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ガキ英雄譚ッッッッッ!!!!! ~世界が滅びる未来を知った俺たちはヒーローになる約束をした~  作者: 立神ビーグル
第三章 愛の英雄の誓い 編

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第1話 血色の怪文書 16 ―現れた敵―

 16


 赤い英雄はワタシを睨みながら立ち上がった。いや、仮面をつけているから実際のところ、ワタシには彼、おそらく"彼"であっているだろう――の表情は分からない。でもワタシが彼ならば、ワタシはワタシを睨むだろうし、きっとそうだ。


 それから、彼はこう言った。


「あんた、その手に持っている物は何だ?」


 彼の語気は荒くない。しかし、偉そうな口振りだった。ワタシは腹が立った。だから、


「フッ……」


 ワタシは彼を鼻で笑ってやった。小馬鹿にしてやったのだ。すると、


「何を笑っているんだボズ……」


 今度は英雄の仲間が喋った。鳥のくせに喋っている。気持ちの悪い生き物だ。


「ボッズー、落ち着け……まだこの人がバケモノとは決まってない」


 赤い英雄は仲間を制止した。イメージ的に気持ちの激しい奴だと思っていたが、意外と落ち着いたヤツらしい。そして英雄は、花壇の前に貼られた立ち入り禁止のテープを乗り越えて、ワタシに向かって歩き始めた。


「アンタが持ってるのって、アレだよね? いま話題の怪文書……違う? 何でアンタがソレを持ってるんだ? 拾ったの? それとも――」


 その後の言葉はワタシ自身に言わせたいのか英雄は黙った。この感じもムカつく。質問をしている立場なのに偉ぶるにも程がある。


 だからワタシは言ってやった。


「そうだよ、これはワタシが書いた物だ」


 ワタシが言ってやると、一瞬英雄の足は止まった。驚いたのだろう、笑える。だが、仮面に隠されていて顔は見えない。非常に残念だ。しかし笑える。


「そうか……」


 英雄はボソリと呟き、再び足を進めた。


「じゃあ、もう一個質問。あんたはこの事件を起こした張本人?」


 前言撤回。やはり腹が立つ。英雄はワタシの発言に驚いている筈なのに、冷静な口調のままじゃないか。苛つく。虫酸が走る。


 だから言ってやる。


 ―――――


「そうだよ……憎かったら捕まえてみろ!!」


 男はニヤリと笑うと、突如セイギとボッズーにに背を向けた。


「あっ! 逃げるなボズ!!」


「ボッズー、ビュビューンモード行けるか?」


 走り出した男から視線を反らさぬ様にしながら、セイギは走り出した。その手は腕時計に伸ばされる――叩かれた文字盤からは、白い翼の大剣が飛び出す。


「勿論いけるボズよ! やってやる!!!」

 

