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ガキ英雄譚ッッッッッ!!!!! ~世界が滅びる未来を知った俺たちはヒーローになる約束をした~  作者: 立神ビーグル
第三章 愛の英雄の誓い 編

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第1話 血色の怪文書 5 ―憧れは初恋に近く……―

 5


 愛はエレベーターに乗ると真田萌音にメールを送った。

 真田萌音からの返信は早く、愛が大木から出た直後には『事情は分かった。協力するよ。』と返ってきていた。

 憧れの先輩であり、尊敬する人物の協力が得られると知ると、怒りに染まっていた愛の顔にも喜びが射す。


「流石、先輩! 話が分かる!」



 ――翌日、愛は萌音と会う約束をした。


 場所は山下商店、時刻は昼の十二時。


 愛が萌音と休日に会うのは二ヶ月振りである。


 英雄としての約束の日である2月15日に向けて、愛が新聞部を辞めたのは昨年の年末、年が明けてからは萌音の大学受験も大詰めを向かえてしまい、二人は少し疎遠になってしまっていた。


 萌音は大学受験と平行して新聞部の部長も続け、ニュースサイトの連載も続けていたのだから、尚更二人のタイミングは合わなかった。


 それまでは、友人の果穂や瑠璃も誘って、萌音の自宅で恋愛や進路の相談に乗ってもらったり、二人きりでカラオケに行ってぶっ通しで歌い続けて二人仲良く喉を潰したり、シー派の萌音とランド派の愛で『どっちに行くか勝負しよう!』とマリカー勝負をしてみたけれど、結局朝まで勝敗が着かず、翌週に二日連続でインパをする事になったりなど……二人の仲は先輩後輩の関係を越えて、かなり深かったのだが。


 二ヶ月の間、勿論学校では顔を合わせていたが、学校外では久し振りで、しかも二人きりで会う事になり、山下商店に着いてからの愛はソワソワとしていた。

 入店直後に買った駄菓子を小上がりに座ってポリポリと食べてはいるが、味わえてはいないし、ほんの少しだが顔のパーツが中心に寄っている。山下に着いたのも約束の時間の三十分も前だった。


 そんな愛が萌音と出逢ったのは、中学一年生の春だった。

 出逢いの切っ掛けは、所属した部活が同じだったから。


 既に英雄になる約束をしていた愛は、体力作りの為に、文系を選ばずに体育会系の部活に入った。それは陸上部。

 所属して一日目、愛は顧問に教えられた柔軟体操を行いながら、トラックを走る上級生達を見ていた。

 その時だ、愛の身体に稲妻が走ったのは。

 長い髪を一本に結び、涼しげな瞳で汗一つにかかずに走る真田萌音を、愛は見付けた。


『こんな素敵な人がこの世にいるのか!』


 ……と、一目惚れに近い感情を愛は抱いた。


 愛はまず萌音の容姿に惹かれた。長身で涼しげな瞳を持つ萌音は、中学二年生にしては大人びて見えて、少し面長な顔立ちも彼女の大人っぽさを一層際立たせていた。

 そして走る姿は、長い手足の曲線美と風になびく黒髪が『まるで絵画の世界から出てきたみたいだ』とも思った。


 しかも、厳しい先輩が多い中で萌音は後輩に優しく接する人でもあった。

 大人びた容姿からは想像もつかない冗談を言って、愛たち後輩をよく笑わせてくれた。

 そして、萌音自身もよく笑う人であった。

 萌音の笑顔は大人びているという第一印象とは真逆で、愛嬌のある笑顔であり、その笑顔を見て愛は更に惹かれていった。


『いつかこんな人になりたい』と、日に日に想いを募らせ、制服やジャージの着崩し方も真似したくらいだ。

 気が付けば、愛は萌音の虜になっていた。

 部活帰りに寄った町中華で豪快に麺をすする姿でさえも格好良いと憧れるくらいに。『憧れ』という名の、恋に近い感情を愛は抱いていったのだ。


 好意を持って接すれば相手も気が付くものなのだろう。愛が懐くと、萌音も愛を妹の様に扱ってくれた。始めは『桃井ちゃん』であった呼び方も、気が付けば『桃ちゃん』になり、愛が勉強に苦戦すれば萌音は理解するまで教えてくれた。

 メイクを教えてくれたのも萌音である。

 初めての原宿も、初めての渋谷も、萌音と一緒だった。

『桃ちゃんも私と同じ高校に通いなよ!』と輝ヶ丘高校の入学を薦めてきたのも萌音である。

 真田萌音は、中学一年生から高校二年生までの愛を構築するに欠かせない存在だった。


 先輩後輩の仲を越えた関係性になっても、愛の憧れは未だに強い。強いからこそ、二ヶ月振りの二人きりとなると、愛は緊張感を抑えられなかった。


「……あッ!!」


 約束の時間の五分前、山下商店の軒先からガタンッと自転車のスタンドを降ろす音が聞こえた。

 今日は冷える一日だ、店の引き戸は閉まっている。曇りガラスの向こうに見えたシルエットは、学校の制服を着た女性だった。


 今日は日曜日であるが、萌音は三月までは部活を続けるつもりで、新聞部は毎週日曜の午前中に顧問との打ち合わせを行っている。この事を知っているから、愛はすぐに曇りガラスに映ったシルエットが萌音だと気付いた――否、知らなくとも愛は気付いただろう。それほど迄に、愛と萌音の関係は深い。


「お待たせ、桃ちゃん!」


 ガラガラと戸が開き、笑顔を浮かべた真田萌音が店内へと入ってきた。

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