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テンプレ勇者の一目惚れラブロード  作者: しぇいく


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クイーンズタウン!

 ――さて、と。


 俺たちは今、ユニコーンの引く豪華な馬車に乗っていた。

 窓の外には広がる青空と緑の草原。

 どこまでも続く異世界の風景を横目に、俺ともう一人の“勇者”は、並んで座っている。


「……」


「……」


 静かだ。やたら静かだ。


 この人、どう見ても俺より年上。たぶん社会人。

 逆に、俺が高校生だってことも察してるだろう。なら――


「そういえば、名前聞いてなかったな。君の名前は?」


 さりげなく自然な切り口で話題を振る。

 本当は説明の時に一度聞いてたけどな。会話のきっかけってやつだ。


「……ヒロユキ」


「俺はリュウト。よろしくな」


 手を差し出すと、少し間を置いてから握り返してくれた。


「それにしても驚いたよな。俺たち、勇者だってよ? 前の世界じゃ、アニメイトに行ってたらトラックが突っ込んできたとこまでしか覚えてないけど……今これ、仮死状態で見てる夢だったりしてな?」


 軽く笑いを交えて、共通点を探ってみる。


「……」


 ヒロユキは無言。

 ああ、これは「話しかけないでくれ」って空気だな。

 だが、ここで終わるわけにはいかない、もう少し話す事にしよう。


「……そうか。まぁ、死ぬ前のことなんて、思い出したくないよな。悪かったな」


 しれっと話を切り替える。


 「これからどうする?俺達は召喚されたけど魔王がいないからやる事がないらしいし」


 「……」


 「やっぱりあの城で習ったみたいに《冒険者》になるのか?」


 城での説明はあからさまに冒険者になる方向に誘導されていた。


「……」


 そしてヒロユキが、ぽつりと口を開いた。


「……“最初は”冒険者になる」


(なるほど、“最初は”ね……)


 良い判断だと思う。

 冒険者である程度生活をして慣れてきたら切り替える……効率的だ。


 ま、だが、俺は王道主人公。

 その意図がわかっても言葉は選ぶ!



 「ん? 最初は? ま、まぁいいか! 俺も冒険者になるぞー! おー!」


 バカっぽく振る舞いながら、会話を自然に切る。


 さて、ひと段落……したな……テンプレ自己紹介。



 __だが。


 一つ。


 テンプレ自己紹介にない事をどうしても聞きたいことがあった……


 聞くつもりだったのに、俺が……ためらった……


(……ハハ、ほんと。初めての感情ってやつは、色々と狂わせてくれるな)


 「あ、はは……もう一つ聞きたいことがある」


 「……?」


 「俺たちとは別の……もう一人の勇者のことだ」


 「……何だ?」


 「その……えーと……」


 (くそ、喉が詰まる……なんでだよ! こんなこと、一度もなかったのに!)


 「……?」


 (顔も……熱い!? おい、俺、緊張してんのか!?)


 「言いにくいんだけど……その……」


 「……ハッキリ言え」


 (ハッキリ言え!? それができたら苦労しねぇわ!)


 言ってやるよ!


「ヒ、ヒロユキは……あの人のこと、好きじゃないよな!?」


 


 


 


 「………………………………は?」


 


 


 「そ、その……一目惚れって言うのかな? こういうの、初めてだから分からないけど……もう、好きなんだ!!」


 喉元を越えた言葉たちは、止まらない。

 これが本能の叫びってやつだ。


(ああ……俺、マジで恋してるんだな……)


 「どうなんだ! もしヒロユキも一目惚れしてたら、俺たちは恋敵になる! だから確認しておきたい!」


 「……落ち着け。俺は……ない」


 「ないって!? つまり、好きじゃないってことだな!?」


 ヒロユキは――こくりと頷いた。


 肯定した!! これは事実!! 証拠は目に焼き付けた!!!


 「よし!! 後から好きになっても知らねーからな!!」


 「……あぁ。大丈夫だ」


 「よっっっしゃあああああ!!」


 


(これが……心からの喜びってやつか……)


 好きだ。


 本気で。


 


 ◇ ◇ ◇


 そして、俺たちは目的地――クインズタウンに到着した。


「すっげぇ……」


「……あぁ」


 目の前に広がるのは、まるで絵本のような美しい街並み。

 石畳の道、ファンタジー調の建物、行き交う人々の賑わい。

 ――すごい。すごいんだけど……


(……やっぱ、あの時の一目惚れのインパクトには敵わないな)


 まずは、ギルドへ行くのがテンプレだ。


「とりあえずギルド行くか? 目的地同じだし、一緒に行こうぜ」


「……あぁ」


 やっぱり断らない。この人、悪い人じゃない。


 


 ◇ ◇ ◇


「お、ここがクインズギルドか。名前そのまんまって感じだなぁ」


「……」


 中に入ると、視線は多少集まったが、特に問題なく受付嬢の前までたどり着いた。


「こんにちはー。俺はリュウトで、こっちはヒロユキ。お城からここに来るように言われてて……」


「ああ、お二人ですね。通知は届いております。そちらの扉にお進みください」


 案内されたのは、《関係者以外立ち入り禁止》の扉。


 中にはソファとデスクがあり、中年の男性が待っていた。


「ようこそ勇者さま。私はこの町のギルドマスターです。これが勇者様専用のギルドカードになります」


 手渡されたのは、免許証サイズの黒いカード。

 艶やかで高級感があり、触るとほんのり温かい。


「ギルドカードの説明はお城で受けてますか?」


「はい。でも、通貨の表示が俺にもヒロユキにも書かれてないみたいで……?」


「おお、よくぞ聞いてくれました! 普通は金額が明記されてますが、お二人のカードの表記は《∞》!」


 ……え? マジか。


「つまり何でも買えます! ただし、家を大量に買ったり、自分の店を建てたりなど、極端な使い方は制限されていますので、ご了承ください」


(こ、これ……すげぇ……!)


「うへえぇ!?」


 大げさに手を震わせておいた。

 こういう時は勇者っぽい反応が大事だろう。


「それと、勇者であることは絶対に秘密にしてください。我々ギルドとしても、国同士の争いなどは望んでおりません」


 なるほど、勇者=国家機密ってわけか。

 他国に知られたら戦争になる可能性もあるってことか。


「はい! 気をつけます!」


「では、素敵な冒険者ライフを」


「ありがとうございました!」


「……」


 


 ◇ ◇ ◇


 ギルドを出て、人混みに紛れる。


 イベント的なトラブルは、今のところ起きなかったようだ。

 ラッキーか、それとも“後で来る”やつか。


「とりあえず俺は、街を回って武器屋とか見てこようと思ってる。ヒロユキは?」


「……俺は宿を探す」


 予想通りの返答。

 必要がなければ、一人になるタイプだ。


「そ、そっか……じゃあ、ここで一旦お別れか」


「……あぁ」


「お互いに、この世界を楽しもうな! じゃあな!」

 


 さて、資金はある。

 目標もある。


 まずは、武器だな__


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