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ガキ英雄譚ッッッッッ!!!!! ~世界が滅びる未来を知った俺たちはヒーローになる約束をした~  作者: 立神ビーグル
第一章 正義の英雄の帰還 編

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第2話 絶望を希望に変えろ!! 10 ―秘密の約束―

10


「ほい~降りるぞボッズー!」


 タマゴは少年の前に男の子を下ろした。


「へへっ! 空を飛ぶの、かなり楽しかったみたいだな?」


「うん、めちゃくちゃ楽しかったよ! ジェットコースターみたいでスッゴくてっ!」


「へへっ! そっか、そっか!」


 男の子が満面の笑みで答えると少年も同じになる。ニカっとした笑顔を少年も浮かべた。


 少年は嬉しかった。男の子の笑顔を再び見れた事が、男の子を守れた事が、心の底から嬉しかった。

 絶望に心を染められようとしていた男の子はもういない。男の子の心から絶望が消え去った事を彼の笑顔が教えてくれている。


「それにしても、大分早く片が付いたなボズ。どうやって男を倒したんだボズ? アイツ、弾切れでもしたのかボッズー?」


 タマゴは男の子の背中から離れた。

 今度は少年の肩にとまりにくる。


「え? あぁ~、そ……それなんだけどな」


「ん? どうしたボズ?」


「う……うん」


 タマゴに問い掛けられると少年は笑顔をしまった。肩にとまったタマゴを横目で見ながら口ごもる。


「あの……それなんだけどさ、ごめん……使っちまったんだ」


「ん? 使った?」


 少年に頭を下げられるとタマゴは暫し固まり、「どれを?」と問い掛けた。

 この質問に対する少年の答えは「……剣を」である。少年は申し訳なさそうな顔をして答えた。


「剣をか……」


 答えを受けるとタマゴはクチバシの中でモゴモゴと呟く。


「う……うん」


 そして少年は頭を掻く。

 少年が頭を掻く時は考え事をしている時か、または困っている時だ。

 では何故いま頭を掻くのか、それはリーダー格の男との戦いに"翼の形の刃を持つ白い大剣"を使ってしまったからだ。

 タマゴは工場で言っていた。『相手が人間ならお前はそのままの姿で戦わなきゃいけない』と。

 剣を使った時の少年には一切迷いは無かった。確固たる意志を持っていた。『男を捕り逃せば皆に危険が迫る、自分がやられたら"約束"を守れなくなる!』から。だから剣を使った事に悔いはない。


 しかし、


 ― 秘密を明かしてしまった……


『これも事実だ』と少年は思う。剣を使った事に悔いはないと思っていても事実は事実だと。

 少年は昔からタマゴに口煩く言われていた。『お前が不思議な力を持っている事は絶対に秘密だぞ』と。不思議な力="翼の形の刃を持つ白い大剣"でもある。

 究極の事態を避ける為だったとはいえ、リーダー格の男に自分の秘密を明かしてしまった事も事実。その事実を考えると、少年の顔は白くなっていく。



 しかし、タマゴからの返答は……



「そか、斬ってないのよな?」


 意外と軽かった。


「えっ? あ、う……うん……斬ってはない、勿論だ。ただ、あの銃をどうするかって考えたら、剣を使うって答えしか出せなかった。勿論、銃を取り上げたらそれ以上は素手でやったよ。でも、ホントにごめん……"今日"になって、俺が英雄だってバレる事をやっちまった。ずっと守ってきた秘密を明かしちまった……」


 こう言って少年が答えると、続けてのタマゴの返しも「そかぁ〜」とまた軽かった。


「え……それだけ?」と少年が驚きを見せると、「うん、それだけ」とタマゴは頷く。


「それだけだボズよ、トドメに使わなかったなら良いボズ。アレは人間に使っちゃいけない力だからなボッズー。それよりも、お前が無事に戻ってきてくれて俺は嬉しいボズ! まぁ確かに、お前の力は本当は秘密にしなきゃいけない力だから使わないのがベストだけど銃は想定外だボッズー。さっきのは緊急事態、俺だって使ってただボズよ! つか、伝えとけば良かったなボッズー、『剣を使え!』って、だから気にするなボッズー!」


