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ガキ英雄譚ッッッッッ!!!!! ~世界が滅びる未来を知った俺たちはヒーローになる約束をした~  作者: 立神ビーグル
第二章 勇気の英雄の激誕 編

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第5話 俺とお前のオムライス 11 ―俺とお前のオムライス―

 11



 五分後――



 試合開始から十五分が経った。未だに勇気と山田の戦いは続いている。試合に進展はない、二人はさながら荒々しいキャッチボールを行っているだけだった。


「ハァ……ハァ……」


 山田の豪速球を受け止める度に勇気の呼吸は乱れていった。そして腕には痛みが走っている。


 ― どうしよう……このままじゃ負ける……


『山田の呼吸も乱れているが、俺よりかはまだ余裕がありそうだ……』と勇気は感じる。

 実際、顔を歪めて腕の痛みに耐えている勇気とは違って山田は未だに嫌らしく笑っているのだから。


 ― この腕じゃ、アイツが投げたボールを受け止める事はもう無理だ……


 現在、ボールの支配権は勇気が握っている。


 ― どうにか次の投球で山田をアウトにしなければ……でも、どうしよう。どう戦えば良いんだ


 腕に痛みがあるという事は、その分力強い投球は難しくなるという事。『次こそは山田をアウトにしなければ』と思いはしても、闇雲に投げただけでは受け止められてしまうと明白……勇気は悩んだ。


 その時――


「腹減ったな!! オムとライス!!」


 誰かが叫んだ。

 甲高くてキンキンとした声だった。


「正義くん……?」


 声の主が誰か勇気はすぐに分かった。

 分かるとすぐに外野に視線を移す。すると、正義のニカッとした明るい笑顔が見えた。

 

「オムライスが食べたい! オムとライス!! 勇気が卵焼きで、俺がチキンライスだ!!」


 正義は勇気を見詰めながら叫んでいる。

 それから、その眼差しを山田へと移した。


「オムライスってさぁ、卵焼きだと思ったら、後からチキンライスが出てくるんだよなぁ! 驚くよなぁ~~! なぁ勇気! 驚いてもらおうぜぇ!!」


 正義は同級生からは、ちょっとバカなお調子者と思われている。だから皆は正義の発言を笑った。お調子者の正義がギャグを飛ばしたと思ったのだ。隆や紋土や拓海も笑い、山田でさえも『なに馬鹿な事を言っているんだ?』という風な呆れ顔で小さく笑っている。審判をしている担任でさえも「赤井くん、今日の給食はカレーだぞ! オムライスは来週だ!」と笑って言うだけだった。


 ― そうか、そうだった!!


 だが、勇気だけは違った。正義の言葉の意味を勇気だけは理解出来た。


 ― 俺はいつの間にか、戦っているのは俺一人だと思い込んでいた。でも違うんだ。これはチーム戦だ。俺には仲間がいる。仲間と一緒に勝ってこそ本当の勝利だ! そうだよね正義くん!!


 皆はまだ笑いの渦中にいるが、勇気は正義に向かってコクリと頷いた。そして山田を指差す。


「勝負だ山田ぁ!! 行くぞ!!!」


 内野と外野を隔てる白線のギリギリに立っていた勇気は、ボールを抱え直すと雄々しい叫び声を上げて走り出した。向かうはセンターラインのギリギリだ。


「おりゃーーー!!!」


 雄々しく叫びながらも慎重に、センターラインを飛び出さぬ様に左足を踏み出し、勇気は力を込めてボールを投げた。

 山田に向かっての思いっ切りの投球だ――と、皆がそう思った。だが、そうではない。誰もが皆、勇気は山田に向かってボールを投げたと思った、だが違った。勇気の投げたボールは勇気から見て向かって右側、外野に向かって飛んでいく。そこに居る者は最前に『オムとライス!』と叫んだ勇気の友達、赤井正義だった。


「へへっ!」


 誰もが皆、山田に向かってボールは飛んでいくと思っていたのだから皆は驚く。が、正義だけはニカッと笑った。


「決めるのは俺だぁ! 行くぜ、決めるぜぇッ!!」


 正義はボールをキャッチした。そこからは素早い。勇気からのパスが来ると知っていたのだから準備は万端だ、一秒の間も空けずに正義は攻撃に移った。


「オリャーー!!!」


 正義は跳び上がった。跳び上がり、雄叫びと共にハンドボールのシュートが如く山田に向かってボールを投げる。


「何ッ! 赤井だとッ!!」


 ボールは正義の小さな体から放たれたとは思えないくらいの豪速球で山田に向かって飛んでいく。

 山田も皆と同じだった。勇気のボールは自分に向かって飛んでくると思い込んでいた。だから遅れた。急いで体を捻り、正義の方を向くも――


「あぁーーーッッ!!!」


 山田の悶絶の声が校庭内に響く。

 正義の投げたボールが左の太股に当たったのだ。

 山田は叫びながら、崩れ落ちる様に倒れていく。

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