―始まりの日― 3
6年前――
男の子が俺の手を離した時、俺は流れる涙を拭いながら決意したんだ。
世界は俺が救う……って。
俺だけじゃない。勇気も、愛も、夢も、優も……五人が五人共、決意していた。
俺達は男の子に選ばれて、そして自分自身で選んだんだ。"英雄"になる道を。
「6年後の2月15日の17時……あなた達は再びこの場所に、"輝ヶ丘の大木"に集まって下さい。そして、この"腕時計"を使うのです。腕時計はあなた達に"力"を与えてくれます」
男の子はそう言って、俺たちに大きな文字盤の付いた腕時計をくれた。
「敵は"空を割って"この世界に現れます。その名は《王に選ばれし民》……強大な存在です。絶対に、この世界への出現を許してはなりません。もしも許してしまえば、その時は世界の滅びが待っているだけですから」
「許してはならないって、どうすれば出現を止められるの?」
……って俺は聞いた。
「あなた達五人が力を合わせれば良いのです。"空にヒビ"が、"空が割れる兆候"が現れたその時に五人が力を合わせれば、そうすれば《王に選ばれし民》の出現を阻む事が出来ます」
「力を合わせる……それってどうやって?」
「6年後にあなた達がこの場所に揃った時、この子が教えてくれますよ」
男の子は俺に渡した腕時計の文字盤を叩いた。
そして叩かれた文字盤は開いて、中からは小さなタマゴが出てきた。
「このタマゴが孵化すれば、私の代わりにあなた達を導いてくれる存在が生まれます。彼が教えてくれるのです」
男の子は俺にタマゴを渡した。
受け取ったタマゴはとても暖かく、力強い存在だと俺は察した。
「忘れないでいてください……この約束を」
「うん、分かったよ……俺やるよ!勇気、愛、夢、優、忘れないよな。6年後の2月15日の17時、俺たち五人はまたこの場所に集まるんだ! この、輝ヶ丘の大木に! そして、絶対に世界を救うんだ!!」
こうして、俺達は約束を交わした。
それから一年後、俺はばあちゃんの介護のために母ちゃんの田舎に引っ越したんだけど、この日に交わした約束を一日だって忘れはしなかった。
固い決意を胸にずっとずっと生きてきた。英雄として世界を救う準備をしながら。
それは俺だけじゃない。きっと、勇気も、愛も、夢も、優も……みんなそうだ。
そうだよな? みんな?




