勇者!パーティー参加!
「さて、と」
昨夜はアオイさんのことを考えすぎて、結局あまり眠れなかった。
夢にまで出てきた金髪の後ろ姿が、朝になってもまぶたに焼き付いて離れない。
「まぁ、3日くらいなら寝なくても大丈夫だし、夢でもアオイさん見るしな」
そう言いながらギルドの扉を開けると朝から人がわちゃわちゃとしている。
「……」
中に入ると、視線が集まった。
此方が見ると逸らされるけど、また視線を外すと見られている。
うむ。
グロッグドラゴンはプラチナランクだからパンチが弱いか心配だったが、この感じじゃ成功したみたいだ。
“冒険初日でグロッグドラゴンを討伐した新人”
どう効いてくるか……
「と、言うわけで」
俺はギルドの片隅にあるカウンター席へ。
特に注文もせず、ただ座っているだけ。
ファミレスのように水も出てこない。
何かを頼むには声をかける必要があるが――それが目的じゃない。
(さて、ここで“誘われ待ち”してれば……テンプレなら声をかけられるはず)
問題は、どれくらい時間がかかるかだ。
異世界作品の主人公は基本的に“パーティーに誘われる側”だ。
自分から頭を下げて入れてもらうなんて話、あんまり聞かない。
「……」
俺はあくまで、声をかけられるまで“待つ”。
それがテンプレだ。そう信じて――
「ちょっと、アンタ」
――来た!
「はい!」
勢いよく返事をしたせいで、相手は少し驚いた顔をする。
あ、やばい。ちょっとはしゃぎすぎたな……。
「……ごほん。なんでしょうか?」
声をかけてきたのは、長身で引き締まった体を持つ女性冒険者。
筋肉質な体躯と真っ直ぐな眼差し。
可愛らしいというより、実戦経験豊富な“戦士”という言葉が似合うタイプだ。
……ヒロイン枠、って感じじゃないな。
「アンタ、噂の新人だろ?グロッグドラゴンを一日で倒したっていう」
「噂の新人か分かりませんが、そういう話が回ってるなら……多分、俺ですね」
「噂だけじゃない。ここでの洗礼――新人いびりも、軽くいなしたって聞いてる」
あぁ、あの出来事もフラグとして出てくるのか。
やっぱりテンプレはしておくべきだったな。
「そこで、提案だ。私たちは今から“ジャログドラゴン”の討伐依頼に向かう予定なんだけど、アンタ、ついてこないか?」
来た。
これが、“噂を聞いたパーティーに勧誘される”というテンプレパターン。
ここで断ってソロを貫く主人公も多いが。
大体そういう事をする奴らはダークファンタジーの傾向がある。
王道に行きたい俺としてはダークファンタジーは避けたい所。
つまり__
「僕でよければ、ぜひ」
ここは誘いを受ける!
「決まりだね。今日は準備だけにして、出発は明日――」
「――今からでも構わないですよ」
「は?」
女性冒険者が眉をひそめる。
「アンタ、バカか?装備もしてないし、荷物も持ってないように見えるけど」
「1日あれば充分です」
「……マジで言ってんの?」
「ええ。俺、そういう人間なんで」
女性冒険者は頭を掻きながら考え、提案する。
「分かった……でもこっちも今から1人増えた分、用意するものが出てくるから30分後に集合で頼むよ」
「了解です」
こうして俺は――
異世界テンプレート通りに、“最初のパーティー”へと参加することになった。




