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ガキ英雄譚ッッッッッ!!!!! ~世界が滅びる未来を知った俺たちはヒーローになる約束をした~  作者: 立神ビーグル
第二章 勇気の英雄の激誕 編

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第6話 勇気の心を武器にして 10 ―神はセイギを見放したのか……―

 10


 セイギは想定よりも遠くに飛んだ。十mよりも五mは遠くに。着地した場所はピカリマートの建物のすぐ目の前……もしも想定通りに、飛んだ距離が丁度十mであればセイギは爆発に巻き込まれていただろう。

『弾丸に弾き飛ばされて本体に一気に接近出来れば、本体に避ける隙を与えずにジャスティススラッシャーをくらわせられるだろう!』とは考えはしても、『弾き飛ばされて行く場所に爆発が起これば自分も被害に遭うだろう』とまではセイギは考えられていなかった。が、結局は想定よりも遠くに飛ばされてセイギは難を逃れた。


「やった……」


 デカギライを倒せた安堵から、自分が難を逃れたと気付かぬセイギは、ガッツポーズをする気持ちで後ろを振り向いた。直後、セイギは"想定外"に気付く。


 ― なんで……何でだよ……


 セイギが気付いた"想定外"は十mよりも更に五mも飛ばされていた事ではない。

 ボッズーは言っていた。『本体を倒せば分身は消える』と。だからセイギは本体だけを狙った。

 今回は分身を生み出す瞬間を目撃しているのだから、見定めていた個体が本体である事は確実であり、そして本体がジャスティススラッシャーによって爆発した瞬間も目撃したのだから、後ろを振り向けばデカギライの姿は無く、残るは風船によって宙に浮かばされているボッズーのみが居る筈だ……とセイギは想定していた。だが、実際は違っていた。


 ― どうして……


「フハハハハハハハッ!! 馬鹿だな、俺がそう簡単にはやられる訳がないだろう」


 居たのだ。


 デカギライが。


 本体を倒した筈が、振り向いた先では十数体のデカギライがセイギを未だ嘲笑っていたのだ。


 残ったデカギライ達はセイギに向かって一斉に銃を向ける。その動きは一糸乱れぬものだ。喋り出すタイミングもそうだった。残ったデカギライ達は声を合わせてセイギを嘲笑った。


「フハハハハッ!! 手を抜いてやっていたとも気付かずに、簡単に罠にかかりやがって!!」


「なんだと……」


 更に声を合わせるデカギライとはまた別の声も背後から聞こえてくる。


「調子に乗って馬鹿をみたなぁ、クソガキッ!!」


 背後からの声もまたデカギライの声ではある。だが、セイギが本体と見定めた存在が生み出した分身は最前までセイギを取り囲んでいた者のみだ。十五m飛ばされた現在のセイギはデカギライの包囲網の外に出ているのだから背後にはデカギライは居ない筈である。では、背後のデカギライは新たな分身か、それとも何処かに潜んでいた"本物の本体"か――疑問が浮かぶが、セイギは推理すら出来なかった。セイギは撃たれてしまうからだ。


「BANGッ!!!」


「うわッーー!!!」


 十五m飛んでデカギライの包囲網から逃れたセイギであったが、再び籠の中へと戻されてしまう。セイギを撃った者は背後に現れたデカギライであったからだ。


「……ぉの野郎ッッッ!!!」


 不意打ちをくらって再びデカギライに囲まれてしまったセイギだが、すぐに大剣を構えて立ち上がろうとする。するが、デカギライが動く。全てのデカギライが弾丸を放った。放たれた弾丸の速度はこれまでのモノとは違っていた。速度はこれまでの倍の速さだ。『手を抜いていた』とデカギライは口にしたが、弾丸の速度までもデカギライは操れるのか――


「ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」


 立ち上がったセイギは、全ての弾丸を全身に受けてしまう。


「フハハハハハ!! 『お前に俺が殺れるかよ』……俺はそう言っただろ? 俺はなぁ、進化したんだ!」


 全ての弾丸を受けたセイギが弾き飛ばされる事はなかった。弾丸は全方向から飛んできたのだから、セイギが飛んでいく余白はなかった。セイギはその場で崩れ落ちる……否、落ちそうになったが、ならない。まだまだデカギライの攻撃が止まなかったからだ。


「フハハハハハハハ!!」


 高笑いを上げるデカギライはセイギを弄んだ。次の攻撃は一斉にではなかった。敢えての連続だ。


「フハハハハハハハ!!」


 撃たれては弾かれ、立ち上がってもまた弾かれ、セイギは(なぶられ)た。


 一発程度であれば英雄の(ボディスーツ)がセイギを守ってくれるが、そうでなければ当然に傷を負う。


「クッ……クソォ……」


 それでも、セイギは諦めない。嬲れながらも絶望には堕ちない。

 呼吸が荒れて、手足が震え、全身に激痛が走っても、悔しさに拳を握り、立ち上がろうとする。


 ― クソッ……クソッ……俺はまた……騙されたのか………時間が無いのに、こんな時に何やってんだ……でも、俺はこの場所に墜とされた時から、本体から目を離さなかったぞ……分身を生み出すところも見逃さなかった……なのに……いや、違う………ピエロが現れた時、ボッズーを取り返そうって……デカギライから目を離してしまった瞬間があった……その時に別の個体と入れ替わってたのか……ソイツは何処だッ


