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ガキ英雄譚ッッッッッ!!!!! ~世界が滅びる未来を知った俺たちはヒーローになる約束をした~  作者: 立神ビーグル
第一章 正義の英雄の帰還 編

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第2話 絶望を希望に変えろ!! 9 ―正義の心で悪を斬る!!―

 9


 少年が持っていた剣は一メートル以上もある大剣だ。その色は、柄も刃も淀みひとつない純白。

 そして、刃の形には特徴があった。翼なのだ。

 少年の友達はタマゴにも似ているが鳥にも似た妙な生き物であるが、刃もそうなのだ。大剣の刃は鳥の翼に酷似しているのだ。


 少年はそんな大剣を片手で軽々しく持ち、刃の(みね)で肩を叩く。


「おっと、驚いたか? でも安心しろ、この剣でお前を斬りはしねぇよ。コイツは人間に向ける物じゃねぇんだ。でも、その危ねぇモンは取り上げさせてもらうッ!!!」


 少年は男に向かって走り出した。


「クソガキがぁ! お前ら意味が分かんねぇよ!! 言ってる事も、何もかもがぁ!! お前はいったい何者なんだぁぁぁぁ!!!」


 男の銃が再び火を吹く、一発、二発、と弾丸が放たれる。


 しかし、


「フンッ!!」


 少年が大剣を振るうと男が放った弾丸は粉々になって消えた。


「なッッッッ?!」


 弾丸が塵となり消える光景を男も見はするが、見たとしても理解はしていない。だが、眼前で起こった現象を理解するよりも本能が働いたのだろう、危険を察知した男は再び弾丸を放つ……が、


