終わり。
世界が――終わる。
それは、たった一人の“女神”によって。
太陽は消え、空には光も風もない。
すべての命が絶え、残されているのは勇者パーティーの亡骸と私。
『キャハハハハハ♡』
全てが美しい“女神”――金色の髪に真紅の瞳、吸い込まれそうなほど白く光る肌。
その背には、黒く禍々しい漆黒の翼。
世界の終焉をも着こなす彼女の美しさ。
『これで、全部終わりね♪』
彼女は嬉しそうに笑っていた。
だがその中には、“私”の母がいる。
「お母さん……助けて……!」
涙をこらえて、私はその身体の奥にいる母に声を届ける。
『キャハハハ♡ 無駄よ? アオイちゃんは、完っ全に私に“食べられた”んだから♡』
「……そんな、こと……」
『じゃあね、ユキちゃん。ばいばーい♪』
女神が片手を上げ、小さな魔法陣を指先に展開する――その瞬間。
『__っ!?』
動きが止まった。
『……さすがね。勇者に選ばれるだけのことはあるわ。アオイちゃん』
「……っ!? いま、“アオイちゃん”って……!」
まだ、中にいる。
彼女の心が、完全に消えていない!
「お母さん!!」
『う、ぐ……や、やぁ、ユキちゃん……元気……かな……?』
その声に、私は涙を溢れさせる。
「お母さん……!」
『あ、はは……ごめんね、お母さんダメだったみたい』
「そんなことない! 何も悪くない! 今だって、私のために……!」
『ありがとう……でも……もう、時間がない……』
次の瞬間、母の魔力が働き、私の足元に魔法陣が浮かび上がった。
「転送魔法……!?」
『最後のお願いだよ、ユキちゃん……世界を救って』
「私が!?どうやって!」
『大丈夫……君は……俺の娘だから……』
「…………っ」
『心が挫けそうなときは、俺の言葉を思い出して』
――私は思い出す。
「“お前を信じる、俺を信じろ!”――そう、ですよね。お母さん……!」
母は小さく笑った。
そして、魔法陣が光を放つ。
私の体が光に包まれ、ゆっくりと分解されていく。
『君は本当に……最高の娘だったよ』
最後に見た母の顔は、涙を浮かべながらも――微笑んでいた。
――そして私は、過去へ送られる。
物語は、終わらない。
希望をつなぐために、“私”はまだ生きている。




