喫茶オリオンにて
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「いらっしゃいませ、喫茶オリオンへ」
時間は9時半になったかな?ぐらい。
店先の掃除をして、テーブルを拭いたら大体この時間。
ちなみに、陽奈専用のブースができたのは記憶に新しい。
「休憩の間にケーキ作ってても良い?」
「新作?」
「うん。何かね、インスピレーションが湧いてきたの」
ケーキは陽奈が作っている。主にね。
「楽しみにしているわ」
「陽奈ちゃん、新しいケーキかい?」
「そうです。鎌田さん」
この人は常連の鎌田さん。ちょっと小柄な女性。好きなものはケーキ。
「いつも楽しみにしているよ」
「ありがとうございます」
席へ案内して、水を持って行く。
ベルが鳴ったのでその席へ向かい、注文をとる。
「ご注文はお決まりですか?」
「モーニング2つ」
「ドリンクはどうされますか?」
「あー二つともコーヒーで。ここのコーヒー美味いし」
「マスターが喜びますね。繰り返します。モーニング、コーヒーで二つ。でよろしいでしょうか?」
「はい」
「少々お待ち下さい」
マスターに伝票を渡して、ちーちゃんのところへ行く。
「ちーちゃん今日もたくさん来るのかな」
「そうなると思うわ、朝からこれだもの」
見ると私のブース以外全部埋まっている。
「あと1時間で休憩取るね」
そして厨房に篭ろう。
「了解」
一時間後ーーー。
私のブースでカバンからノートを出し、どのケーキを作るか考える。
「うーん。マスカットのケーキ?この時期なら」
作るのが大変なんだよなー。
「いっそ一日何個とかにする?」
「どうしたの」
「や、このケーキ、小さいから作るのが大変なの」
「一日何個でいいと思う。だって季節限定でしょ?」
「まぁ。作ってくる」
「行ってらっしゃい」
厨房に籠り、スポンジ生地を焼く。
そのスポンジ生地を1センチぐらいの厚さに切って、コップで丸くくり抜く。
ホイップクリームは砂糖も入れて甘くする。
マスカットは輪切りとそのままを残す。
スポンジの上にシロップを塗って、クリーム、マスカット、クリーム、スポンジをもう一回。
側面とてっぺんにクリームを塗って、てっぺんはなだらかな山みたいに。
上にそのままのマスカットを乗せて。
「よし、出来た」
「美味しそうだね」
「マスター!?」
あ、ずっといたんだった。忘れてたわ。
「どうぞ」
紅茶とケーキを差し出して、私とちーちゃんの分も用意。
「これはちーちゃんの分なので、食べないでくださいよ」
念を押して私のブースへ。
「普通ね」
「冷蔵庫にあるよ。紅茶は台の上」
「後で頂くわ」
フォークで綺麗に食べて咀嚼。嚥下して後味を楽しむ。
「マスカットの爽やかさが足りない気がする。クリームが甘すぎるのか」
後で生クリームにマスカルポーネを少し加えるとスッキリと食べることができた。正解だったみたい。
試作したら必ずお客様に食べてもらって感想を頂く。
今回も、美味しかったしフルーツの風味がして美味しかったと言われ、うきうきしていた。
※※※
陽奈が厨房に入ってからも接客をしている私、佐藤知衣花は、行列ができているのを見て外へ出た。
この2人誰?
