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第4話 終わりの始まり(追放side)


 俺は子供の頃から強欲だった。


 貴族の次男として生まれ、欲しいものがあれば何でも買い与えてくれる両親と兄に甘やかされて育てられた。


 金、力、権力。

 何もかも思い通りすることができた。


 だけど、それだけでは満足することができなかった。今度は、自分の周りにないものを手に入れたくなってみたのだ。


 俺たちエルファン家の護衛で、よく顔を出していた剣士の男がギルドの依頼を受けて来ていたことを知り、そこで初めてギルドという存在を知ることになった。


 ギルドについて知れば知るほど、欲望を掻き立てられていった。

 俺もギルドを立ち上げて、全てを手に入れてみたい。


 父に頼めば、すぐに資金を用意してくれた。

 それだけではない、強くなるために腕の立つ剣士を雇って指南してもらった。


 新たなギルドを創設し、有能なメンバーをかき集めた。聖女の職業となった少女リーン、そしてついでに付与術士のユウもギルドに加入させた。


 ユウの強化付与は使えた。

 魔法をそこそこ使える程度でまったく役に立たないが味方を強くするのには特化していた。


 そして、この男の幼馴染リーンは想像以上だった。

 やはり聖女の職業を引き当てただけあって、有能以外の言葉が見つからない。


 全体回復、魔力量、戦闘力、最強の魔法使いだ。

 さらにユウの強化付与をかけられたことで更に強くなった。


 加えて美人で俺の好みの女だ。

 欲しいものを全部自分のものにしたい欲望を抑えつけることができなかった。


 リーンは幼馴染のユウに気があったみたいだが、やはり田舎の女だけあってチョロかった。


 お前のことを愛している。

 ユウはお前を女として見ていない、だが俺は違う。

 リーン、俺の女になれ、


 そう言って押し倒せば、簡単に股を開いてくれる単純な女だった。

 だがそこも愛おしい。

 せいぜいギルドのため、俺のために働いてくれよ。


 有能なギルドメンバーをユウの強化付与によって総合能力を引き上げ、俺たちは超難易度のブラック・ドラゴン討伐に挑んだ。


 やはり、その想像以上に善戦して勝利した。

 ドラゴンの攻撃を受けても防御力が上がったことで致命傷にはならず、必殺技でようやく傷をつけることができたドラゴンの鱗でさえ通常攻撃でダメージを与えることができた。


 そして、ブラック・ドラゴン討伐の成功で、ギルド『聖なる神盾」はS級に昇格した。

 リンドヴルム王国に数多あるギルドの中で、わずか五年で頂点に立ったのだ。


 全てを手にしたのだ。

 名声、地位、最強のギルドメンバー、女。

 強欲こそ正義だ、弱い奴らなどいらない。


 強化付与の効果は永久的に残るとユウは言っていた。

 ならば、全メンバーを強化付与した無能なユウはもう必要なかった。


 俺は奴を追放した。

 信頼していた相手に裏切られたことを知ったあの絶望的な顔は今でも忘れられない。

 幼馴染を奪われたことで逃げ出したときのあの背中も、思い出すだけでもゾクゾクする。


 やはりグズは絶望させるに限るな。

 あんなゴミなど、もう必要ない。



 だが、混乱が始まったのはユウを追い出して数日後のことだ。


「ザラキさん! 今朝、オーク討伐に行ったメンバーが負傷して戻ってきました!」

「護衛任務で依頼人を死なせた!」

「万全の状態で挑んだ魔物に手足も出ずに、討伐に失敗した!」


 ギルド拠点は地獄絵図になっていた。

 魔法や剣技が、まるで別人のように鈍くなって、筋力、魔力、俊敏性.......全てが以前より明らかに劣っていた。


「ザラキさん! 絶対におかしいぞ! 急に全員が弱くなることなんてあり得るか!?」


 ギルド副マスターのアルデラが叫んだ。

 いや、あり得ない、あってはならいのだ。


 何故だ、何故だ、何故だ。


「いや、待てよ……」


 最悪の想像をしてしまう。

 まさか、こないだ追い出した付与術士のユウが、メンバー全員に施した強化付与を解除したというのか。


 そんな……まさか。

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辞めさせられた腹いせにデバフの呪い掛けて居なくなったとか言われたら更に怖い。
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