「ガキセイギ、遂にお前も終わりか? フハハ!! さっきの攻撃は、良い攻撃だったぜ!! 相手が"進化する前の俺"だったら殺られていたぞ!!」


 セイギの思考を読んだかの様にデカギライが喋り出す――そこにはセイギが浮かべた疑問の答えがあった。


「――理由(わけ)も分からず死んでいくのは嫌だよなぁ? だったら教えてやるよ、お前がさっき攻撃したのは、確かに分身じゃなかったよ、"俺だった奴"だ!!」


 この続きを話すのはまた別のデカギライだった――


「もしも俺が、進化せずにお前と戦っていたならば、あの時に俺は殺されていただろうなぁ。でも、今の俺にアレじゃあ無理だよ。何故ならなぁ、進化した俺は分身に魂を移し変える事で肉体を乗り換えられるようになったからだ!!」


「フハハハハ!」


 今度はまた別のデカギライが喋る。


「これで『本物だ、分身だ』と気にする必要は無くなった。俺の意思で分身も本物の俺に変えられるんだからなぁ、命を幾つも持った気分だよ!! これで俺は無敵になった、だからお前は俺には勝てない!!」


「そろそろだな、お前の仲間に取り付けられた爆弾が爆発するのは!!」


「フハハッ! 残念だったな、仲間を助けられなくて!!」


 デカギライ達は喋り続け、セイギを嘲笑い続けた。その代わりに攻撃の手は止まった。

 最後の弾丸に弾き飛ばされたセイギは、地面を転がり、ボッズーの真下で止まった。


「さぁ、お前の仲間が死ぬところを見ろッ!!」


 デカギライは狙いを定めてセイギをボッズーの近くへと飛ばしたのだ――デカギライもセイギと同じだ。戦いの経験を積み、弾丸を受けたセイギがどの程度の距離を飛ぶのかを理解していた。


「いやぁ、まだだぜ……まだ、時間は……あるッ……負けて堪るか!!!」


 セイギは尚も立ち上がろうとする。しかし、体には芯がない。フラフラとして生きるゾンビだ。


「肉体を乗り換える……魂を移し変える………だと……すげぇ進化だな、でも、こっから一気に逆転だ………ボッズーを……ボッズーを助けねぇと……倒れてる暇は無ぇ、考えろ……考えろ……逆転の方法を考えろ………英雄なんだろ……俺よ、ガキセイギよぉ……馬鹿セイギよぉ……ハァ……ハァ……ハァ……」


 セイギは自分を鼓舞しながら立ち上がった。立ち上がらなければ勝利は得られないと知っているからだ、諦めたらそこで終わりだから……仮面の奥の顔は苦痛に耐える度に汗をかき、今ではどしゃ降りに降られたかの様に濡れている。濡れる理由は汗だけでなく出血もある。至る所が痛むが為に、何処を切ったのかは分からないが、血と汗が混じって不愉快だ。頭痛もして、吐き気もする。赤井正義の幼さを残した顔立ちが一気に老け込んだかと思わせる程に歪んだ。それでもセイギは諦めない。




 だが、神は無情である。




「ケケ!! そうだね!! 助けないとねぇ!! ケケケ!! でもその前にお前は死ぬんだよ!! ケケケケケ!!」


 ざらついた笑い声がセイギの耳を撃ち、辺りには灰色の煙が漂い始める。


 煙は無形から形を成していく。

 邪悪な形に成っていく。


「またお前かよ……ピエロ………」


「おいぃ~~! またお前かって、なにさぁ! 邪魔者扱いしないでよぉ、セイギキュン!!ケケケケケッ!! 」


 セイギの眼前に現れた者はピエロだ。ピエロは、陽気とも取れる不気味な笑顔を浮かべていた。笑うピエロは「セイギキュンは口の悪い子だなぁ、そんな悪い子にはお仕置きだ!!」とセイギの首を掴んだ。


「ケケケケケケッ!!!」


「うッ――!!!」


 大きな口から唾を飛ばし、ピエロはセイギを持ち上げる。

 ピエロの身長はセイギよりも低い。160cmあるかないかだ。しかし、やはりピエロは《王に選ばれし民》である、その力は普通とは違う。


「なに……すんだ……邪魔を――」


「するなってかぁ! ケケケッ! バァァァカッじゃないのぉぉぉおおお!!! ケケッこっからは俺も参戦させてもうぜ!!!」


 ニチャリと笑った大きな口から涎を垂らして、ピエロは更に強い力でセイギの首を絞めてくる。


「仮面を被っていても今のお前がどんな(ツラ)をしているのか良く分かるぜ!! 俺様が手を出すのはルール違反だって言いたげな顔をしてるなぁ!! ケケッ、なぁ知ってるか?? ルールってのはさぁ! 破る為にあるんだよ!! だから俺はルールを作ったんだ!! 分からないかなぁ? ケケケケケ!!」


「なん……だと………」


 首を絞められて苦しむセイギは、ピエロの手を掴んだ。


「おいおい……触るなよ。汚いねぇ手でよ!!!」


 ピエロは汚い物を払う様な仕草でセイギの手を叩くと、勢い良く地面に叩き付けた。


「ぐわぁぁぁ!!!」


 叩き付けられたセイギは腹を踏まれる。踏みにじられる。


「ケケケケケ!! 叫べ、叫べ!! いやいや、以前に王が俺達に命じた内容を覚えているかぁ? 『英雄は殺すな』って言ったんだよなぁ!! でもでも王は気紛れだぁ!! マジで困っちゃうよねッ!! 何でかってぇぇぇ? そりゃあなぁ~~この前はお前を殺すなって言っといてさ、今日はお前を殺してこいって言うんだぜッ!!! こりゃあ、ピエロちゃん困っちゃうよ!!! ケケケ!! ピエロちゃん困惑ぅ~~!! ケケケケケケケケ!!!」


 絶体絶命、ボッズーに取り付けられた爆弾が爆発するまでの制限時間は残り五分を切っていた。

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