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ガキ英雄譚ッッッッッ!!!!! ~世界が滅びる未来を知った俺たちはヒーローになる約束をした~  作者: 立神ビーグル
第二章 勇気の英雄の激誕 編

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第6話 勇気の心を武器にして 6 ―恐れるからこそ―

 6


 啖呵にも似たガキセイギの宣言に、デカギライは顔を歪ませて怒鳴った。


「正義の心で悪を斬るだと……だったらやってみろ!! お前に俺が殺れるのかよ!!!」


 デカギライは威勢が良いだけではない、デカギライには自信があるのだ。『このクソガキに負ける筈がない!!』という自信が。何故ならば、デカギライは進化したからだ。敗北するに近い形で終わった前回の戦いのあとデカギライは芸術家によって新たな力を与えられていた。


「ウラァーーーッ!!!」


 猛獣が威嚇するに近い声を発するとデカギライの左手に変化が起こる。これまでのデカギライの左手は、ラッパ型の広い口を持つ銃に変わってしまっていた右手とは違って僅かに人間らしさが残っていた。だが、その左手は変わる。左手は右手と同じに成ってしまう。ラッパ型の銃に、人間的ではない形に、殺戮を目的にするだけの存在に。


「どうだよ、俺は進化したんだ! 銃は二つ、どちらも性能は変わらない、前回はお前に殺され欠けたが今日はそうはいかねぇッ!! 俺の二丁拳銃でお前の体を蜂の巣にしてやるぜッ!!!」


 デカギライは二丁拳銃を二つ並べて構えた……が、対するセイギは怯まなかった。


「左手も銃になるのか……でも俺は負けない!!」


 デカギライの二丁拳銃を見ても、セイギは「へへっ!」と笑った。


「笑ってられるのも今の内だぞ、クソガキッ!!!」


 デカギライの銃が火を吹いた。勿論、一発ではない。二丁拳銃から同時に二発だ。


「……ッ!!!」


 弾丸が放たれるとセイギは走った。自ら弾丸に向かっていく。敵の力を己の力に変える為に素早い動作で大剣を振り、放たれた二つの弾丸を一振にして斬り落した――


「トリャッ!!」


 続けてセイギは跳んだ。

 空中で身を翻して狙うはデカギライの背後だ。

 大剣を両手持ちに変えて、デカギライの背中に向かって勢い良く振り下ろす。


「させるかぁ!!!」


 身を翻したのはデカギライも同じくである。

 デカギライは大剣が当たる寸前でセイギの攻撃を避けた。


「そりゃそうだよな、こんな大振り避けるよな! でもそれで良い! お前との決着をつけるのはここじゃねぇからな!!」


 だがしかし、セイギはデカギライが攻撃を避けるだろうと読んでいた。

 その為、セイギは既に動いている。素早い動きで腕時計の文字盤を叩き、大剣を腕時計の中へと仕舞うと、今度は走ってデカギライの背後に回った。

 セイギは空になった両手を伸ばす。デカギライの首に左腕を回しチョークスリーパーが如く絞め、更に右手ではデカギライの両手首を掴んでギリギリと音が鳴る程に捻り上げる。


「な、何すんだ……」


 デカギライは踠くがセイギの力は強い。逃れられない。


「この状態で撃ってみろ!! お前の弾丸はお前自身に当たるぞ!!」


「クソガキが、またソレかよ……卑怯な真似しやがって……」


「卑怯で結構だ! ボッズー、飛んでくれ!! この場所から移動しよう!!」


「ほいやっさ!!」


「デカギライ、もっと広い場所へ行こうぜ! もっと戦いやすい場所になッ!!」


 セイギは考えた。『この場所で戦い続けては警官達を巻き込む事になる』と。だからセイギはデカギライを連れて飛んだ。


 ― もっと広い場所が良い。その方が俺の新しい技も使いやすい……


 ―――――


 セイギがデカギライを連れて飛び立つと勇気は追い掛け始めた。傍らには愛もいる。

 しかし、追い掛けながらも勇気は疑問に思った。『何故自分はセイギを追い掛けているのだろうか』と。『セイギと離れる為に輝ヶ丘を出ようと決意していた筈なのに……』と。


 ― 何故なんだ……何故、俺の体は衝動に突き動かされ続けるんだ……でも、もしかしてこれは?


