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テンプレ勇者の一目惚れラブロード  作者: しぇいく


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49/50

勇者。家を買う。


 「てわけで、家を買おうと思う」


 「「賛成」」


 2人はすでにリュウトの鼻血事件の後片付けを終え、ソファの上も元通り。

 リュウトが目を覚まして最初に放った一言が、それだった。


 「理由は3つある__1つ、俺たちはこれから多数の戦いや依頼をこなす。つまり拠点が必要だ」


 「まぁ、それはわかります」


 「2つ、今後人が増える可能性がある。個室がないとプライバシーが確保できない」


 「うんうんっ」


 「はい、そうですね」


 「そして、3つ目__お前らの寝相が悪すぎる」


 「「は?」」


 お前が言うな、と言う声が聞こえてきそうな返答だがリュウトは続ける。


 「いや、みや、お前寝てるのに絶対全裸になって俺の所に来て抱き枕みたいに寝るだろ、全裸コアラか!」


 「寝てる間にワンちゃんエッチなぃたずらされなぃかなってっ」


 「お前の裸はアオイさんの肘以下だ」


 「肘!?私の全部肘に負けたっ!?」


 「そしてアカネ、お前も酷い」


 「私……そんなに酷いんですか?」


 「覚醒したからだな」


 「覚醒?」


 「テンプレとして、勇者と同じパーティーになると何かしら特徴が出てくる」


 「なんですか?テンプレって」


 「まぁそこは気にするな、俺の中の呪いみたいなもんだ」


 「???、それとどういう関係が……」


 「寝相をうつたびに何かを破壊してるぞ、それになぜか俺に攻撃が来る」


 「!!!??!?!?、す、すいませ__」



 「そこで!家を買う!」



 「は、はい!」


 「ぅにゅぅっ」


 

 「それで、家を買うにあたってだが、リクエストはあるか?幸いにも、金ならいくらでもあるからな」


 「私は、みなさんがいいなら何でも……」


 「わたしもリュウトとぃっしょならぃぃよ〜っ」


 「なるほど、なら建売がいいな、俺たちにはそこら辺の欲がないし、適当にギルド長に頼んで見繕ってもらうよ」



________



______



____


 石造りの三階建て、正面には広い庭と噴水。


 屋敷の壁にはツタが絡み、重厚な木製の扉がその中央に構えている。


 窓はすべて防魔ガラス製。


 「えと……家、と言うより屋敷ですよね」


 「あぁ、と言うか豪邸だな」


 「まぁまぁのぉぉきさだねっ」


 「流石元魔王様、個別の魔王城持ってた人は言う事が違う」


 「だんだん、2人の発言に驚かなくなってる自分が怖いです」


 リュウトは貰った設計図にざっと視線を這わせた。


 「……土地面積四百坪、室内温度調整魔法標準装備、屋上に展望浴場、地下に訓練場……なるほど」


 リュウトは玄関に向かって歩き出す。


 重厚な扉がゆっくりと開かれると、広々とした玄関ホールが現れた。

 赤絨毯、シャンデリア、吹き抜けの天井。まるで貴族の館だ。


 「えと……ここって、部屋、何個あるんですか?」


 アカネはそわそわと耳をぴこぴこ動かしながら尋ねた。


 「記録では、十部屋だな」


 「じゅ……十部屋!?」


 「まぁ、部屋が余る分には問題ない。将来的に人が増えても対応できる」


 リュウトは視線を正面の階段に向けながら、さらりと続けた。


 「し、将来的……っ!?」


 アカネは両手で自分の頬を押さえながら、肩をすくめるようにうつむいた。


 「アカネ、ほっぺた真っ赤だょ〜っ?」


 みやがくすりと笑ってアカネの背中をぽすぽすと叩く。


 「ちがっ、みやさんやめてくださいぃ!」



 「安心しろ。アオイさんとの子供の話だ」



 「「ですよねー」」


 二人の返事は、どこか乾いていた。


 「……というわけで、部屋を決めてコーディネートするぞ」


 ぱん、とリュウトが手を叩くと、みやが嬉しそうに手をあげた。


 「ぉーっ!」


 そのまま軽やかに、ふわふわと奥へ駆け出していく。


 

