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ガキ英雄譚ッッッッッ!!!!! ~世界が滅びる未来を知った俺たちはヒーローになる約束をした~  作者: 立神ビーグル
第二章 勇気の英雄の激誕 編

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第6話 勇気の心を武器にして 1 ―正義は勇気を信じてる―

 1


「へぇ~~そんな夢を見たんだ! せっちゃんと勇気くんが出会った頃なんてスッゴい昔じゃん!」


「そうなんだよ! だから変な気分だ、何だか小学生に戻っちまった気分だぜ。それにしても、ちょっと寝過ぎちまったな。起きたら頭がガンガンしたぜぇ……」


 大木の立つ草原に足を伸ばして座る正義は、体の熱を冷まそうと水の入ったペットボトルを首筋に当てた。

 デカギライとの戦いで体力を消耗したせいだろうか、正義の昨晩の睡眠時間は十二時間以上になってしまった。が、現在の体の火照りの原因は寝過ぎたせいではない。別の理由があった。


「あの時はドキドキしたなぁ~~、せっちゃんがスッゴい勢いで自転車飛ばして、全然追い付けなかったし!」


「あぁ、あの時はかなり焦ったからな。勇気が殺されちゃうって本気で思ったし!」


 正義と愛は二人仲良く並んで、懐かしい小学生の頃の記憶を思い出していたが、ここで愛のスマホが鳴った。三十分前に設定したアラームだ。


「あ、時間か?」


「うん、三十分経過だね」


 愛はスマホの画面を正義に見せた。


「あぁ~マジかぁ、まだまだ休みたいなぁ、でも仕方ねぇ! ゆっくりしてても時間ばっかり過ぎてくからな、休憩も終りにしないとだ!」


 正義はゆっくりとはしていられない理由があった。正義にはやらねばならぬ事があるのだ。それが体の火照りの原因である。


「んじゃ愛、約束のコレ、頼むぜ!」


 そう言うと正義は赤いダウンジャケットのポケットの中から文字盤の大きな腕時計を取り出した。


「うん、分かった。勇気くんに会ったら渡しとけば良いんでしょ?」


「あぁ、それはやっぱり勇気の物だからな! 勇気に持っててもらわねぇと!」


 そう、正義が取り出した腕時計は勇気が持っていた腕時計である。

 正義は取り出した腕時計を愛に渡すが、渡された愛は「でも、会えるかなぁ?」と首を捻った。


「会えるさ! 絶対会える! そんな気がすんだ!」


「えぇ、なにそれ、根拠ないの?」


 愛は笑うが、正義は本気だった。


「あぁ、無い! でも俺は信じてる!」


「えぇ~なにそれぇ~」


「へへっ! でもさ、昨日の夢を見て、昔をよぉ~く思い出したら、やっぱ思ったんだ。やっぱ勇気こそが、"勇気の英雄"に相応しいヤツなんだって! だから俺達はまた会える! 俺はそう信じてる!!」


 正義は白い歯を見せてニカっとした笑顔を浮かべた。それから「んじゃ、ヨロシク頼むぜ!!」と言って立ち上がると、更にこうも加える。


「あっ、そうだ、渡す時には"さっきの言葉"もちゃんと伝えてくれよな!」


「うん、でも、アレってどういう意味なの?」


「へへっ! それは勇気なら分かるさ! んじゃ、またな!!」


 正義は大木の幹に腕時計の文字盤を当てて、秘密基地の中へと戻っていく。



「さてさて、ボッズーお待たせだぜ!」


「おぉ、もう三十分経ったのかボッズー! バニラアイス五個しか食べれなかっただボズよ!」


「へへっ! 五個も食べれば十分だろ? 腹がたぷたぷになっちまって特訓どころじゃなくなるぜ!」


 そう、正義は特訓を行なっているのだ。前回のデカギライとの戦いで、咄嗟に繰り出した技を自分の物とする為に――これが正義の火照りの理由だ。


 ―――――


 ― 俺は呆けた奴だな……


 勇気は自分自身をそう思った。


 ― 今更あの頃の夢を見るなんて、馬鹿にも程がある……


 勇気はベッドから起き上がると、スマホを起動させて時刻を確認した。


 ― 呆れる……呆れ果てるな……


 時刻は午後十三時を回っていた。

 早朝には家を出るつもりであったにもかかわらず、睡眠時間は十二時間を超えてしまっていた。

 昨晩眠りにつくまでの約二日の間、勇気は一睡もしていなかった。その為に疲れた身体が長い睡眠を求めたのだろうが、勇気は自分自身に対する苛立ちを抑えられなかった。


「クソ野郎……」


 荷物は昨晩の内に纏めてある。勇気は自分自身を罵倒すると、ベッドのすぐ脇に置いていたボストンバッグに手を伸ばす。今すぐに家を出る事にしたのだ。

 勇気はもう堪えられなかった。『輝ヶ丘を出る』と決意しながらも、いつまでも居座り続ける自分に。


 ― せめて母さんには、輝ヶ丘を出ると伝えたかったが……


『だが、会わずに出る……その方が良いのかも知れない』、勇気そう考えた。

 理由は『母さんは俺が別れを告げれば、きっと悲しむだろう。ならば、何も告げずに出ていった方が、いつか戻ってくるのではないかと希望を持てるのではないだろうか。それは愚かな俺が最後に出来る親孝行になるのでは……』と考えたからだ。


 しかし、


 ― いや………違うな


 勇気はすぐに首を振った。

『この考えは嘘だ……』と。


 ― ……何故嘘をつく、卑怯者が。母さんに会うのが怖いだけだろ……母さんに輝ヶ丘を出ると伝えれば、絶対に引き留められる。そうなれば俺の決断は揺らぐ。俺は弱い人間だから、必ずそうなる。それが分かっているから、会いたくないだけ……何が親孝行だ。嘘をつくな、クズが、頭でごちゃごちゃと言い訳を考えて、本当の自分を見ないようにするのはもう止めろ。自分の都合の良い世界を作って、自分の愚かさから目を背けるな……俺は親友を見捨てて逃げ出した臆病者なんだ。さっさとこの町を出ろ。正義の邪魔になる様な生き方はもう止めろ


 勇気は自分自身を責め続けた。『臆病者』『卑怯者』と。

 玄関に座って靴紐を結ぶその手は、責めれば責める程に震えてくる。


 ― また震えるのか……その震えに何の意味がある。震えれば俺の愚かさは消えていくのか。いいや……そうじゃない。俺は震える事で自分を可哀想な存在にしたいだけだ……どこまでも……どこまでも俺は――



「ピーーンポーーーーン」



 間延びしたインターフォンの呼び鈴が勇気の自己否定を止めた。

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