出せなかったよな? だから俺とお前は『2月15日の17時に輝ヶ丘の大木に俺達五人が揃う事こそが、眠った知識が甦る切っ掛けなんじゃないか』って仮説を立てた。でも、その条件はもう揃わなそうだ。これじゃ《王に選ばれし民》の出現を防ごうにも防げない!」


「だからって諦めるのかよボッズー!」


「だから諦めないって。詳しくは後で話すけど、さっきまで俺は、俺達に力をくれた男の子に会ってたんだ。そこで方向転換を決めた、俺は戦う。防ぐんじゃなくて、《王に選ばれし民》をぶっ潰すって決めたんだ!!」


「会ってきた? ううん、疑問はそこじゃない、ぶっ潰すって俺達に出来るのかよボズ? 《王に選ばれし民》は強大な存在だぞボッズー?!」


「出来るか出来ないかじゃない、やらなきゃいけないからやるんだ!!」


 正義は大木の前に立った。


「だからまずは、希望を安全な場所に避難させる。今からシェルターに連れてったんじゃ間に合わないからな」


「安全な場所って、まさか"秘密基地"かボズ?」


 ボッズーは大木を見上げた。


「秘密基地?」


 希望が聞いてきた。

 不思議なワードが飛び交う正義とボッズーの会話を、それこそ不思議そうな顔で聞いていた希望だったが『秘密基地』というワードは流石に分かった様子。


「あぁ、そうだ。秘密基地だ。今から希望には俺達の秘密基地に入ってもらう。秘密っつーんだがから、これも内緒な!」


 正義は希望に向かってニカッと笑うと、大木の幹に腕時計の文字盤を押し当てた。すると、押し当てられた場所に木目調の扉が現れた。それは大人一人がやっと通れるくらいの幅の狭い扉。高さは二メートル有るか無いか。


「えぇッ!! なにこれ?!」


 希望は驚くが、正義は 「へへっ!」と笑い、木目調の扉のドアノブを回した。

 扉が開くと、その中は空洞かの様に黒く、何も無く見える。


「これって大木の中? なんで空洞なの?」


 希望は疑問を口にするが、正義は質問には答えない。代わりに別の回答を渡す。


「へへっ! 大木はな、俺達の秘密基地なんだよ。まぁでも、俺もまだ入った事ないけどな。でも、"ボッズーの記憶"から知る限りは快適な場所らしい。俺も後で行くからよ、先に入って待っててくれ!!」


 そう言うと正義は希望の手を引っ張り、無理やり大木の中に入れた。

 希望が入ると扉は独りでに閉まり、閉まると同時に扉は消えた。「うわぁ!」と希望が叫んでいたが、その声も扉が閉まると聞こえなくなる。


「あまりあの子に秘密を教えない方が良いと思うけどなボズ……」


 ボッズーはこの正義の行動が気に食わなかったらしく、グチグチとした口調で言うが、正義は気にしない。


「でも仕方ねぇ。そんな事より、お前はどうする?」


 正義は大木の下から進み出て、空を見上げた。

 見上げる先には、空に浮かぶ蜘蛛の巣状の亀裂がある。

 正義の顔は既に笑っていない。鋭い目線で亀裂を睨んでいる。


「どうするか……かボズ」


 ボッズーは正義についてきた。正義の横に浮かび、ボッズーも亀裂を見た。


「本当に、もう防げないのかボズ……」


 亀裂は脈打つ様に動いている。

 ボッズーも亀裂を睨み、呟く。


「俺、考えてみた事があったボズ。もし、今日五人が揃わずにお前と二人だったらって……それで、空が割れてしまったらって」


「それで? 考えて、お前はどんな答えを出したんだ?」


 問い掛けられると、ボッズーは亀裂から正義に視線を移した。眼差しの鋭さは保ったまま、鋭く正義を見る。


「戦う……そう思っただボズよ」


「へへっ! だったら――」


「でも、それは机上の空論。頭でやるって考えただけ。《王に選ばれし民》は俺の頭の中に眠ってた知識で知る限りは、かなりヤバイ奴等だボズ……それにまだ思い出していない事もいっぱいある。奴等が複数人で構成されている集団だとは思い出せていても、どんな成員がいるのかはまでは思い出せていない……やるにしても、かなり苦しい戦いになるだろうなボッズー。それでもお前はやるのか?」


