グロッグドラゴン
グロッグドラゴン。
岩に擬態する巨大な四足歩行型の魔物。主に洞窟や岩盤地帯に生息する。
全身は岩盤のように硬い装甲で覆われており、長年動かずにいる個体は苔や土を纏い、完全に地形と見分けがつかなくなる。
四肢は太く短く、先端には掘削に特化した鋭い爪を持つ。移動のたびに地面を削り、戦闘時には周囲の岩盤ごと破壊するため、逃走は困難。
口内には岩を削り砕くための強靭な牙が並び、咆哮は声というより岩同士が擦れ合うような低音を発する。
待ち伏せを得意とし、獲物が近づくまで“岩”として静止する。
「性格は凶暴、縄張り争いが強い、肉食」
ギルドに来る前にチラッと寄った魔道図書館で見て暗記してきた事を整理する。
「グォオオオルルル!!」
咆哮とともに、ドラゴンが四足を踏み鳴らし、突っ込んでくる。
「まずは避ける」
俺はまっすぐ来る敵に対し横は避ける。
その際に時間も測った。
「時速40キロってところか、それなら焦らなければ問題ないな」
デカいトラックを避けるイメージするだけの簡単な事。
まずは距離を取る。間合いを測って、動きのクセを観察する。
「グオオオオア」
「なるほど、確かにその大きさと首の長さなら、わざわざ身体ごとこちらに向けないと攻撃が難しいだろうな」
元々待ち伏せ専門の魔物だ。
観察すれば、所々ボロが見えてくる。
「グオオオオオ!」
次は突進で轢き殺すのではなく、俺に噛みついてこようとしてくるが、そんな事を許す距離にはいない。
あえて、相手からすると“近づく”という動作をしなければいけない距離をとっている。
それも、遠すぎず近すぎず距離を取る事で体力も最小限に抑えがら……
「しかし、隙がありすぎるな、防御力に絶対の自信があるからなのか?」
グロッグと言うだけに、皮膚を覆う鱗は進化して岩そのものだ。
並の武器なら刃を通さない。
「だから、こう言う時のためのこの武器だ 」
俺は腰からレイピアを抜く。
今回の敵はそう言う意味でも初陣として相応しい相手だ。
「グオオオオア!!!!!」
「そこだ」
俺は噛みつき攻撃を首の長さギリギリの立ち位置で避け“グロッグドラゴンの右目を狙いレイピアを突き刺し”抜いた。
「グオオオオオ!」
初めは右目をやられたことに怒っているのか元気に吠えたが____
「オ、ゴ__」
吠えた後、巨体が揺れ、四肢を崩し、そのまま地に伏した。
「多分、その位置にあると思ったよ」
そう、岩みたいな頑丈な鱗を砕かなくても良い。
相手が生きてある以上“脳”があるのだから____
図鑑で見たときに大体の脳の位置は把握していた。
あとは応用、突き刺し脳に到達したときにそれを切り裂けばいい。
「ま、デカい魚をしめてるみたいなもんか……解体してギルドに送ろう」
俺は剣を鞘に戻し、素材回収のために腰を落とした。
これで異世界テンプレートなシーン。
“格上の依頼を間違って受けてしまったが最速でクリアして冒険者やギルド達が大騒ぎ!前代未聞の期待のルーキー現る!”
を実現できるだろう……
◇ ◇ ◇
――その頃、密林の奥。
しんと静まり返った木陰で、一人の少女が裸で立ち尽くしていた。
小さく細い体。風に揺れる肩までの黒髪。
白い肌。赤い目。
「……この感覚……リュウトさん……ですね……」
物語は、またひとつ繋がっていく。