 自問自答の中で新たな疑問が浮かんだ。


「もしかして……この衝動は、父さんの言葉の意味って、もしや――」


 ― 恐怖心が無ければ恐怖を感じる人達を助ける為に"勇気の心"を燃やす事が出来ない……この言葉の本来の意味は、もしかして――


 勇気は愛に問い掛ける。

 その質問には希望が宿っていた。

 勇気の中で失われた筈の希望が。


「桃井、キミは何故正義を追い掛けている……」


「えっ? 何よ急に、勇気くんだってそうでしょ」


「いいから答えてくれ。キミは俺と同じ様に未だ英雄の力を持てていない。それなのに何故追い掛けている」


「何故って、そんなの決まってるでしょ? せっちゃんが心配だからだよ、それに私だってみんなを守りたいから!」


 愛は「当然でしょ!」と答えた。


「守りたい……」


「そうだよ」


「だが、キミはまだ変身する事は出来ないだろ?」


「もう……だから何?」


 愛は、セイギが何処に向かって飛んで行くのか見落とさぬ為に、日の暮れた空を見上げていたが、勇気に視線を向けた――勇気に向けた顔には怒りがあった。


「変身出来ないからって見て見ぬ振りをするの? 私はそんなの嫌だよ、私はあのバケモノを許せない! だから私は追い掛けてる! 変身出来なくたって、バケモノが暴れてる時に誰かを守る事は出来る筈だし! さっきの勇気くんも同じじゃなかったの? だからあのバケモノに向かって叫んだんじゃないの? 『やめろ』って!!」


「それは……」


「そうなんじゃないの?」


 この問いに、勇気はまだハッキリとは答えられない。


「いや……それがまだ確証がないんだ。桃井の言葉に納得する所はあるが、俺はデカギライが怖くて仕方がない筈なんだ、なのに俺は気が付けば叫んでいた『俺を代わりに殺せ』と――」


「それは、勇気くんがそれだけ強い気持ちで警察の人達を守りたいって思ったからでしょ?もう……喋ってたらせっちゃんに追い付けなくなるよ、話はここまでにしようよ」


「あ、あぁ……いや、やはり最後に一つ」


「何よ……」


「桃井は死を怖いと思った事はあるか?」


「はぁ……」


 愛は溜め息を吐き、立ち止まった。愛の溜め息には怒気が籠っている。「もういい加減にしてよ!」と愛は怒鳴った。


「勿論怖いに決まってるじゃん、当たり前でしょ!! それは他の人達が死ぬのもそう!! だから私は走りたいの、せっちゃんとバケモノを追い掛けたい!! 誰かが危ない目にあうかも知れないなんて想像するだけでも怖いから!! そんなの絶対嫌だから!!」


 愛は勇気に向かって怒鳴ると、「もう……勇気くんがグズグズしてるなら私一人で行く!」と再び走り出す。


「……」


 勇気は止まったままだ。そして走り出した愛の背中を見詰めて、ゆっくりと頷く。


「そうだよな……そうなんだよな、怖いからだよな」


「えっ? 『怖いから』って何?」


 勇気の声はとても小さなものだった。だが、愛の耳にハッキリと届いた。

 愛は再び立ち止まり、勇気に向き直る。


「そうだよ……それで良いんだよな……やはり……やはりそうか……」


 勇気は頷き続けた。

 やっと気付けた喜びと、これまで気付けなかった悔しさが心の中で混ざり合い、微笑む様に唇を噛んだ。


 ― やはり……父さんの言葉の意味はそういう意味か。あの"心"は、始めに恐怖心が無ければいけないんだ。恐怖心が無ければ燃やせなく、そして生まれもしないものだったんだ。きっとそうだ……いや、今の俺なら分かる。"確かに"そうなんだ……そう言えば、石塚さんが言っていたな。父さんは恐怖心を武器に変えていたと、そうか、ならば……


 父親の言葉の本当の意味に気付けた勇気は、己が進むべき道を決めた。だからもう一度、愛に問い掛ける。


「なぁ、桃井。もしかしてだか、キミは持ってはいないか? 俺の腕時計を――」


「えっ? 俺の腕時計?」


「あぁ……俺の腕時計だ」


「勇気くん……『俺の』って」


 勇気が頷き返すと愛の瞳は輝いた。

 愛は勇気の友達だ。勇気が口にした『俺の』という言葉の意味を理解出来た。


「うん、持ってるよ! 他の誰でもない、勇気くんが持つべき、勇気くんの腕時計を!!」


 愛はコートの内ポケットから腕時計を取り出した。


「せっちゃんからね、頼まれてたの! これはやっぱり勇気くんの物だから渡してくれって!」


「そうか……やはり持っていたか。何故だかそんな気がしたんだ」


 勇気は微笑んだ。久しぶりに浮かべられた本心からの笑顔である。

 勇気は天使の微笑みを浮かべ、腕を伸ばして愛に近付いていく。


「桃井、今の俺には何も出来ないかも知れない。そして、これからもそれは変わらないかも知れない。けれど、それでも俺はあんなバケモノを、バケモノを生み出す奴等を、野放しにはしたくない。俺もキミと同じだ、"怖いから"……見て見ぬ振りをしたくない。だからもう一度、俺がソレを持っても良いかな?」


 勇気は愛の前に立ち、差し出された腕時計を手に取ろうとした。



 しかし――



『許されない、お前は希望を、持ってはならない、何故ならお前の友は、恐怖なのだから………』


 勇気の手が腕時計に触れる直前、薄気味の悪い声が囁きかけた。

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