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第2話 絶望を希望に変えろ!! 1 ―少年の瞳に映る真っ赤な炎は何か―

 1


 少年は叫んだ。


「今だッッ!!」


 この合図をタマゴは今か今かと待っていた。


「行くぜボッズーッッ!!」


 タマゴは少年の合図を聞くとボンの顔面目掛けて飛び上がった。


 ドンッ!!!!


 鈍い音が室内に響く。

 そして、更に、メリメリメリメリ……


 ボンの顔面に頭突きをくらわせたタマゴは追い討ちをかける様に更にグルグルと回る。

 それはまるでドリル、タマゴの頭がツルツルと丸かった事をボンは感謝するべきだ。タマゴの頭が鋭く尖っていたのならばボンの顔面には大きな穴が空いていただろうから。


「うぅぅぅ……」


 ボンはか細く情けない声をあげると、大きく手を広げて背中から床に倒れた。


「思い知ったかこの悪者(ワルモン)がボッズー!!」


 タマゴはバサバサと翼を羽ばたかせながら倒れたボンを見下ろした――リュックから飛び出したタマゴにはそれまでのタマゴとは違う所がある。それは翼の大きさだ。それまでのタマゴの背中には小さな翼があったが、今のタマゴには体の二倍はある大きな翼が付いているのだ。


「おい、あんまり煩くすんな、他の奴が来ちまう……とりあえず、翼小さくしろ!」


「あっ! そかそか……ごめんボズ!!」


 タマゴはそう言いながらバサバサと羽ばたいて少年の腹の上に降りた。降りると同時に大きな翼はみるみるうちに小さくなっていく。


「大きい翼だとやっぱ大音量になっちゃうボズね。久々に翼を大きくさせたから力加減が難しいボッズー、大きい方が本来の姿なのにぃ……」


「へへっ! でも良くやってくれたぜ! んじゃ、次はこっちを頼む!!」


 少年はニカっと笑いながら手足を上下に動かしてタマゴに見せた。


「ほいやっさ! ちょっとチクチクするぞボズぅ~」


 タマゴはクチビルを、いや"クチバシ"をツンッと尖らせ、少年を縛る縄を突き始める――



「いやぁ、それにしても強烈だったみたいだな、お前の攻撃は」


 数秒後、縄から解放された少年はソファから立ち上がってボンに近付いた。

 床に倒れたボンは失神している。倒れた衝撃で気絶したのか、それともタマゴの頭突きによって気絶させられたのか、白目を剥いて遠くの世界へと行ってしまっている。


「もしかして、やり過ぎたかボズ?」


「ううん、これで良いんだ。コイツには出来るだけ長ぁ~く寝ててもらいたいからな! その方が俺にとっては好都合だ! さてと……それよりも、お喋りしてる暇は無いぜぇ! こっからが本番だ!」


「んぅ?? 本番??」


 立ち上がった少年を追い掛けて、その肩に留まったタマゴは怪訝な表情を見せた。


「お前、まさか変な事をしようとしてんじゃないのかボッズー! 俺達に時間の余裕は無いだボズよ、さっさとここから逃げんだボッズー!」


「変な事? それは違うよ、まさかお前、俺達が"今日"やろうとしてる事を忘れたんじゃないよな?」


「"今日"やろうとしてる事? 突然なに言い出すんだボズ! 忘れてる訳ないだろボズ、忘れてないから早く出ようって――」


「忘れてないなら分かるだろ」


 少年は言い返してくるタマゴの言葉を遮った。その顔からは笑顔は消える。少年は真剣な眼差しでタマゴを見詰めた。


「分かるだろ……俺がこのまま一人で逃げる訳が無いって事を。ここには、確実にもう一人居るんだ。その人を見捨てて、俺は絶対に逃げない。俺は絶対に助け出す! ここにいる一人の命も、世界中の大勢の人の命も、重さは変わらない!! 一人だって見捨てたくない、いや見捨てちゃダメなんだ!!!」


 語気強く、少年は言った。


「………」


 タマゴは黙る。

 タマゴは分かっている。少年が生半可な気持ちで『助ける』と宣言するのではないと。少年とタマゴは長い付き合いだ。だからタマゴには分かる。

 そして、タマゴは見た。

 自分を見詰める少年の瞳の奥に、轟々と燃える真っ赤な炎を。

 そして、知っている。

『この炎は、悪事を決して許さぬ少年の《正義の心》の表れだ……』と


「だけど……」


 タマゴは口を開く――


「だけども何も無いって、分かってくれ!」


「違うボズ! 最後まで聞け! お前の考えは分かったボズ! だけど、約束の時間だけは絶対に守らなきゃいけないのは分かってるだろうなボッズー! 少しでも遅れたら、今言ったお前の決意は全て無駄になるんだからなボッズー!!」


「分かってるさ!」


 少年はタマゴに向かって誓いを立てる様に、こう言った。


「俺を信じろ!!!」

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