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ガキ英雄譚ッッッッッ!!!!! ~世界が滅びる未来を知った俺たちはヒーローになる約束をした~  作者: 立神ビーグル
第一章 正義の英雄の帰還 編

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第2話 絶望を希望に変えろ!! 11 ―俺の名前は―

11


 少年達は風を切って飛んだ。

 真下を見れば木々が広がっている。輝ヶ丘の大木に向かって輝山の上を飛んでいるからだ。


「輝ヶ丘の大木が想い出の場所だボズか?」


「うん、小一まではお父さんとお母さんがよく遊びに連れて行ってくれたんだ。輝ヶ丘の大木は僕にとって、お父さんとお母さんとの想い出の場所。だから、たまに行きたくなるの」


 タマゴの飛行は安定している。いつしか三人は会話を楽しんでいた。


「そっかそっか、実は俺も昔はよく遊びに行ってたんだぜ、輝ヶ丘の大木は俺にとっても想い出の場所だ!」


「お兄ちゃんもなの? それじゃあ僕達、昔にも会った事があるかもね!」


「あぁ~確かにあるかもな! 俺が輝ヶ丘から引っ越したのは五年前だから、小一まで行ってたなら、もしかしたら会ってるかもな!」


 空を飛び始めてから、少年は男の子の年齢を聞いた。男の子は十一歳、再びの偶然として少年の妹と同い年であった。


「そう考えると、僕を誘拐した男達にも感謝できるなぁ」


「えっ感謝? 何でだボズ?」


 男の子の発言にタマゴが驚くと、男の子は口を大きく開いて笑った。


「だって、あの人達に誘拐されなかったら、お兄ちゃん達と仲良くなれてなくて、こんな会話も出来なかったでしょ?」


「う~ん、そうかもだけど誘拐されたのは感謝しちゃダメだボズよぉ」


「まぁね、確かに!」


『確かに』と言いながらも、男の子は笑顔を消しはしなかった。

 その逆で直後には更に大きな笑顔になってしまう。何故なら、男の子を少年が褒めたからだ。


「へへっ! 俺は良いと思うぜ、何事も良い風に考えれば、きっと人生も良い方向に行く筈だ、ポジティブなのは良い事だぜ!」


「だよね、だよね! 僕の長所はポジティブで明るい所だって、友達とかおじさんやおばさんにもよく言われるんだ……あぁでも、そんな僕でも一個心配な事があるんだ」


「心配事? なんだ?」


 少年が聞くと男の子は「警察に行くの緊張してきた」と答えた。


「誘拐されたの感謝って言っても、やっぱり悪い人には捕まってほしいとは思うから、あの三人組の事をちゃんと警察に知らせようとは思うんだ。けど……警察署なんて行ったことないし、知らない人に囲まれて色々話しするのを考えるとお腹がキュッてしてくる……」


