陽奈の葛藤。
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お兄ちゃんが出かけたその日、バイトが終わって帰ってきたら、お母さんとお兄ちゃんが話していた。
(何、話してるんだろう)
純粋な気持ちだった。
少し開けて覗いてみると、会話が聞こえる。
「佐藤知衣花に聞いてきた。昔の事」
「そうなの? あの人の事も聞いた?」
「あいつが母さんに聞いたらって」
「あら〜、トラウマなのね、知衣花ちゃんも」
「トラウマ?」
「あの人の事はどのように?」
「要約するとひどい奴と」
・・・・・・ぃ、いやだ。
こんな話だけで、体が不調を訴える。
過呼吸になった体に鞭を打ち、自分の部屋に行く。
入口を閉め、階段を少し伸ばすと開かなくなる。
「・・・・・・ちーちゃん」
話しちゃったんだ。
言いたくないし、知られたくもない、私とお母さんとちーちゃんの秘密。
この様子だと、お父さんにも知られてしまうだろう。
コップに水を注いで、カバンから薬を出した。
机の上に置いておくだけ置いて、ベッドに転がる。
何もしたくないな。今。
食べたくないし、飲みたくもない。
元父のせいで人が苦手になったと言っても過言ではない。
「しんど」
心が、体が、私の全てがしんどい。
もちろん、ちーちゃんもお母さんも大好きだし、なんだかんだでお兄ちゃん達も好き。
だけど、聞きたくなんてなかった。
転校の理由だって元父だし、お母さんの離婚の理由だって、私と元父だし。
多分、私の生活が狂い始めたのは、元父が原因かもしれない。
「何しよう」
体を起こす。
「新作のイラストでも描こうかな」
カバンからノートを出した。
「期間限定で出される事になったから、材料の見直しかな? いや、でもマスカットが高いからこれ以下は無理かも」
所詮、私はカフェの、店員。
何故かポロポロと、涙が出てくる。
「もうだめだ、今日の私」
夕方だし、薬を飲んでベッドに転がった。
程なくして、眠気が私を襲う。
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