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ガキ英雄譚ッッッッッ!!!!! ~世界が滅びる未来を知った俺たちはヒーローになる約束をした~  作者: 立神ビーグル
第二章 勇気の英雄の激誕 編

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第5話 俺とお前のオムライス 9 ―ドッヂボール―

 9


 勇気が『人生が変わる』と思えたその日は水曜日であった。そして、水曜日は正義が唯一楽しみにしていて、得意ともしている授業が行われる日でもある。その授業は三時間目と四時間目を通して行われるもの、体育だ。


「今日はドッヂボールだぞぉー!」


 正義の学年は二組あるが、体育は二組合同で行われる。校庭に出てきた二組ともの生徒が準備運動を終わらせると、正義のクラスの担任が声を張り上げた。直後に歓声が起こる。ドッヂボールは子供達にとっては特別な物だからだ。


「へへっ! 勇気、ドッヂボールだって! 楽しみだな、一緒のチームになろうぜ!」


「あぁ、良いよ!」


 準備運動は生徒が仲の良い者を選んで二人一組になって行われる。正義は勇気と組んでいた。ドッヂボールが大好きな二人も他の生徒と同様に喜びを見せるが、しかし喜ぶ生徒達の中で一人だけ眉間に皺を寄せている男がいた。それは乱暴者の山田力也だ。

 山田は嬉しそうに笑い合っている正義と勇気を睨み付けながら、「おい……篠原」と準備運動の相手に選んだ男子の名を呼び、相手の肩に腕を回した。


「なぁ、篠原……俺が昨日言った事を覚えてるよな」


「うん、次にドッヂボールの授業があったら、その時は――」


「おっと……それ以上は言うな、他の奴に聞かれたら先生にチクられる」


 山田は『篠原』と呼んだ男子にニヤリとした笑みを向けた。

 篠原という名の男子は巨漢の山田とは正反対で背が低い。小さくてガリガリでズル賢そうな顔をしている。


「本当にやるの……?」


「あぁ、勿論だろ。昨日考えた作戦が今日にはもう使えるなんて俺はついてる男だよな」


「う、うん……」


 篠原のズル賢そうな顔は山田の不気味な笑みを見るとブルルと震えた。

 クラスの中で正義の次に背の低い篠原は山田の数少ない友達であり、一番の子分である。子分であるから篠原は知っている。山田が今見せている笑顔は誰かをボコボコにする前に見せる笑顔であると。


 ――山田が悪巧みをしているとは知らぬ両クラスの担任や生徒達は、それからすぐにドッヂボールのチーム決めを始めた。

 ドッヂボールは男子と女子が分かれて行われる。男子と女子が分かれると作られるのは二チームだ。チーム決めは単純である。『仲の良い者同士で分かれて!』という二人の担任の号令で生徒達はまず大雑把に分かれる。そこからチームの体格差を均等にする為に担任達による独断と偏見によって判別が行われ、二つのチームのバランスが整えられる。


 正義は約束通りに勇気と同じチームになれた。他にも隆も紋土も拓海も一緒である。

 対するは、山田と篠原の居るチームだ。

 否、『居る』というよりも『率いる』チームだ。山田はチーム分けが始まると運動神経が良くて同じチームになれば優位になるだろう男子を次々に仲間にしていった。それも強引に。

 相手の腹に拳を押し当てて『殺すぞ!』、これが山田のいつものやり口である。巨漢で乱暴者の山田に脅されると大体の者は山田の言う事を聞いてしまう。山田が強引に仲間を集めても、ある程度は両チームのバランスは整えられたが"完全に"とまではいかなかった。


 チーム決めが完了すると男子には男子側の審判になった正義のクラスの担任から、女子には正義の隣のクラスの担任から、試合のルール説明が行われた。

 試合の数は三試合、勿論二試合勝ったチームが勝ち。勝ちチームが決まってもまだ四時間目終了のチャイムが鳴らなければチームは再編成され、それから再び三試合を行うとの事。


「さぁ、始めるぞー!」


 ルール説明が終わると、男子の審判になった正義のクラスの担任が早速と号令をかけた。

 号令を聞いた男子達は内野と外野に分かれて各々の好きな場所に立っていく。

 内野と外野が決まると、次に行われるのはボールの支配権を最初にどちらのチームが握るかを決める為のジャンプボールだ。これのジャンパーは審判が指名するのだが、大体がチームの中で一番背の高い生徒になる。今回もそうだった。正義達のチームは勇気、山田率いるチームは山田が選ばれた。


「勇気、負けんなよ! ボール取ってこい!」


「うん、勿論だ!」


「へへっ! がんばれ!」


 センターラインとして校庭に引かれた白線に向かって歩く勇気に、正義は声援を送った。


「二人とも準備は良いな」


 センターラインの前に立った勇気と山田は睨み合う。

 山田は歯軋りをする様に顎を左右に動かしながら、勇気は毅然とした態度でいながらもその瞳は力強い。


「それでは……よーい! スタート!」


 二人の頭上にボールが上がった――このボールをジャンパーが叩き、自分の陣地へと落とせればボールの支配権を最初に握れる。


「とうっ!」


 勇気と山田の身長差は勇気が少し低いくらいでほぼ同じ。勇気はボールが上がると素早くジャンプした。


「ふんッ!」


 山田は僅かに遅れた。


 この姿を見て、勇気は『勝った』と直感的に思った。

 だが、違う。山田が僅かに遅れたのは山田の作戦であったからだ。山田はボールに向かってジャンプすると見せかけて、大きな腹で勇気の体を押したのだ。


「うわっ!」


 重たい衝撃で弾かれて、ボールを触る事すら出来ずに勇気は着地してしまった。


「さぁ、ボールの支配権が決まったな、試合開始だ!」


 山田の行為はワザとではないと審判である正義のクラスの担任は判断した様子……ボールは山田率いるチームに渡り、試合は開始された。

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