第1話 血色の怪文書 14 ―探しても探しても―
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日付が変わって深夜二時。
仮眠を取った正義とボッズーは動き出した。
昨夜に放火があった場所は五ヶ所。『駅前公園内の花壇』、『空き家になっている民家』、『不法投棄された車』、『営業時間の終了した骨董品店』、『宅配業者の倉庫』――二人が最初に調査に当たった場所は『空き家になっている民家』である。
「う~ん……何も出てこないなぁボズ」
「う~ん……そうだなぁ」
深夜になると野次馬どころか警察も消防も事件現場からは居なくなり、二人は誰にも邪魔される事なく調査に当たれた。が、全焼して炭化してしまった木造住宅の跡地からは何も見付けられなかった。
正義はガキセイギに変身している。ガキセイギの姿であれば暗闇でも視界は良好だ。ボッズーは《ミルミルミルネモード》で暗視が出来る……だが、何も見付けられなかった。三十分以上掛けて調査したが、駄目だった。
「宝石みたいに煌めく赤い石か……そんな目立つ物なら、たとえ小さな欠片でも俺とボッズーなら見付けられると思ったんだけどなぁ」
「う~ん……石は発火装置じゃなかったのかなぁボズ。それともやっぱり《王に選ばれし民》とは関係ない物だったのかなぁ」
「う~ん……今の場所からは見付けられなかったけど、でもまだ結論付けるには早いぜ!」
二人は話しながら次の場所へと向かった。
次の場所は骨董品店だ――が、こちらも不発に終わってしまう。民家とは違い、焼けてしまったとしても骨董品店の内部には物が多く、三十分以上の捜索でも成果は出せなかった。
次は宅配業者の倉庫。
倉庫内は広く、此処もまた物が多かった。
捜索には一時間を掛けたが、不発は続いた……そして《ミルミルミルネモード》を使い続けたボッズーには疲れが現れ始める。
放火された現場一つ一つは離れた場所にあるため、移動の時には通常の"黄色い瞳"に戻せるが、大した休息にはならずボッズーの瞳には痛みすらも走った。
残りの放火現場は『駅前公園内の花壇』と『不法投棄された車』の二つ。ボッズーの体調を考慮して、セイギが次に選んだ場所は、捜索範囲が明らかに狭い、車の方であった。
「むむぅ! くっさいボズ!! 何なんだこの車は!!」
「た……確かに、くせぇ!!」
車内の捜索をボッズーが行い、車体と周囲をセイギが行ったが、空き地に不法投棄された車は近付くだけで悪臭が鼻を刺し、「もうダメだ、ギブアップ!!」と、二人は十五分で音を上げてしまった。
「長年放置された物だったのかな? それにしても燃やされただけであんなニオイすっか??」
「車内にはゴミの燃えカスみたいのもあったボズ……その臭いと、ガソリンに、熔けたタイヤ、あとはう○こみたいな臭いもしたぞボッズー!!」
「えっ、うん○!!」
悪臭は鼻に残るもの、二人はフラつきながらも最後の場所へと向かった。
残された場所は一つ、『駅前公園内の花壇』である。
―――――
「何故ぇ、英雄に手を出さなかったのですかぁ~~♪」
「何故?」
セイギとボッズーが駅前公園へと向かっていると同時刻、駅前公園には一つの影があった。
「――下らない事を聞かないでくれるかな。計画は順調に進んでいるんだ、あそこで余計な事をする必要があったかな?」
「ですかぁ♪ ダーネに気を取られている間に奇襲をかければぁ♪ 一人くらいは殺せたかもぉ~~♪♪」
ブランコに揺られる人物に、歌う様に話し掛ける声もある。しかし歌う者の姿は無い、声だけが聞こえている。
「まぁ確かに殺せたか……でも、やっぱり予定外の行動を起こすのは愚策だよ。作戦の綻びを生む切っ掛けになる。それに、計画が全て上手くいけば英雄を殺すのなんて一瞬なんだ、やっぱり今日は家を燃やすだけで十分だ。あの女は想定以上の反応をしてくれたしね――」
「ホホホォ~♪ 自信満々でございますねぇ~~♪♪」
「当たり前な言葉で褒めないでくれるかな。反吐が出る……まぁ、アイツの近くに英雄が居たのは正直驚いたけどね。でも、それなら標的を別のヤツに変えるだけだ。そしてあの女はまだまだ利用する、あの女にはその価値がある――だからお前は黙って見ていていろ、輝ヶ丘は必ず滅ぼしてやるから……」
「ホホホホホォ~~♪」
己が作り出したバケモノの宣言を馬鹿にするのか喜ぶのか、芸術家の笑い声は高くなる。
「おっ……来た来た。お前と話す時間も終わりにしないと、アイツが来たならホムラギツネとしての時間を始めないといけないからな」
人間の皮を被ったバケモノは姿を見せぬ芸術家に向かって言うと、ブランコから飛び降りた。バケモノは歩き出す、漆黒に染まった瞳を邪悪に歪めながら……。