「そっか、でもな一人で行かなくても良いんだぜ。お父さんかお母さんと一緒に行けば良いんだ。秘密の事がなけりゃ、俺が一緒でも良いんだけどぉ」


「お父さんか、お母さんと一緒か……」


「あぁ、それだったら大丈夫だろ?」


 少年は励ますが、男の子は「はぁ……」と小さな溜め息を吐いた。


「じゃあ、やっぱり僕一人だ。だって僕のお父さんとお母さん死んでるからさ」


「え……?!」


 予想していなかった男の子の発言に少年は二の句が継げなかった。

 反対に男の子は溜め息を吐きはしても、特に言葉に影を纏う事なく会話を続けた。


「小一の冬に二人とも事故で死んじゃったんだ。だから今はおじさんとおばさんと一緒に住んでるの、はぁ……やっぱり僕一人で行かなきゃなのかぁ」


「だったら、おじさんかおばさんと一緒に行けば良いんだボズよ。ねぇ?」


 タマゴは敢えて驚きを見せなかった。普通に会話を続ける。だが、少年の方はタマゴからの問いにすぐには答えられなかった。


 ― だからか……


 少年は心の中で呟いていた。


 ― 輝ヶ丘の大木が"お父さんとお母さんとの想い出の場所"ってそういう意味だったのか……


「……」


「おい! 返事しろ!」


 少年が黙っていると、タマゴが少年の頭をクチバシで突いた。


「うわっ!! と……あ、あぁ、そうだな。おじさんかおばさんと行けば良いんだよ。だから― ―」


「う~ん……おじさんかおばさんとか。それはそれで問題だなぁ」


 少年は『だから大丈夫』と励まそうとしたが、男の子は少年の言葉を最後まで聞かずに俯いてしまう。更に両親の話をしていても特に変化を見せなかったその表情が曇りもした。


「問題ってなに? もしかして、おじさんとおばさんに苛められてるとか……」


 男の子の反応で嫌な想像が浮かび、少年の顔も曇りを見せる。しかし、


「ううん、それは違う」


 と男の子は首を横に振った。


「苛められてなんかないよ、おじさんともおばさんとも全然仲良いよ。でも、子供ながらに気を使うんだ。二人共いつも優しいけど、いつもやり過ぎるんだもん。二人共、お父さんとお母さんの代わりになろうってし過ぎるんだ。僕を大事にしようとし過ぎるんだよ……だから、僕は逆に気を使っちゃう。もっと普通で良いのに。二人の事大好きだしさ。きっと僕が誘拐されたって知ったら大騒ぎするに決まってる」


「好きなら良いじゃない、やり過ぎちゃうのはおじさんとおばさんの優しさだボッズーよ」


「うん、それは分かってるよ……でも、やっぱり憂鬱は憂鬱だよね。警察に行くのも、おじさんとおばさんに話しするのも。前言撤回だな、やっぱり誘拐なんかされなきゃ良かった」


 と男の子は再び溜め息を吐いた……が、


「あぁ〜!!」


 次の瞬間には溜め息は吹き飛ばされた。その理由は簡単だ。輝ヶ丘の大木が見えてきたからだ。


「見て見て! 大木が見えてきたよ!!」


 男の子は前方を指差した。


「僕、空から見るのなんて初めてだよ! やっぱり他の木と違って全然大きいね!」


 男の子が指差す木は、少年達の真下に広がる木々と比べると頭一つ、二つ、三つ………否、それ以上に大きくて『大木』の"大"の文字だけでは足りない、"巨"の文字を足さなくてはならない程に大きい、『巨大木』という言葉が相応しい木である。


「あぁ、空から見てもやっぱり目立つな、他の木に全然隠れてない」


「おっと、草原も見えたぞボズ、そろそろ降りるかボッズー!」


 男の子が大木を指差してから暫くすると、少年達の真下に広がっていた木々の群れは少なくなっていき、代わりに草原が広がり始めた。

 草原が見えるとタマゴは羽ばたきを緩めた。三人はゆらゆらと風に揺られながら下降していく。



「ほいっと!」


 草原に足が着くと、少年は男の子から手を離した。

 男の子は「わぁ~暖か~い!」と草原を駆け回る。


「へへっ! あったけぇよなぁ。俺はな、この草っぱの上だったら何時間でも寝てられるって思うぜ!」


 大木が立つ高台に生える草はまるで羽毛の様に柔らかい。男の子と少年の足をふかふかの草が包み込む。


「お前は何処でだって寝れるタイプだろうボッズー!」


「へへっ! そうだったかも……おっと!」


 タマゴが少年の発言を訂正していると一瞬だけ強い風が吹いた。その風は三人を歓迎するようにそれぞれの頬を撫でていく。


「くうぅ~~ッ! 良い匂いだぁ~!」


 少年は両手を大きく広げて深呼吸。風が運ぶ草原の草花の香りを味わい尽くす。


「そうだなぁボッズぅ~!」


「うん、優しい匂い。僕、ここに吹く風が大好き!」


 男の子は目を瞑って、風にそよがれる草花の様に体を揺らした。


「俺もだボズ、昔からこの風が大好きだボッズー!」


「それは俺もだぜ、この高台に吹く風もふっかふかの草っぱも昔から大好きだ! でも、やっぱり一番なのはアレだな!」


 少年は、草原の先に立つ大きな大きな木を見上げた。


「懐かしぃ〜昔っから何も変わっちゃいない! 相変わらずでっけぇなぁ〜!!」


 少年の目の前に立つ木はそれはそれは大きい。空から見ても巨大であったが、地上からならば尚大きい。全長は五十mを超え、幹の太さも三十mはある。幹から伸びる枝も勿論大きくて且つ太い。街路樹であれば枝の方が適したサイズであろう。枝から生える葉の色は濃くて、生命力にあふれている。地面から少し顔を出した根もまた太く、象の足に似ていて力強い。

