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ガキ英雄譚ッッッッッ!!!!! ~世界が滅びる未来を知った俺たちはヒーローになる約束をした~  作者: 立神ビーグル
第三章 愛の英雄の誓い 編

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第1話 血色の怪文書 4 ―血色の怪文書―

 4


「みんな、大変だよ!!」


 懸垂を失敗してから約三十分後、愛は英雄たちの秘密基地で正義や勇気やボッズーを前にして拳を握っていた。

 その表情は怒りに満ちていて声も尖っている。


「なんだ?」


「何だボズ?」


「一体どうしたんだよ……」


 時刻は二十一時過ぎ、夕方に分かれたばかりで何故夜になって再召集させられたのか、何故愛が怒っているのか、正義もボッズーも勇気も、誰一人分かっていない。

 分かっていないから首を捻るが、そんな男達の態度に愛の怒りは更に燃えてしまう。


「何だじゃないよ、見てよコレ!!!」


 愛は拳の中で握り潰していた赤い文字が踊る紙を、引き裂く様な勢いで広げると、秘密基地の中央にある切り株のテーブルの上に叩き付けた。


「んぅ……なんだぁ?」


 叩き付けられた紙を正義は覗き込む。

 ボッズーもそうだ。「なんだボズ?」と更に首を捻りながら。勇気も同じく。腕を組みながら。


 紙を覗き込んだ三人共が、愛が叩き付けた紙に何が書かれているのかを、すぐには読み取れなかった。広げられたとしてもシワの付いた文字は読みにくいから。


「おいおい……何だよコレ」


 が、見た瞬間に『禍々しい』という言葉が正義の脳裏に浮かんだ。

 白い紙には赤い文字が引かれているが、その赤色がインクや絵の具の赤とは違っていたからだ。

 赤色は僅かにどす黒く、"血の色に似た赤"……だった。


「なんか変な事も書かれてるぞ、『輝ヶ丘の住民は人類の為に』――って、おいおい」


 色の禍々しさに驚いてから少し遅れて、正義は書かれた文字を読み取った。


「気色の悪い文章だな……」


 勇気も、筆を使って書き殴られた様な文章を読んだ。その眉間には深い皺が寄る。それから勇気は小さく舌打ちをし、血色で書かれた文章を怒気を孕んだ声で読み上げ始める。



「輝ヶ丘の住民は人類の為に犠牲になるべきだ


 英雄などと名乗る無能な奴等は今すぐ輝ヶ丘から出ていけ


 死ぬべき存在を護る必要はない」



「何なんだこれはボズ!」


 ボッズーは怪文書と謂える存在を見下ろし、吐き捨てる様に言った。


「何でこんな酷い事を書くんだよ……」


 正義だ。正義の眉間にも深い皺が寄っているが、勇気やボッズーとは違い、彼は怒りの感情を露にはしなかった。口を開いた唖然とした表情で、切り株のテーブルから怪文書を取り上げる。


「ふざけた事書いてない? マジでムカつく!! しかもね、この紙は輝ヶ丘の至るところにばら蒔かれてるみたいなんだ、見て!!」


 愛は怪文書を裏返す正義に向かって同調を求める様に言い、トレーニングの為に着ていたグレーのスウェットのパンツからスマホを取り出した。

 スマホの画面には写真が映っている。赤文字の怪文書を写した写真だ。


「私、みんなに連絡してから、他にもこの紙を見付けた人がいないかをSNSで調べてみたの。そしたらドンドン出てきて――」


 愛が画面をスクロールすると、怪文書を撮った写真が続々と出てくる。


「自宅のポストに入ってたって人もいれば、車に貼り付けられてたって人もいて、ばら蒔かれた場所も様々で――」


「悪質な悪戯だな」


 正義が言った。

 その顔からは唖然は消え、髪の毛を掻き回している。

 髪の毛を掻き回す行為は、正義が考え事をしている時の癖だ。正義は「う~ん」と低く唸ると、怪文書に抱いた疑問を口にする。


「写真に映ってるヤツも、愛が持ってきてくれたコレも、筆跡は全く同じに見えるな、コピーかな ? だとしたら、愛が持ってきたコレが原本か。インク、それとも墨か……が裏側に滲んでるし」


 正義は誰ともなくに問い掛けた。だが、愛にとっては目の前の怪文書が原本でもコピーでもどうでも良かった。


「原本でもコピーでもそんなのどうでもいいよ! それに悪戯って言わないで、これはそんな子供っぽい言葉で片付けられる物じゃないと思う! 私、絶対に抗議してやるから!!」


「抗議……書いた人間も分からないのにどうやって?」


 口も語気も尖らせて、言い放った愛に対して、聞き返したのは勇気だ。


「それにな、腹が立つ気持ちはよく分かるが、こんな事をする人間は相手にすると増長するだけだぞ」


「あぁ、俺もそう思う。悔しいけど、こういうのは無視するのが一番だと思うぜ。なぁ、ボッズー?」


「う~ん……」


 正義が問い掛けると、ボッズーは頭を捻った。


「そうなんだよなボズ。俺も愛と同じでモチロン怒ってるだボズよ。でも、コレが《王に選ばれし民》のやってる事なら別だけど、そうじゃないなら、下手に動いて俺達に注目が集まったら、皆が英雄だとバレてしまう可能性もあるだボズね。愛、暫くは静観するのが良いと思うボズよ、それでも悪戯が収まらなかったら――」


「三人とも何言ってるの! 怖じ気づかないでよ!」


 愛はボッズーの忠告を遮り、正義から怪文書を引ったくった。


「――無視とか静観って、そんなのコレを書いた奴の思うつぼじゃん! 私は輝ヶ丘に住む一人の住民として、こんな悪行を絶対に許さないから! それに誰がやってるか分からなくても抗議ぐらいは出来るし!!」


「いや、でもな……愛」


「せっちゃん、でもじゃないよ! もういい! みんなが協力してくれないなら、先輩にお願いするから!!」


 愛は怒鳴って、三人に背を向けた。


「先輩って、もしかして新聞部の真田先輩の事か?」


「そう!!!」


 愛は吠えた。そして、基地の内部をぐるりと囲むイミテーションの木に腕時計を当て、大木の外に出る為のエレベーターを出現させる。


「愛、待てって!」


 正義は追い掛けるが、無視された。


 愛は怒りを抱えたまま、秘密基地を出ていく……

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