白兎、名を得る
マグマの滝が、変わらず轟いている。
「……さてっと」
「きゅ」
強化装備をつけたままのアールラビッツ。
あれだけ暴れていたのに、今は妙に静かだ。
ここからが本番。
言葉を慎重に選ばないとな……なんせ、テンプレート式の“圧倒的強さを見せて仲間にする”という話を少し逸れてるから
「助かった。お前がいなきゃ危なかった」
これは半分本当だ、退却して装備を整えてくれば勝ってたがあの状況では負ける確率もあった。
胸を張るように鳴くアールラビッツ。
だが、そのまま数歩だけ距離を取った。
去るのかと思った。
……だが、行かない。
振り返る。
こちらを見る。
なんやそりゃ……
「ごほん……住処はどうした?」
耳が、わずかに下がる。
ゴルドラに壊されたってとこか……
ちなみにだが。
本来【アールラビッツ】は群れで行動しない、寧ろ同種がナワバリに来たら追い返すほどの気象の荒さだ。
俺は腕を組む。
「ついてくるか?」
「きゅ!?」
「だが、俺たちは危険な場所に向かう。安全な旅じゃない」
それでも来るか?
言葉にせず、視線で問う。
白い影は迷わなかった。
ゆっくり歩み寄り、俺の足元で止まる。
装備をつけた前足で、俺のブーツをちょんと叩いた。
……なるほど。
「決まりだな」
「えっと……名前、いりますよね?」
アカネは少し考え込んで――
「……あーたん、とかどうでしょう?」
「……は?」
思わず間の抜けた声が出た。
「だって、アールラビッツの“あー”ですし、可愛いですし!」
「きゅ?」
当の本人は、きょとんとしている。
「……あーたん、か」
強敵の脚を蹴り折り、鎌を砕いた戦力にしては、ずいぶんと柔らかい名前だ。
だが。
「あーたん」
試しに呼んでみる。
「きゅ!」
嬉しそうに鳴いた。
……どうやら気に入ったらしい。
「よし、これからよろしくな、あーたん」
白い影が、俺の隣にぴたりとつく。
マグマの滝を背に、俺たちは歩き出した。
順調にテンプレートを進めている……待っててくださいね……アオイさん!