 これが《輝ヶ丘の大木》である。

 大木が立つ場所は輝山(かがやきやま)の中腹にある町に面した高台で、大木は輝ヶ丘のどの場所からでも見る事が出来る。輝ヶ丘に住む人々からは昔々から『守り神様』と呼ばれて親しまれてもいる。輝ヶ丘の大木は輝ヶ丘という町を象徴する存在と言っても過言ではない。


「五年ぶりだな、これからまた世話になるぜ!」


 少年は大木に向かって歩き始めた。


 タマゴも同じだ。大木に向かって行く。


 男の子は大木の足下まで来ると、まるで吸い寄せられるかの様に大きな幹に抱きついた。


「キミは本当にこの木が大好きなんだボッズーね!」


「うん……」


 タマゴはすぅーと空中を滑る様に飛んで、男の子の頭の近くにとまった。タマゴに向かって頷いた男の子は目を瞑っている。その姿は母親の胸で眠る赤子の様だ。


「こうやって耳を寄せるとね、大木の声が聞こえる気がするんだ……ふふ、変な事言ってると思ったでしょ? でもね、本当なの。聞こえる気がするんだ」


「変だなんてそんなのないぜ、大木の声か、分かる気がするよ」


 少年は大木に背中を預け、男の子の隣に腰掛けた。


「へへっ! なぁ、お前も分かる気がするよなぁ……ボッズー?」


 少年はタマゴに向かって聞いた。"タマゴの名前を呼びながら"。


「ボッズー? お兄ちゃんもその口癖を使うの……って、違うか。それじゃあ『ボッズー』って、もしかして?」


 男の子は片目を開いてタマゴを見た― ―タマゴも男の子を見ている。


「うん、そうだボズよ。俺のことだボッズー! 俺の名前は《ボッズー》っていうんだ! ヨロシクだボッズー!」


 タマゴはフワッと浮かぶと、寝返りをうつように回転して少年と同じく大木に背中をつけた。


「ふふっ、そのまんまなんだね! とっても良い名前だよ!」


「本当ぅ? そんな風に言ってくれたのはキミがはじめてだボッズー、ありがとうだボッズー! ……って、そういえばキミの名前もまだ教えてもらってなかったなボズ。いつまでも『キミ』呼ばわりじゃ失礼だボズね、なんて名前なの? 教えてくれだボッズー!」


「あっ、そっか! 名前言ってなかったよね、あのね僕はね『ノゾム』だよ。希望って書いて希望のぞむ、《小野寺(おのでら)希望(のぞむ)》っていうんだ、これが僕の名前だよ!」


希望(のぞむ)かぁ、めっちゃ良い名前だな!」


 少年は男の子の……いや、希望(のぞむ)の名前を聞いてニカっと笑った。


 そして――


「へへっ! じゃあ次は俺の番だな! 名乗るなんてちょっと照れるけど、俺の名前は正義(せいぎ)、《赤井(あかい)正義(せいぎ)》だ! ヨロシクな!」


 少年はそう言うと、希望の頭をクシャクシャっと撫でた。





 その時だ……




「え……」


「なにこの音……」


「何だボズ……」



 穏やかな時間を壊すように雷鳴に似た轟音が鳴り響いたのは。




 この日の事を人類は忘れはしない、



 戦いの始まりを告げる轟く鐘が鳴り、



 目映き光が空を割ったこの日の事を……




 正義の英雄と、悪魔に選ばれた王の戦いが始まったこの日の事を……





第2話『絶望を希望に変えろ!!』 完

「ガキ英雄譚ッッッッッ!!!!!」第2話お楽しみ頂けましたでしょうか?

第3話では遂に……………正義が………遂に!!!!!


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