 ボッズーはセイギの質問に答えながら《ミルミルミルネモード》を解除して、《ビュビューンモード》へと変形する。


「ほぉ……英雄のクセに人間のワタシに(ヤイバ)を向けるのか」


「何が"人間"だボズ! 《王に選ばれし民》に魂を売ったくせに!!」


 ボッズーは四本に分かれた翼の"上の翼"に風を取り込み始めた――が、しかし、


「フフフッ……無駄だ。ワタシはお前達と争うつもりはない」


「じゃあ何で来たんだボズ!!!」


「それは、可笑しな真似をしている奴等を見付けたからさ!!」


 高笑いを上げた男は、持っていた怪文書を投げ捨てた。


「うわっ!!!」


 投げ捨てられた怪文書が風に吹かれてボッズーの顔面に張り付く。

 男はその隙に、灰色のジャケットに手を入れた。

 ポケットの中からは小瓶が出てくる。手のひらに隠れる程の小さな瓶だ。花の種に似た灰色の粒が入っている瓶だった。


「お前等の相手はコイツらだ! 行け、ダーネッ!!」


 男は瓶の蓋を開け、灰色の粒を辺りにばら蒔き始める――


「なんだボズッ!!」


「うわっ! ダーネって、コイツらの事かよッ!!」


 灰色の粒は地面へと落ち、形を変えた。

 粒から変化した姿に、セイギとボッズーは見覚えがあった。ソレは膝を抱えた人間の形をしているが、昼間に戦った木の怪人だと二人は知る。


「コイツら、ダーネっていうのか!!」


 ダーネの数は一目では数え切れない程に多く、セイギとボッズーは一瞬にして取り囲まれる形になってしまった。


「ギギ……ギギギ……」


 膝を抱えていたダーネは立ち上がる。

 ギギ……と鳴きながら、セイギとボッズーに迫ってくる。


「コイツらの相手をしても無駄だ! ボッズー、俺の背中に来い、飛ぶんだ! 男を追い掛けっぞッ!!」


 セイギは素早い判断を下した。

 ダーネの出現に一瞬慌てたが、すぐに冷静さを取り戻した。


「そうだなボッズー!! 雑魚よりもバケモノが本命だボッズー!!」


 すぐに冷静になれたのはボッズーも同じである。セイギの指示を聞き入れたボッズーは、『来い』と呼ばれた背中に向かって飛んでいく。


「ホホホホホホホホォ~~♪ そうはいきませんよぉ~~♪ 小鳥さんぅ~~~~♪♪」


 だが、邪魔が入る。


「この声はッ!!」


「芸術家ボズッ!!」


 芸術家の声が聞こえたのは二人の左方向上空だ。二人は素早い動きで声がした方向を見る――が遅い、二人が顔を向けた瞬間、ボッズーに向かって高速の"張り手"が飛んできたのだ。


「!!!」


 叩かれたボッズーはあらぬ方向へと飛んでいく――


「ボッズー!!!」


 突如上空に現れたのは《王に選ばれし民》が現れた日に、セイギとボッズーが戦った巨大な手だった。


「あぁ、もう!! 邪魔だッ!!」


 セイギの近くには既にダーネが群がってきていた。ダーネを斬りながらセイギは言った。


「ちきしょう、また"その手"を使ってきたか!!」


 この言葉を姿を見せぬ芸術家が笑う。


「ホホホホホォ~~♪ 『その手』とは上手いですねぇ~~~♪ "手段の手"と"私が作り出した手"をかけているんですねぇ~~♪ 分かりますぅ~~♪」


「ふざけんなッ!! 偶然だ、そんな冗談を考える余裕はこっちには無ぇッ!!」


 セイギに群がるダーネの数は多い。

 大剣を振り回して斬っていくが、セイギの足は止まってしまった。逆に男は走り続け、公園の出口に近付いていっている。


「ちきしょう……このままだとマジで逃げられる! くそぉ、邪魔だって言ってんだろッ!!」


 セイギは大剣を振るうのを止めた。代わり一番近くにいたダーネの頭を掴み、「フンッ!!」と地面に向かって押して、無理矢理に屈ませる。


「ドリャーーーッ!!」


 次にセイギが取った行動は跳躍だった。

 無理矢理に屈ませたダーネの背中を踏み台にして、空に向かって跳んだのだ。


「昨日は俺が勇気に蹴られたからな、今日は俺がやってやるぜぇ!!!」


「ホホホホホォ~~♪ そうはさせないぃ~~♪♪」


 再び芸術家が笑う。

 セイギは群がってくるダーネ達を飛び越える為に跳躍したが、空にはボッズーを弾き飛ばしたばかりの巨大な手があった。巨大な手は今度はセイギに向かって飛んで――


「邪魔すんなッ!!!」


 ――来る前にセイギが大剣を振るった。


「来ると思ってたぜ、攻撃がワンパターンなんじゃねぇのか!! 芸術家ぁーーッ!!!」


 巨大な手を弾き飛ばしたセイギは仮面の奥でニヤリと笑う。セイギは読んでいたのだ。『芸術家の作った巨大な手は必ず自分の邪魔をする』と。だからセイギは飛んだ瞬間に大剣を構えて、『何処から飛んでくる?』と視線を走らせていた。


「俺をナメるなよ!!!」


「そうだぞボズ!! 俺達をナメんなボッズー!!」


 セイギが巨大な手を弾き飛ばした直後、弾き飛ばされていたボッズーが復活して飛んできた。


「さぁ、セイギ! 行くぞボッズー!!」


 そして、ボッズーはセイギの背中に掴まった。


「頼むッ!! アイツを逃がすな!!」


「ほいやっさ!!」


 ボッズーは再び、上の翼に風を取り込んだ。


「さぁ、一気に飛んで男を―――え?!」


 ビュビューンモードのジェット噴射を作る為に、ボッズーは空中で一瞬だが動きを止めた。その時だ、目にも止まらぬ速さで前方から飛んできた物があった。


「アレは……"火の玉"か?!」


 それは巨大な火の玉である。


「クソ……ッ!! 次から次へとッ!!!」


 セイギは飛んでくる火の玉を斬ろうと大剣を構えようとする――が、間に合わない。構えきる前に火の玉はセイギとボッズーに迫り、


「グワァーーーッ!!!」


「うわーーーーっ!!!」


 二人を火達磨にしてしまった。



 第三章、第1話 「血色の怪文書」 完

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