「愛子さん、お久しぶりですね」
「知衣花ちゃん久しぶりね」
1人は知っている。
はーちゃんのお母様、歌月愛子さんである。
「あの、後ろに列ができていますので、案内致しますね」
と言って空いている席へ案内。水を出して他のお客様の接客。
ベルが鳴ったので愛子さんのところは向かうと笑顔のイケメンと無表情のイケメンとニコニコしている美女がいた。
「ご注文はお決まりですか?」
「ええ。まずホットケーキと紅茶、サンドイッチとコーヒー、バナナチョコパフェと紅茶でお願い」
「繰り返します。ホットケーキと紅茶、サンドイッチとコーヒー、バナナチョコパフェと紅茶でよろしいでしょうか?」
「ええ。それから休憩までどれくらい?」
「あと30分ほどでしょうか」
「なら、その時に来てちょうだい」
「わかりました」
昔、はーちゃんのお父様もそんなことを言っていたな。
伝票を持って行くと、はーちゃんのブースに座ってケーキを食べているはーちゃんがいた。
「普通ね」
「冷蔵庫にあるよ。紅茶は台の上」
「後で頂くわ」
そう言って業務に励んだ。
30分後ーーー。
ケーキを持って愛子さんのもとへ向かう。
「お待たせ致しました」
「いいえ、大丈夫よ」
愛子さんの隣へ座り、持ってきた四角いお盆を置く。
そこにはクッキーと紅茶と陽奈のケーキと紅茶。
紅茶ははーちゃんが淹れている。
私やマスターよりも紅茶を熟知しているからだ。
料理とコーヒーの担当はマスターで、お菓子、デザート系や接客ははーちゃん。残る私はパンを作ったり、試食やアドバイスと接客。
こういうのは自然と決まった。
パンを作るのは大好きだし、美味しいって言ってもらえてとっても嬉しい。
「知衣花ちゃん、私ね、再婚したの」
「はーちゃんは、はーちゃんは何か言っていましたか」
あの子は、離婚する前のお父様が原因で、男の人が苦手だから。
心配だった。
「ー何も無かったわ。ただ、転校したい。その一言だけ」
「・・・・・・っ。そうですか」
やっぱり耐えきれなかったんだわ。あの生活に。
「でもね、この子にとっても懐いているの」
「え」
びっくりした。そんなこと、全然無かったし。
「紹介するわね。ニコニコした方が再婚相手の葉月海斗さん。んで、無表情の子が」
「僕の子供の奏音だよ」
「ふふっ、ずっとむくれているでしょう?」
「そう見えます」
「理由があってね、まさかバイトしてるなんて思ってなかったらしいのよ。ほら、この通り甘党だから、羨ましいのよ」
「確かに」
私には理解が出来難いが紅茶に角砂糖をたくさん入れている。
そしてクッキーも食べている。
「美味いな」
「はーちゃんは、料理も得意なんです。一度ご馳走になりましたが、お店を開けるようなレベルでした」
今も進化しているでしょう。だって、頂いたのは6年も前なんです、と付け加える。
「10年前といえば、その頃に離婚されたと記憶しております」
いきなり口を開くからびっくりした。
「そうです」
ケーキを口に運ぶ。
「あの子の秘密、知っているのでは?」
紅茶を口に含もうとしたところで言われたので、カップをソーサーに戻した。
「ええ、知っております。ですが、」
教えることはできません。
「2人の秘密、ですから」
「そんなに酷いことを、されていたのですか?」
「そうでしょうね。だからあの子は話したがらない」
そういうことだと。淡々と告げる。
「あぁ、そうでしたね。ご挨拶ができておりませんでしたね」
椅子の上で姿勢を正す。
「初めまして、私は佐藤知衣花と申します」
きちんとおじぎをする。
大人は見守っているだけ。そんな視線を送った。
「改めまして、葉月海斗です。よろしくね、知衣花ちゃん」
おじさ・・・・・・っ、げふんっ。海斗さんがぺこりと頭を下げる。
「初めまして、葉月奏音です。よろしくお願いします」
あら、礼儀のなっていないお坊ちゃんだと思いましたのに。案外やるじゃない。
「で、貴方はどうしたいのですか」
私は問う。
「俺は、陽奈が安心できる環境を作る」
彼は宣言した。
「同じ学校のよしみですもの、協力するわ」
2人は同じ高校に通っている。名前は田戸高校。
私はD組で、彼はC組なので、あまり接点が無かったから。
「いつ頃、転校させる予定なのでしょう」
「夏休み後」
「随分と早いですね」
「と言うか、この話は学校でいいか?ここだと目立つ」
「学校でも目立っていますけど」
「何か言ったか」
「いいえ、なにも」
5分後、シフトが休みの時に学校の防音室にて、と言うことに決まった。
「休憩が終わりますので、それでは」
そう言って、私は離れた。
ちーちゃんを書いていて、元々考えていた性格と違う!とおもったのですが、面白くなりそうで。
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