 ボッズーが正義に鋭い眼差しを送る理由は、事前に分からせなければならない注意があった事と最終確認を行いたかったからだ。

 だが、ボッズーに注意と確認をされても正義の考えは変わらない。彼の覚悟は決まっているから。


「その質問、する必要あるか? 苦しい戦いになる、そんなの分かってるよ。俺はこれまでの六年間、『《王に選ばれし民》を出現さけちゃいけない』……それだけを考えて生きてたくらいだからな。敵がヤバイのは知ってる、知ってて言ってるんだ。今更、『やっぱやーめた!逃げよう!』……そう言うと思うか?」


 正義が問い掛けると、ボッズーは首を横に振った。

 この言葉を聞いたボッズーの鋭い視線は正義から再び亀裂に移った。


「いや、言わないだろうなボズ。この六年間、俺はお前と生きてきた。だから言わないのは分かってただボッズー」


「じゃあ、聞くなよって!」


「でも聞きたかったんだボッズー、俺はお前達を導く存在だからな! 最終確認はちゃんとやるんだボッズー!」


「へへっ! そっか、でぇボッズー? お前はどうすんだって、俺に付き合ってくれるのか?」


 この質問にボッズーは笑った。

 そして、正義と同じ言葉を口にする。


「おい、その質問する必要あるかボズ?」


 勇ましい表情を浮かべて、ボッズーは腕を組んだ。


「俺はお前が選んだ道ならどこまでもついていく、そう決めてるボズ! お前の覚悟が決まってるなら尚のこと! ……だけど、最後にもう一つ確認、お前以外の四人は空が割れたら怖じ気づいて――」


「来ないかもってか?」


 正義はボッズーの言葉を遮った。

 遮り、自信満々に「へへっ!」と笑う。


「来るよ! 勇気も愛も、夢も優も! アイツ等はそういうヤツだ! 必ず来る、俺達と一緒に戦ってくれるさ、絶対にな! 俺を信じろ!!!」


 ピキピキ……

 

 この時、"空の欠片"が一つ落ちた。


「来るか、そうだなボッズー!! 皆、良い奴だもんなボッズー!!」


「あぁそうだぜ! んじゃ、お喋りは終わりにしようぜ……空が割れる、《王に選ばれし民》をぶっ潰すぞ!!!」


「OKボッズーッ!!!」


 空の欠片が二つ、三つ、ひらひらと落ちていく……


 この光景を勇ましく睨み、正義は赤いダウンジャケットの袖を捲った。大きな文字盤のある腕時計を露出させる。

 そして正義は叫ぶ、それは決意を込めた雄々しい叫び、英雄としての己の名を呼び、英雄として戦う自分自身を呼び起こす為の叫びである。


「レッツゴー!! ガキセイギ!!!」


 決意を込めた雄叫びをあげて、正義は腕時計をはめた左手を顔の横まで振り上げた。と同時に、右手は弧を描く。大地を指差し、風を指差し、大空を指差し、顔の横に構えた左手に向かって振り下ろす――腕時計の文字盤が叩かれた。

 叩かれた文字盤は開く、開くと生まれた空洞から半透明の赤いタマゴが現れる。現れた赤いタマゴは空に向かって飛び上がった。飛び上がりながらタマゴは大きさを変えていく。手のひらに収まる大きさから、正義の全身を包める程の大きさに。巨大化するとタマゴは急降下、正義の体を包み込んだ。正義を包んだタマゴは半透明ではなくなり、実体を持った様に真っ赤に染まる。真っ赤に染まるとタマゴの上部にはヒビが入り、


「ハァッ!!」


 気合いの声と共にタマゴは割れた。タマゴの上部から正義が飛び出したのだ。飛び出した正義は空中で回転し、草が往々と繁る草原に着地する。

 だが、タマゴの中から現れた正義は正義であって赤井正義ではない。

 全身はメタリックレッドに輝くボディスーツに包まれ、笑顔の似合う少年の顔は真っ赤な仮面に覆われている。

 彼は"変わった"のだ。《正義の心》を熱く燃やし、悪と戦う《正義の英雄》に――その名は《ガキセイギ》。

 これこそが正義が与えられた(ちから)。選ばれた者としての(ちから)。英雄としての(ちから)である。


「ボッズー、行くぜッ!! 決めるぜッ!!!」


 "変身"を終えたガキセイギは叫んだ。

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