 一発……二発……カチ、カチ……


 僅か二回発砲しただけで弾倉が空になってしまう。


「ち……ちくしょう!!」


「ハァッ!!!」


 新たに放たれた弾丸は再び少年が消した。

 大剣を振るっただけで跡形もなく。


「はぅ………ひぃぃい……」


 男は急いで銃から弾倉を抜き出し、ジャケットの右ポケットに手を突っ込んだ。

 新たな弾倉を取り出して装填しようとするも男の手は震えている。


 装填は不可能だった。

 少年が男の前に立ったからだ。

 少年は男に向かって啖呵を切る。それは最前に男が発した『お前はいったい何者だ』という疑問への回答にもなる言葉だった。


「俺か……俺はッ!! 正義の心で()ぁくを斬るッ!!」


 啖呵を切りながら少年は大剣を振り上げる。

 その剣先が男の銃に触れ、男の震える手から宙に弾き飛ばした。「あっ……」と声を漏らしながら、男は宙を舞った銃を目で追いかける。


 その隙だ。男が銃を見上げている間に、少年は素早い動きで左腕につけた腕時計の文字盤を自分の胸に押し付けた。

 少年の体に触れれば文字盤は開く、直後、大剣が光り輝いた。

 そして大剣は粒子へと変化する。その粒子は開かれた文字盤の中へと吸い込まれていく。全ての粒子が文字盤の中へ消えると、文字盤は再び閉じていく――


 この出来事は一瞬の出来事。僅か一、二秒ほどの出来事でしかない。眼前で起こった出来事に男は気付いてはいない。飛ばされた自分の銃を未だに目で追いかけている。


 カラン……


 銃が、漸く地面に落ちた。


 と同時、少年の左手が男の胸ぐらを掴んだ。

 これにも男は気付いていない。ただ地面に落ちた銃を唖然とした表情で見詰めているだけ。少年の動きに反応出来ていない。


 少年は男の胸ぐらを掴むと一気に引き寄せた。男の顔の位置を自分の狙いが定まる場所へと持ってくる為だ。

 男の顔が絶好の位置までくると少年は胸ぐらから手を離し、右手で拳を作った。そのまま大きく体を仰け反らせ、豪速球を投げるかの様に拳を振り上げる。


 ここからは更に一瞬だった。


 少年は『ダンッ!!』と音が鳴る程の勢いで左足を一歩前に踏み出すと、男の顔面目掛けて拳を振り下ろす。


「赤い正義ッッ!!!」


「あ………!」


 胸ぐらを掴まれた事に漸く気付いた男は反射的に正面を見た。が、気付いた時にはもう遅い。男の視界に入ったのは猛スピードで向かってくる少年の拳だ。



「ガキセイギッッッッッ!!!!! ……これが俺の、英雄としての名前だッッッッッ!!!!! 」



 強烈な一撃が男の顔面にメリ込んだ――


 男は「うぅ……」と微かな呻き声を発するしか出来なかった。殴り飛ばさた男は背後の壁にぶつかり、完全に気を失っていく。


 ―――――


 時刻は14時を回った。


 ここは輝ヶ丘高等学校。


 桃井愛の教室だ。


 自分の席に座っている愛は、さっきから何度も何度も時計を見ていた。黒板の上の時計を何度も何度も……


 輝ヶ丘大防災訓練が始まるまで、あと約一時間。


 14時30分になると輝ヶ丘校生は担任の引率で教室から移動を開始し、15時までには校庭に集められ、それからシェルターへの避難訓練が開始する。


 そして、彼女達の約束の時間は17時。


 あと三時間を切っているのだ。しかし、その前に愛と勇気はやらねばならぬ事があった。

 現在、愛が時間を気にしている理由は、今はそ為である。


 愛と勇気がやらねばらならぬ事、それは学校からの脱出だ――愛と勇気の二人は他の皆と一緒に訓練に参加する訳にはいかない。何故ならば、訓練に参加してしまえば彼女達も地下シェルターへの移動を余儀なくされてしまうから。シェルターへの移動は消防署の隊員や警官が引率をする。抜け出そうとする者がいればすぐに見つかってしまう。約束の時間に約束の場所へと向かわなければならない二人は、その中に混じる事は絶対に避けなければならない。


 今、時計の針が動いた――14時09分。


 二人が学校から居なくなった事は教室で点呼を取られる時にすぐにバレるだろうが、愛は昨日までの連日の打ち合わせの中で勇気にこう言われていた。


『俺達が居なくなった事は少し騒ぎになるかも知れないが、防災訓練は学校行事じゃない。もし騒ぎになっても時間が来れば訓練は始めなくてはならない。訓練が始まってからは、警官か消防隊員が少しの間探す事になるかもだが、そんな大捜索って事にはならないだろうな。何故なら、俺達は付き合っていると噂されているだろ……今日に限って言えばコレは嬉しい勘違いなんだ。俺達が消えても、ただのバカの逢瀬としか思われないだろうからな。そして17時になり、俺達は"事"を終わらせる。終わらせて、後でひょっこりと顔を出せば、少し怒られるだろうけど、それだけで済むさ』……と。


 それを聞いた愛は『怒られたくはないな』と思いながらも、『勇気くんの算段は外れないだろうな』とも思った。


 では、二人はいつ動き出そうとしているのかそれは14時10分だ。

 何故この時間なのか、それは最前まで愛達が参加させられていた校長の長いスピーチが特徴の体育館でのオリエンテーションの後、諸々の片付けを終わらせた担任が教室へ戻ってくる時間が大体14時20分だからだ。