 「……どうした、アカネ?」


 リュウトが静かに振り返ると、アカネは視線を下に落とし、指先をそっと胸の前で組んでいた。


 「その……何と言いますか、自分の部屋を持つなんて、人生で初めてで……どうしたらいいのか……」


 「なるほどな。じゃあ、まずは俺が適当に見繕ってやろう。そこから徐々に変えていけばいい」


 「えっ……良いんですか?」


 「“自由にしていい”って言われて迷う人間は少なくない。そういう人は、“ちょっとずつ”自分の輪郭を探していくんだ」


 リュウトは少しだけ微笑んで、アカネの頭に手を添えた。


 「…………はいっ」


 アカネは嬉しそうに尻尾をぶんぶんと振った。


____________



________



____

《時が経ちアカネの部屋》


 「わ、わたくの……部屋、ですか……?」


 案内されたのは、二階の角部屋。

 夕焼けごろになり陽当たりの良い窓からは風がやさしく入り、部屋の隅には丸みを帯びた木製の棚。

 その上には鉢植えの観葉植物が並び、壁にもツタ模様のレリーフが彫り込まれている。


 ベッドカバーは淡いクリーム色、枕元には小さな読書灯。

 机と椅子は自然木の造形が活かされ、シンプルながら温もりを感じる。


 「まぁ、自然を活かした小さな温室みたいな部屋ってとこだな」


 「シンプルだねっ」


 「こう言う方が後々改造できるだろ?」


 そっと棚に手を置きながら、アカネは小さく微笑んだ。


 「落ち着きます……」


 その言葉には、奴隷という立場から少しだけ解き放たれた安堵の色が滲んでいた。


______


____


 「ここが、わたしの部屋〜っ」


 開いた瞬間、空間の色が変わった。


 壁はパステルピンクに塗られ、床にはラベンダー色のカーペット。

 天井からは星形のランプが複数ぶら下がり、まるで絵本の世界のよう。


 ベッドは天蓋付きで、ふわふわのレースが優しく垂れ下がっていた。

 本棚には整然と並ぶ魔導書と……リボンを巻いたぬいぐるみ。


 「お姫さまみたい……ですね……」


 アカネがぽつりと呟くと、みやはくるりと一回転。


 「でしょ〜? でもっ……ふふっ、元はまおーなんだょっ?」


 その言葉に若干の威圧感があるような、ないような。


 そして棚の奥に――


 「それは……等身大の……抱き枕……ですか?」


 「リュウトをモデルにしたょっ♡」


 アカネは返答に困り、静かに一歩下がった。


 だが当の本人は__


 「気持ちは分かるぞ、うんうん」


 この発言の意味は次にわかる……


________



______


「……では、最後に俺の部屋を見せよう」


 リュウトが扉を押し開けると、そこに広がっていたのは──


 『アオイ・ホール』


 思わずそんな名前が浮かぶほど、空間全体が一人の少女で埋め尽くされていた。


 正面の壁には、青と金を基調にした重厚な額縁。その中に鎮座するのは──

 “アオイさん微笑みver.超特大肖像画”。


 「……ぅゎ……っ」


 「な……なん……ですか、ここ……」


 左壁一面には、様々なアオイの表情を描いた肖像群──

 日常服・寝巻き・戦闘姿・振り返りポーズ・笑顔・照れ顔……その数、五十を優に超える。

 右壁にはポエムとともに「笑顔コレクション」がずらり。


 床には、“アオイさんの笑顔カーペット”。

 寝具も全て特注。布団カバー・枕カバー・抱き枕カバーまで、すべてアオイ仕様。


 「この空間にいると……もぅ“アオイさん”って概念が空気になってる……ょ……」


 「えっと、リュウトさん。これ……自分で?」


 「もちろんだ」


 リュウトは胸を張った。


 「設計、絵画、縫製、刺繍まで。全て俺が手がけた。アオイさんへの敬意を他人任せにするなど愚行だろう」


 「愚行っていうか、もはや執念ですよ……」


 「俺のすべてはアオイさんのためにある。それだけだ」


 それだけ、と言い切る表情は真顔。

 その純粋な執念に──みやとアカネは、ただ静かに一歩後ずさった。



________


____


 次の日__


 「うわああああああああああああああああああッ!!!!!!!」


 リュウトの絶叫が、朝焼けの屋敷に響き渡った。


 「ど、どうしたんですかっ!?」


 「なんか……部屋からすごい声聞こえて……っ!」


 二人が駆けつけた先、そこには──


 ――**血まみれになった“アオイ部屋”**があった。


 「……俺の部屋が……アオイさんがぁぁあ俺の……俺の鼻血があああああああああああっ!!」


 リュウトは崩れ落ちた。


 部屋には殺人でも起きたかの様な血が飛び散り、数々のアオイの顔には鮮やかな血の染みが刻まれていた。


 「「あぁ……」」


 「お前ら!?その反応……知ってたのか?」


 「うんっ♪」


 「知ってましたが……みやさんが秘密って……」


 「みやーーー!!!!」


 「これに懲りたらこんな部屋にしないことだねっ」


 「ぐわぁぁあ!!!俺の部屋がぁぁあ!!!」


 リュウト、HP:0


 その背中は、今までで一番小さく見えた。


______


____ちなみに__


 深夜――


 「すー……ぅにゅ……ガシャ」


 「ぐぅ……ガスッ……っ!」


 寝返り一発でベッド脇のサイドテーブルが倒れ、棚が衝撃に耐えきれず壊れた。


 

 アカネはこの日、朝起きたら部屋がめちゃくちゃになっていたことはみんなには秘密にしていた。

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