『気配』『呪い』
「さて、と」
静かな街の一角、待ち合わせ場所に立っていた。
一緒に住んでるが、色々と用意があると言ってたのでお互いに家を朝出て別々に行動していた。
「そろそろ時間だな」
いつものように明るい声が耳に届いた。
「リュウトっ♪」
笑顔で駆け寄ってくるみや。
「どうっ?可愛いっ?」
みやはくるりと軽く回ってポーズを取る。
「色はわからないが、フリルワンピースに頭にハートのヘアピン、幼い見た目にあっていて総合的に可愛いよ」
「なにっ……その分析みたぃな感想っ……」
「と言ってもなぁ……」
「むぅっ、デート!練習っ!」
「そ、そうだな」
ぐぬぬぬ……だが、これをどうしてもアオイさんに見たてて話せというのが難しい。
アオイさんより無い胸
アオイさんより可愛く無い顔
アオイさんより無い色気
アオイさんより背丈
うーーーむ。
「ぃまっ、絶対に失礼な事考ぇてたでしょっ」
「そ、そんな事ない」
なんとかフォローするものの、みやは満足しなかったようだ。
「…………さんかくっ!40点っ!」
「くそっ!」
これは、思ったより大変かもしれないな……
「……!」
みやが突然、振り向き遠くを見る。
「?、みや?」
「……いや、なんでもないよっ」
その表情にどこかしら不安を感じたが、みやがそれ以上言うつもりは無いみたいなので、無理に聞くのはやめることにした。
「そうか、分かった」
みやが視線を戻し、いつもの調子で明るく促す。
「いこっかっ」
「おう」
二人は待ち合わせ場所を後にし、街へと歩き出した。
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夜、すべてが終わり風呂場にて。
「はぁ……疲れたぁ」
湯船につかりながら、今日一日の出来事を思い返していた。
肉体的疲労というよりも、精神的に消耗している感覚が強い。
何年ぶりだろう、この感覚は。両親を亡くした幼い頃以来だろうか。
「何より、みやをアオイさんと自己暗示をかけるのが1番疲れた」
練習と分かっていても、やはり本人でないと気分が乗らない。
「……あれ?」
ふと気づく。いつもなら、みやが遠慮もなく裸で風呂場に入ってくるのに、今日はその気配がない。思えば、一日中みやの様子が少しおかしかった気がする。
「リュウトっ」
ドアの外から声がかかる。
「どうした?」
「ちょっときいてほしいことがあるのっ」
「なんだ?」
「うんっ……実は朝から気配を感じるの、小さいけど……」
小さな気配?
朝から何かひっかかってたのはそれか?
「何の?」
その答えを聞いた瞬間、俺は裸のままお風呂を飛び出してしまう。
「…………『女神』様の」
「なんだと!?」
「リュウトっ、服」
みやが困ったように声をかける。
だが、服なんてどうでもいい!
「なぜ早く言わないんだ!」
女神!それは紛れもなくアオイさんの気配だ!
「だ、だってまだ小さいし私の知ってる女神様の気配とはちがってたからっ」
みやは少し怯えたように説明する。
「……魔王時代の女神ではなく新しい女神の気配、か」
昔の女神の事は分からないが、今まで無かった女神の気配が今日現れたという事は間違いなくアオイさんだ。
俺達がストーリーを進めている間にもあちらでも何か起きてるということ!
一刻も早く会わないと!
「っ__」
会う?どうして?会わなくて、も__
何だ!頭が混乱してきた!
「リュウトっ?」
「みや、今すぐ俺を魔眼を使って見ろ!」
みやは一瞬驚くが、すぐに頷いて魔眼を発動する。
蛇の紋章が浮かぶ目でじっくりと見つめると、異常があることに気づく。
「ぅ、うんっ__っ!りゅうとっ、呪われてるっ!」
「やっぱりか……!」
『呪い』――それは、魔法の一種だが、通常の魔法とは異なり、解明されていない部分が多い。
そして、それらにはある共通点が存在する。
「……くそ!無意識領域!」
呪いの正体、それは人間の無意識に作用し、行動や感情を縛るものだ。
俺は知らず知らずのうちに、アオイさんに会うことを避けるようになっていた!
「今すぐ呪いを解く方法を探すぞ!まずはそれからしないと話にならない!」
急いで服を着ようとするが、みやが腕をつかんで止めた。
「まってっ」
「離せ!今そう思っているうちに行動しないと、また俺は考えられなくなる!」
「呪いをとける人にぁてがぁるのっ?」
「ぐ……」
みやの冷静な指摘に、言葉を失う。
確かに、具体的な方法が分からない以上、焦りは空回りするだけだ。
そして、それに気づけないのが呪いの厄介なところでもあった。
「ふふんっ♪でも大丈夫っ、ゎたしがぃるからっ」
みやが小さく胸を張り、自信ありげに笑う。
「え?」
「少し時間かかるけどっ、できるょ、解呪っ」
思わずみやを抱きしめた。
「ふぇっ!?」
「よくやった!ありがとう!」
突然の行動にみやは驚き、顔を真っ赤にする。
「ぃ、ぃぃのっ、りゅうとのためだからっ」
「そうと決まればさっそくやってくれ!」
「ぅんっ、じゃぁそのまま全裸でベッドでよこになって?ふつぅの意味で」
「おう!」
持っていた服を投げ捨てベッドに横になる。
「これでいいか?」
「ぅん、じゃぁぃくよっ」
「……」
集中した表情を見せるみや。やがて、彼女は何かを見つけたようだ。
「りゅうと、ねむくなるけどっ、ぁんしんしてね」
彼女の声が徐々に遠くなっていく。
「あぁ、任せ……た」
猛烈な睡魔が襲ってきた後、俺は意識を手放した。