 これは今までの経験で愛も勇気も知っていた。

 ならば、多少の誤差も考えて14時10分には動き出そうと二人は決めた。


 そして、再び分針が動いた。


 時刻はジャスト。14時10分。


 愛は動き出す。


「ん? どこ行くの?」


 愛が立ち上がると隣の席の果穂が聞いてきた。


「あ……ちょっとトイレ!」


 愛は果穂の顔を見ずにそれだけ答えた。

 愛は嘘が下手だ。だから勇気から『教室を出る際に誰かに何かと問われたら余計な事は言うな、「トイレに行く」とだけ言えば良い』と教えられていた。


 それから、愛は足早に教室を出てトイレがある方向へと歩き出す。が、トイレへは行かない。向かうのは裏庭だ。

 そこが勇気との待ち合わせ場所。

 愛の教室は二階にある、トイレのすぐ横には階段がある。愛は階段を駆け下りる。


『一階へ降りたら、階段の目の前の窓から外へ出るんだ』と勇気から指示があった。

『勿論、周りに他の生徒が居なければだ……』とも。『もしも人が居た場合は、変にコソコソすれば逆に疑われる。その時は堂々と裏庭へ通じる扉を使って外へ出れば良い』とも。


「階段の目の前の窓……人が居たら堂々と……背筋を曲げず……」


 愛は勇気からの指示をブツブツと口に出して思い出しながら、一階へ下りる最後の一段を踏んだ。


 ―――――


「うわっ……マっブシぃ! なんか随分久々に日の光を浴びた気がすんなぁ~」


 少年は工場を出た瞬間に額に手をかざして空を見上げた。


「スマホ壊されちまったから、実際何時か分かんないけど、こりゃ約束の時間まではまだまだ余裕があんな!! 良かったぁ~~!!」


 太陽はまだ沈む気配を見せていない。少年はニカッと笑った――少年は工場に連れ込まれてから脱出までに半日近くもかかっていた気がしていたが、実際は一時間もかかってはいなかった。


「さて、アイツはどこに行ったんだ?」


 少年はタマゴの顔を思い浮かべながら腕時計の文字盤を叩いた。叩くと文字盤が開き、空洞が生まれた。生まれた空洞の中からは"昔ながらの黒電話の立体映像"が飛び出してくる。


「お~い! 聞こるか? こっちは終わったぜ、そっちは何処にいるんだ?」


 腕時計から飛び出した黒電話の立体映像は通信を送れる合図である。


 少年が軽い口調で呼び掛けると黒電話はリンリンと鳴り、暫くすると文字盤の中に引っ込んだ。

 黒電話が引っ込むと、代わりに飛び出してきたものがある。それはタマゴの顔だ。


「はいはい、聞こえてますよ! こちらは、ただ今大空を羽ばたいておりますボッズー!」


 タマゴの口調は最前までとは打って変わって何やら楽しそうである。立体映像で飛び出してきた顔も瞳がキラキラと輝いている。


「うぇ?! 大空??」


 少年はまた空を見上げた。


「ん?」


 すると、最前は額にかざした手が邪魔をしていて見えなかったが、今度の空には米粒程の大きさの黒点が見えた。


「あっ! へへっ! 居た居た!」


 目を細めて見れば、黒点は鳥の形をしていると分かった。バサバサと大きな翼で羽ばたく鳥である。これは明らかにタマゴだ。

 少年は空を飛ぶ友達に視線を向けながら、「でぇ、あの子は? あの子も一緒なんだよな?」と腕時計に向かって話し掛ける。


「もちろん一緒だボッズーよ! この子凄いボズね、空を飛ぶの全然怖がらないボズ! 逆に楽しんでくれてるボッズーよ! だから、今サービス中だボッズー!!」


「サービス? 何だそれ?」


「ほいほい! ちと、お待ちをボズ! 今そっちに行くからなボッズー!」


 そう言うとタマゴは一方的に通信を切った。

 タマゴが通信を切るとタマゴの立体映像は腕時計の空洞に吸い込まれる。立体映像が吸い込まれると文字盤は閉まり、空洞は消えた。


「え? お……おい!」


 少年は首を傾げながら再び空を見上げた。

 空の黒点は最前までよりも大きくなっていた。この事に気が付いた直後、空から叫び声とも笑い声とも取れる雄叫びが聞こえてきた。


「ワッハーーーーー!!!」


「ん? ん??」


 この雄叫びはタマゴの声ではなかった。男の子の声であった。

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