スラッシュゴルドラ討伐
リュウトさんが動いた。
きっと、何か思いついたんでしょう。
「はぁぁあ!!」
この状況で、普通の奴隷なら置いて行かれたと思うはず。
でも、リュウトさんは違う。
なら、私は――
「全力で時間を稼ぐ!」
自分に注目を向けさせるため、あえて正面から仕掛ける。
本来なら私より強い相手……だけど!
「もきゅ!」
ゴルドラが攻撃モーションに入った瞬間、アールラビッツが横から打ち込み、隙を作ってくれる!
「ありがとうございます!」
「もきゅ!」
これなら、まだ戦える!
「はぁぁ!!」
小さくしたハンマーを壁に投げる――その瞬間、元の大きさへ戻す。
「__!」
着弾と同時に、砕けた岩の裂け目からマグマが噴き出し、ゴルドラは頭から浴びる形になった。
「ダメージにはなりませんが、目眩ましにはなります!」
今は、数秒でもいい。時間を稼ぐ!
「____」
案の定、ゴルドラは鬱陶しそうに身を引いた。
「そこです!」
呼び戻したハンマーで足場を叩き崩す。
「__!?」
踏み出すはずの場所が消え、巨体がわずかに揺らぐ。
「むっきゅ!」
その隙を逃さず、アールラビッツが勢いよく蹴り込んだ。
「__!!!」
体勢を崩しながらも鎌が振り下ろされる。
当たらない攻撃と分かっていても熱風が頬を掠め、恐怖心を煽ってくる。
「まだ、まだです!」
攻撃はしない。
倒す必要もない。
狙うのは“苛立ち”。
「ほら!こっちですよ!」
わざと距離を詰め、すぐ離れる。
鎌を振らせ、跳び、避け、また視界に入る。
時間は稼げている!
「くっ__」
止まれば終わる。
「むきゅ!」
アールラビッツが再び跳び、顔面へ体当たり。
「助かります!」
信じて、耐える。
____そして!
「悪い!待たせた!」
「リュウトさん!」
「これを使え!アールラビッツ!」
リュウトさんが投げたのは……装備?
それは空中で展開し、アールラビッツの前足と後ろ足にそれぞれ装着される。
「きゅ?!」
「これで鎌も怖くないだろ!しかも威力も強化してある!」
「きゅ!!」
言葉が通じているのか、アールラビッツは迷いなく鎌へと跳んだ。
その瞬間――
スラッシュゴルドラの鎌が、無惨に砕け散る!
「__!?」
折れた巨大な鎌が、くるくると宙を舞い、壁へ突き刺さった。
「よし!上出来だ!」
いやいやいやいや! 上出来!?
今の間に作ったんですか!?
この何もない場所で!? リュウトさんが!?
あ、あの……えっと、それ……装備屋さん悲しみません?
とにかく! やることが規格外です!
さすがリュウトさんです!
「遅くなったな!すまん!」
「いえ! むしろこの短時間で作ったなんて……すごすぎます!」
「即興だから少し不安だったが、上手くいってよかった。さぁ! 俺たちも行くぞ!」
「はい!」
鎌を失ったゴルドラは、怒りに任せて残った片鎌を振り回す。
「荒れてますね!」
「鎌を失ってバランスも崩れてる。さっきより隙が多い――つまり、今が攻め時だ!」
「きゅ!!」
強化装備をつけたアールラビッツが、真正面から突っ込む。
ゴルドラが鎌で迎撃しようとするが――
ガギンッ!
装備が鎌を弾き返す。
「よし、そのまま押せ!」
「むきゅうう!」
連続の蹴りが叩き込まれる。
「__!」
ゴルドラが大きく体勢を崩した。
「アカネ!」
「はい!」
ハンマーを最大化し、渾身の一撃を振り抜く。
巨体が傾き、マグマ湖の縁へと滑る。
「リュウトさん!」
「任せろ!」
投げ放たれたレイピアが、顔面の関節部に突き刺さる。
「今だ!ウサギ!」
「きゅああ!!」
レイピア目掛けて全力の蹴り。
その瞬間、刻まれていた魔法陣が発動し、爆発が起こった。
「____ッ!!」
「あれは!?」
「ちょっとした魔法さ。火打ち石みたいなもんだ」
爆発に弾き飛ばされた顔が、べちゃりとマグマへ落ち、溶けながら沈んでいく。
「__!!!!」
「アカネ! ウサギ! あいつはもう死ぬ、退避だ!」
「はい!」
「もきゅ!」
リュウトさんの言葉通り、頭部を失ったスラッシュゴルドラは、しばらく暴れ回った後、やがて動きを止めた。
「……倒した、ですか?」
「……ああ」
頭を失った巨体は、完全に沈黙している。
「きゅ」
アールラビッツが誇らしげに胸を張った。
「大手柄だな」
「三人で勝ちましたね!」
「ああ。誰一人欠けずにな」
灼熱の最奥。
マグマの滝が轟く中。
三人は、巨大なカマキリを討ち取った。




