招待
推薦されてからグリード城に向かうまでは、あっけないほどに短かった。
別に持っていくものもなかったし、みやも置いてきた。
当然のようにごねられたが、彼女が元魔王である以上、危険は避けておきたい。
門の前に着くと勝手に開かれる。
「……」
入れということだろう。
そのままグリード城の門を越えると、そこには空気の質すら違う世界が広がっている。
気高さと重圧、そして無言の監視。
すべてが“選ばれた者だけの場所”だった。
「お待ちしておりました」
「お久しぶりです、タソガレさん」
城の中に入ると女騎士のタソガレさんが迎えてくれた。
「女王様がお待ちです」
──そして、玉座の間。
「お久しぶりですね、リュウト様」
「……ええ。久しぶりです、サクラ女王」
軽く膝をつくと、女王は微かに微笑んだ。
「あなたが“騎士になりたい”と志願したと聞いて、正直驚きました」
「……必要だと思ったからです」
「必要?」
「手段として、です。僕が、知りたいことを知るために」
女王の表情が、ほんのわずかに変わった。
「……やはり。そう思っていました。あなたが“正義の騎士”になるために来たとは、思っていません」
「……」
「探しているのでしょう? “アオイ様”の行方を」
流石、女王と言われるだけあるな。
こちらの考えはお見通しか……
「この様な手段を取り、申し訳ありません」
「貴方も、外に出て知ったはずです、ここがどの様な場所でどの様に周りから思われているかを」
サクラ女王はゆっくりと立ち上がり、階段を一段ずつ降りてきた。
「グリード城の……しかも勇者というトップシークレットの情報を何もなく教えられるとは思ってませんよね?」
「……はい」
「あなたには予定通り、騎士になるための“試練”を受けてもらいます」
「試練、ですか?」
「試練の中身を事前に明かすことはできません、一つ言うなら……死ぬ可能性はあります」
死。
今までは何とも思わなかった事だが、今は重くのしかかる。
俺が死ねばアオイさんに会えない。
もしも天国か地獄か、また新しい世界に行ってもアオイさんの事を思いながら生き殺しの状態で生きていくことになるだろう。
だが、やらなければ……近づけない!アオイさんに!
「……受けます。その試練」
女王の口元が、わずかにほころぶ。
「その言葉を、待っていました。準備が整い次第、案内をつけましょう」




