アオイの作戦
「待たせたね!」
その声を聞いた瞬間。
どれだけ地獄みたいな光景でも。
どれだけ絶望的な状況でも。
その声だけは聞き間違えるはずがない。
何度も夢に見た。
何度も思い出した。
何度も聞きたかった。
俺が、この世界で一番好きな人の声!!
「アオ__」
ドゴォォォォォォォンッ!!!!
「ぐぇ__」
声に振り向いた瞬間ブルゼの前脚が真横から直撃した。
俺の身体は砲弾みたいに吹き飛ぶ。
壁。建物。瓦礫を全部をぶち抜いていった….
「リュウトっ!?」
あまりにクリティカルに入ったのでめちゃくちゃ心配そうに来るみや。
追撃しようとブルゼの足が降りおろされるがその黒い足は合流したミクラルの代表騎士のナオミに防がれる。
「これで貸し一つだよ英雄、そしてあの時の借りを返しに来たよ!化物!」
そのまま力任せに足をもぎ取ってそれを槍投げの様にブルゼに投げる!
虫の硬い甲殻の足は見事、ブルゼの大きな目に突き刺さり辺りに体液を飛び散らせた。
「時間稼ぎ、完了だな」
パッパッと埃を払いながら立ち上がる。
「リュウトっ……大丈夫なのっ?」
「あぁ、怪我はアンナさんが治してくれたし、不思議とアオイさんの声を聞いた瞬間だったからか痛くなかった」
アオイさんの声を俺の全神経が向いていたから痛みなんて気にならなかったんだな……さすがアオイさん!
続々と駆けつける騎士や冒険者たちが、援護射撃として魔法を放つ。
クリスタルドラゴンの時と同じ。
大討伐!
遠くでは蝿の返り血を浴びてベトベトの身体でアオイさんを抱きしめてるアカネが見えた。
「妹ちゃーーーーん!!!!!」
「うわっぷ!?」
「妹ちゃん!良かった!良かった!良かったよかった!無事だったんだね!」
「ア、アカ姉さん!?」
「なんとか無事だったよ」
「妹ちゃん妹ちゃん妹ちゃん妹ちゃん!」
「あ、はは……」
当然、面識のあったアンナさんも彼女の元に向かったが、一言二言の後にこちらに来た。
「良いんですか?あんまり話さなくて」
「コイツを倒したらいつでも話せるからね、あの子には後でたっぷりと私の記憶の事を聞かせてもらうわよ。それよりアンタは良いの?」
「俺もアカネ達の話が終わったら行くつもりですよ」
「そ」
3人でブルゼと戦う冒険者や騎士達を見る。
「…………やっぱり、もう少し俺が戦うか」
最初は数で圧倒して勝利ムードだったが、異常な再生能力や攻撃力で死人が出始めている。
ここは俺が注意を引きつつ此方に危害を最小限にした方がいいだろうが……決定打がまだない、これではさっきの俺がやってたことと一緒だ、倒せない。
「みや」
「ごめんっ。弱点なぃっ」
「うーーん、とりあえず続行だな」
そう言いながら俺は気合いを入れ直して前にでる。
「ハァアア!!」
俺の攻撃が当たり、ブルゼの甲殻へ傷が刻まれた瞬間。
周囲から歓声が上がる。
「あの硬い甲殻を一瞬で!?」
「代表騎士レベルか!?」
「待て!あれってグリードのクリスタルドラゴンの勇者じゃないか!?」
「来てくれたのか!」
よし。
ここに来てクリスタルドラゴンを倒したテンプレートが効いて来て俺が目立ち指示に従ってくれるようになり、冒険者達も動かしやすくなる。
こういう時の名声は便利だ。
「みんな!俺がメインで動く!だから指示に従ってくれ!」
「うおおおおお!!」
「あの英雄に続けぇぇぇぇ!!」
これでこの場の主導権は握った。
あとは流れに任せる!
頼んだぞ、俺の運命力!(テンプレート)
____そして、俺の読み通り、ほどなくして展開が来た!
「リュウトさん!」
戦っている最中に用を済ませてアカネが来た。
一旦、みんなに任せて俺は戦闘から離脱する。
「どうだ?アオイさんの様子は」
アカネは少し考え微笑みを浮かべた
「あの子も成長して強くなってました」
自分のように嬉しそうに言うアカネ
「そうか!」
「それで!妹ちゃんから作戦です!」
「な、なんだっと!?」
アオイさんが!?
「俺は何をすれば良い?」
「その……作戦内容自体はシンプルなんですけど」
あかねの反応の歯切れが悪い。
「どうした?」
「そのですね……人の問題というか……」
「?」
そう言って此方に来たのは“綺麗な日本刀”を持った。ヒロユキ。
同じ勇者であり、同じ勇者のアオイさんの弟にあたる人。
将来俺はアオイさんと結婚する(予定)から心ではお義理兄さんと呼んでいる。
てわけで!
「ヒロユキ!やっぱり来たのか!」
「……お前も、よく頑張った」
「へへ」
アオイさんと血が繋がってる人から褒められると嬉しいなぁ
「でも、人の問題ってどう言うことだ?ヒロユキの事は話しただろ?」
「いえ……その……ヒロユキさんじゃなくて……」
その瞬間だった。
全身の毛が逆立つ。
心臓が跳ねる。
反射だった。
レイピアが抜かれる。
振り向きながら放った突きは、真後ろに立っていた“漆黒の騎士”へ向かっていた。
「…………」
しかし、その攻撃は避けられていた。
「…………アカネ、状況は」
「妹ちゃんの護衛で今は妹ちゃんの指示で動いています」
「…………」
俺は剣を下ろした。
「…………」
黒騎士は何も喋らない。
「何か言えよ」
「…………お前と話す事は特にない。“アオイの為”に俺は俺のする事を遂行するだけだ」
その言葉にイラッと来る。
理屈じゃない。
単純に気に入らない。
アオイさんは俺のものだ。
――と言いたくなる衝動を無理やり押さえ込む。
くそが。
「それで、アオイさんの作戦は?」
「それはですね__」




