涙とタルト。
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翌朝。
陽奈はいつも通りに起きて、階段を下ろした。
お兄ちゃんの部屋のソファに座って、クッションを抱く。
お兄ちゃんの方をみると、すやすやと眠っていた。
「朝、弱いのかな」
クッションを持ったまま近付くと、腕が伸びてきた。
「うわぁ」
そのままベッドに引きずり込まれる。
「おに、お兄ちゃん」
「心配させやがって」
「起きてたの?」
「さっき起きた」
抱きしめられて、頭を撫でられた。
「ごめ、なさっ」
昨日は何も言わずに部屋に行って。
「ごめ、なさっ。・・・・・・ごめ」
「大丈夫。皆大丈夫だから。心配はしてたけど」
私は涙を流す。
私が泣き止むまで、お兄ちゃんは頭を撫で続けてくれた。
「・・・・・・守る」
「へ?」
きっと、今は間抜けな顔をしているだろう。
「だから、俺が、佐藤が、母さん達が守るから。安心しろ。学校にきちんと説明するために話を聞いただけだから」
守る。その言葉は、弱った心に効果的面だった。
「本当?」
「ああ」
「絶対絶対?」
「そうだ」
それが原因で、お兄ちゃんにどっぷりと浸かる事になった。つまりちょっとした依存である。
そのまた翌日。
「お兄ちゃん、お兄ちゃん!」
「何だ? お?」
「じゃーん」
陽奈が見せるのはタルト。
「葡萄を2種類使ったの。マスカットと巨峰」
生クリームで周りを囲い、洗って水気をきちんと切った葡萄をそのままてんこ盛りにしている。
「あのね、あのね。これね、私がバイトしてる喫茶店で出そうと思ってるものなんだけど」
「え! 良いのか? 大事な味見」
「後でちーちゃんにも食べてもらうから、大丈夫」
先日作ったショートケーキをタルトにしてみたもの。
大分良い筈なんだけど。
ケーキを一口。
「!! うまっ。陽奈凄いぞー。そして可愛いぞー」
「えへへ、ありがとう」
私は照れる。頭を撫でられて、その上褒められたから。
それを、親は微笑ましそうに見ている。
本当に何も知らない私は、とても幸せだと、思える日がやってきたと、思った。
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