モンスターコロシアム特別枠
俺達は国王の元へ報告に来ていた。
ミクラル城、玉座の間。
高い天井。磨き上げられた白大理石の床。
壁には水を模した装飾が施され、光が揺らめくように反射している。
「面を上げよ、勇者リュウト」
王の声が静かに響く。
俺とアカネは片膝をついたまま、頭を上げた。
「《ミクラルヴォルケーノ》にて確認された危険個体――スラッシュゴルドラ。確かに討伐いたしました」
転送魔皮紙を展開する。
映し出されるのは、解体済み素材の一覧。
「ほう……」
王の目が細められる。
「報告によれば、ダイヤモンド級でも複数名で挑むべき存在。よく成し遂げたな」
まぁ、本当はミクラルのギルドで討伐するところを“クリスタルドラゴンを倒した勇者”と言う肩書を持つ俺の実力を見たのだろう。
「仲間の助力あっての結果です」
「仲間……?」
そこで、俺は一瞬だけ言葉を区切った。
玉座の間の空気がわずかに変わる。
「……実は、討伐の過程で一体の魔物と共闘いたしました」
ざわ、と周囲が揺れる。
アカネが小さく息を飲む。
俺はそのまま続けた。
「アールラビッツ。現在は我々に協力する意思を示しております」
ちなみに当の本人は一旦ミクラルヴォルケーノに置いてきている。
「魔物を連れて帰ると?」
王の声に、ほんの僅かな興味が混じる。
「はい」
正直にいく。
ここで嘘をつく意味はない。
「ギルド規約に抵触する可能性があることは承知しております」
「……ほう?」
「未登録魔物の街区持ち込み禁止条項。危険度B以上個体管理規定。生息域外移送制限」
玉座の間が静まり返る。
「それを理解した上で、申し上げます」
俺は一歩前に出た。
「我々は――“モンスターコロシアム”への出場を希望いたします」
空気が変わった。
王の目が、明確に輝く。
「……理由を聞こう」
「コロシアム登録個体は、公認戦闘魔獣として扱われます」
「続けよ」
「公衆の前で統制・知性・危険度の審査を兼ねることが可能。結果次第では、正式な従魔登録へと移行できる」
沈黙。
玉座の間の誰もがこちらを見ている。
「だが、それは家畜の魔物の話だ。当然外からの魔物は危険である事は分かるな?」
「はい」
「ふむ……」
王の口元がわずかに上がる。
「……面白い」
王は肘掛けに指を軽く打ちつけた。
「だが、失敗すれば?」
「その場合は、従います」
アカネが息を呑む。
「我々はルールを破るつもりはありません。ただ――仲間を手放すつもりもない」
しばしの沈黙。
やがて王は、ゆっくりと笑った。
「良いだろう」
ざわめきが広がる。
「次回開催のモンスターコロシアム。特別枠として出場を許可する」
「ありがとうございます」
「ただし」
王の目が鋭くなる。
「観客の前で制御不能と判断された場合――その場で処分だ」
アカネが一瞬震える。
だが俺は頷いた。
「承知しております」
──こうして。
次なる舞台は、灼熱の火山ではなく。
歓声と視線が渦巻く、闘技場へと移ることになった。




