次のテンプレート!
「さて、と」
拠点も無事に決まり、地下には巨大な転送魔皮紙を敷いた。
その上に、冒険中に必要になりそうな物や、欲しかった物を買い集めて並べていく。
さらに、奴隷用ではあるが、アカネ個人のギルドカードも発行。
全ての準備が終わり、やる事がなくなった__
「そろそろか?」
そう呟いた瞬間、まるでその言葉を合図にしたかのように、玄関扉の隙間から一通の手紙が滑り込んできた。
床に落ちる直前、封蝋が弾け、宙を舞ったそれは、ふわりとリュウトの手元へ収まる。
「郵便配達のいらない世界ってのも、新鮮だな」
中にはグリード城への招待状が入っていた。
__________
________
____《グリード城》
「ふぁー!? リュウトさん! グリード城ですよ!」
「あ、やっぱり興奮するもんなのか?」
「そりゃもちろん! 人生で行けるか行かないかくらいの場所ですから!」
羽の生えたユニコーンの馬車に揺られ、グリード城の正門へと到着すると、アカネは耳と尻尾をぱたぱたと揺らしながら、目を輝かせて城を見上げていた。
グリード王城――エリュゼの森に囲まれ、静寂の中に佇む孤高の城。
だがその内部は、世界最先端の魔法研究と技術が集まる、“魔法の中枢”とも言える場所だった。
「そう考えると……すごい所なんだろうな」
「はい! もちろんです!」
門が開き、奥から一人の女性が歩いてきた。
たしか――
「タソガレさん、お久しぶりです」
「勇者様、お久しぶりです」
そう。この城のNo.2の騎士、タソガレだ。
俺たちが召喚された日に、最初に説明をしてくれた人物でもある。
「アカネ様も、初めまして。私はグリード城、副団長のタソガレと申します」
「は、はい! よろしくお願いします!」
アカネは緊張で語尾を裏返しながらも、きっちりと礼を取った。
……ふむ。
アカネは違法な奴隷だが、やはり気づかれないよう巧妙に細工されているらしい。
奴隷制度が当たり前に存在する世界だからこそ、余計に見抜きにくい……というわけか。
「それでは、ご案内いたします。こちらへどうぞ」
二人はタソガレに続き、城内へと足を踏み入れる。
豪奢な廊下の装飾に、アカネはまるで夢の中にいるかのように目を輝かせていた。
そして――
「お久しぶりですわ、リュウト様」
大広間。
長く並ぶ料理の先、その奥。玉座のすぐ傍で、サクラ女王は優雅に微笑んでいた。
「お久しぶりです、女王様」
ちなみにアカネには、召喚された当時のこともすでに説明してある。なので、大まかな事情は把握している。
「どうぞ、お座りください」
「はい」
二人で席に着くと、女王はちらりと周囲を見渡しながら問いかけた。
「あら? 報告にあった、もうお一人の方はどちらへ?」
「みやは留守番です。家を買ったばかりで、防犯魔法の設置の立ち会いがありまして」
――もちろん、嘘だ。
元魔王であるみやを、王族の目の前に出すわけにはいかない。
万が一のことがあれば、国交を揺るがす騒動になりかねないからだ。
「なるほど。それはお忙しい時に招待してしまい、申し訳ありません」
「いえ、ちょうど防犯面以外は終わったところでしたので」
「それでは……食事をしながら、本題に入りましょう」
女王はフォークを手に取り、品よくステーキを口へ運ぶ。その様子を確認してから、こちらも軽く食事を始めた。
(まあ、挨拶代わりに少しだけ口をつけて――)
「お、おいしいっ……! おいしいですっ!」
……アカネは、すでに夢中で食べていた。
(…………今度、テーブルマナーを教えておくか)
そんなアカネの姿を見て、サクラ女王はくすりと笑う。
「さて……クリスタルドラゴンの件ですが」
ナイフを置きながら、女王は静かに話し始めた。
「パーティーメンバーに、報酬はすべて譲渡されたそうですね?」
「はい。資金には困っておりませんので」
「そうですか……では改めて――クリスタルドラゴンを“一撃”で討伐された勇者様」
女王の口元が、わずかに吊り上がる。
「今やリュウト様は、グリード王国が誇る《英雄》……いえ、《勇者》として、その名を轟かせております」
「恐縮です」
「ですが……この知名度を、ただの名声で終わらせるつもりはありませんの」
リュウトは、静かに視線を上げた。
「“これから”の話、ですね?」
「ええ。貴方には、グリード王国の“顔”として、肩書きを背負っていただきます」
「クリスタルドラゴン討伐勇者、ですか」
「そうです。その名がある限り、多少の異常事態も“勇者の判断”で納得させられる」
「つまり……免罪符とまではいかなくとも、行動の自由度が増すということですね」
「流石ですわ。まさにそれこそが、今日お招きした理由」
女王は一枚の書簡をテーブルに置いた。その封蝋には、見慣れぬ王国の紋章が刻まれている。
「こちらを、どうぞ」
――そして。
「ミクラル王国からの、正式なご招待状です」
さて、次のテンプレート。
____他の国への出張だ。