 タマゴは小さな手で少年の頭をトントンと叩き、慰めた。

 それから、こう続ける。


「でも、これからもお前の力が秘密なのは変わらないぞボッズー! 今日は例外、後は口外禁止だボッズー!」


「へへっ! あぁ、分かってる!」


 少年は頷いた。頭を掻いていた手は止まり、その顔にはニカッとした笑顔が戻った。

 少年は嬉しかった。自分の判断を認めてくれた事と、タマゴの優しさが。


「もう誰にも絶対にバラさねぇ! 絶対に秘密にする!」


「うん、そうしてくれボッズー! 秘密を墓場まで持っていく覚悟で――」


 と、二人が話していると……


「ねぇ??」


 男の子が話し掛けてきた。


「へ?」


「ん?」


「「あ………!!」」


 この時、二人は気が付いた。もう一人、秘密を知る者がいると……


「あ、ああぁ………っと!!」


 少年は再び頭を掻き出した。頭を掻くのは少年が考え事をする時の癖だ。考え事をしているという事は、困っているという事。


「あぁ……っと、あ、あのさ!」


「ん? なにぃ?」


 男の子は首を傾げる。


「俺達……さぁ、色々! 不思議な事をしたと思うんだけど!! それ、それさぁ……」


「ふふっ」


 困った顔をする少年を見て、男の子は笑った。小さな微笑みで。そして、


「うん!」


 コクリと頷いた。


「分かってるよ! 秘密なんでしょ? お兄ちゃん達の話し、全部聞いてたよ! だから僕、その事を聞こうと思ったの。僕、お兄ちゃん達の事を誰にも話さない方が良いよねって?」


 ――聞かれた少年は大きく頷く。何度も何度も。

 タマゴもだ。タマゴも何度も頷いた。


「うん、そうそう!! 言わないでほしいんだ!!」


「そうそう! 俺達の事は秘密にしていてほしいボッズー!」


 真剣な顔で二人は頼んだ。


 対して男の子は胸を叩く。


「うん、分かった! 僕、絶対に話さないよ! 僕を誘拐した三人は逮捕されてほしいなって思うけど、でも警察の人にもお兄ちゃん達の事を喋らないつもり。『どうやって助かったの?』って聞かれても、知らない人が助けてくれたって答えるよ」


「本当?」


「本当ボズか?」


「うん、だって二人は僕にとってヒーローだもん! 僕は、僕のヒーローとの約束を一生守り続けます!!」


 男の子は大きく胸を張り、少年の笑顔に似たニカッとした笑顔を見せた。


「へへっ良かったぁ、ありがとなぁ!」


 少年は一安心だ。頭を掻く手は止まり、その手は男の子に向かって伸びていく。

 少年は男の子の頭をクシャクシャと撫でた。


「うん、感謝しか無いボッズー! あっ、そうだ、そうだ、何かお礼をさせてくれボズ!」


「えぇ、良いよ。内緒にするのが僕のお礼なんだから、お礼にお礼って――」


「いやいや、礼くらいさせてくれって、例えばまた空を飛ぶなんてどうだ? へへっ、飛ぶだけじゃなくても良いな、そのままどっかに連れてったて良い!」


「えぇ……」


 今度は男の子が困る番だった。男の子は「う……う~ん」と悩む。しかし、少年とタマゴは「ほらほら、なんか言え」「何でも良いぞボッズー!」と言い続ける。それだけ二人の感謝の気持ちは強いのだ。


「じゃ……じゃあ、こんなのどう?」


 暫くすると、男の子は人差し指をあげた。


「なんだ?」


「何でもやるぞボッズー!!」


「本当? じゃ、じゃあ僕をこの町……輝ヶ丘にある、輝山(かがやきやま)の大木のところまで連れていってくれないかな?」


「え? 輝山(かがやきやま)にある」


「大木だボズか?」


 男の子が出した要求に、少年とタマゴは少し驚いた。そして、二人は顔を見合わせる。


「へへっ!」


「偶然だなボッズー!」


「え? ぐう……ぜん……?」


「あぁ、超偶然!」


「偶然にも程があるボッズー!」


「え? なに?」

 

 男の子は首を傾げた。


「へへっ!」


 そんな男の子に向かって少年はニカッと笑う。


輝山(かがやきやま)にある大木って『輝ヶ丘の大木』って呼ばれてる木のことだろ? 実はな、俺達も《輝ヶ丘の大木》に行こうとしてるとこだったんだよ!」


「えっ、そうなの?」


「うん、そうだボズよ!」


「へへっ、だから偶然! んで、そうとくりゃ決まりだ!」


 少年は男の子の背後に回り込み、両手でぎゅっと男の子の体を抱き締めた。


「本当は約束の場所には自転車で行く筈だったんだけど、壊れちまったし、キミからのお願いなら仕方ない! なぁそうだよな?」


 少年に聞かれ、タマゴはコクリと頷く。


「そうだな、仕方ないボズ! この出会いはもしかしたら偶然じゃなくて運命だったのかもなボッズー!」


 タマゴは滑る様に飛び、少年の肩から背中へと移動した。それから両手両足で少年の背中を掴む、飛び立つ準備の完了だ。


「んじゃ、輝ヶ丘の大木に向かって出発だボッズー!」


「へへっ!!」


 少年の笑い声を合図にしてタマゴは大きな翼を羽ばたかせた。

 少年と男の子の体は浮き上がっていく――数分後、彼らは大空の中にいた。

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