知的好奇心が高い少女は自分がサイコパスだと分かってとても満足しているそうですよ
20☓☓年☓月☓日東京都にある〇〇高校にて全校生徒、駆け付けた警官全員が一人の少女によって殺害された。
今だ、少女の行方は分かっておらず捜索が続けられている。
〜事件当日〜
体育館には10人の警官と1人の少女がいた。
少女の白銀の長髪には返り血がついており、今もなお床に血が垂れ続けている。
そして手にはこの世のものとも思えないほどに禍々しい鎌が握られている。
「なぜこんな惨いことをした……」
10人いる警官の中で1番階級が高い者が前に出てきて少女に話かけた。
警官はあろうことか少女から目を逸らしている。
何故か。その理由は実に簡単である。
少女の後ろには300を超える全校生徒の死体が積み上がっていた。死体一つ一つどれを取っても元の原型は残されていない。
「なぜ?」
少女は鎌を抱きかかえながら不思議そうに頭を傾げた。
「私はイジメられてたの、だから復讐しただけだよ」
その顔には後悔だとか反省といった色は見えない。
「だからといってここまですることはないはずだ!サイコパスが……」
警官は逸していた目を少女に向ける。両手で拳銃を握っておりいつでも発砲できるようにしている。
本来警官である彼はなるべく犯人を刺激させるような言葉・行動をしてはならない。しかしこの警官のSAN値(正気度)はすでに一定のラインを下回っている。それはこの体育館にいる警官全員にも同じことが言えるだろう。
少女は警官が言ったサイコパスという単語に過剰に反応を見せた。しかし、それは怒りではなく喜びであった。
「そう私はサイコパスらしい。後ろにいる皆も死の間際に私の事をサイコパスと呼んでくれた」
「ハハ…、なんだサイコパスと呼ばれて嬉しかったのか?」
少女は警官が失笑しながら言った発言に少し頭を悩ましてから答えた。
「厳密に言うと少し違う、結果が出たという事実が嬉しかっただけ」
少女は知的好奇心に支配されている。
「本当は黙っていた方が良いんだろうけど聞かせてあげる。何で私がこんなことをしたのかを――」
少女は上機嫌になりながら語り始めた。
少女は中学校に入ってから自分の事をサイコパスではないかと思い始めた。そして同時にそんな自分がカッコいいとも思っていた。
そんな中、少女はある記事を偶々見つけた。記事の内容を要約すると「サイコパスな自分がかっこいいと思っている奴はただのイキリ野郎」との事だった。
このような記事はよくネットに転がっている。普通の人なら無視するレベルの記事だ。しかし、少女は生まれつき人より何倍も知的好奇心が高かったこともあり、例えどんな意見でも完全に無視することができなかった。
少女はその記事を見てから自分がサイコパスなのかただのイキってる奴なのかをずっと考えていたが結局結果は出なかった。
その記事を見つけてからしばらく経った後、少女に大好きなアニメキャラができた。少女から見てサイコパスだと思えるようなキャラだった。次第に少女はそのキャラを尊敬していくようになった。かっこいいセリフを言いながら、敵を瞬殺していく姿は見ていて惚れ惚れさせる物があった。
しかし、そんなキャラもある記事ではただのイキリ野郎ということになっていた。
この記事を見た少女の頭の中は、尊敬の念から生まれる「そんなはずがない!」という考えよりも、もしかしたらこの事について深く考えれば、自分が知らない新たな知識を間接的にでも得られるかもしれないというものであった。少女は途中から考えれば考えるほど沼に嵌っていく気がしたが、そんなことよりも知りたいという欲が勝った。
だが、どれだけ考えてもやはりサイコパスかもしれないしただのイキりかもしれないという何とも中途半端過ぎるものであった。本来ならここまで考えて分からない物に対しては諦めがつくというものだが、知的好奇心が高い少女はすでに歯止めが効かない所まで来ていた。そして少女はある作戦を思いついた。
「私が尊敬したキャラと同じことをこの世界でやればいいんだわ!そしたらサイコパスかただのイキリかの結論が出るはず!」
少女が尊敬したキャラはいじめられていた。しかし、ある日をきっかけに復讐をしようと決意し血のにじむような努力をし、いじめてきた奴らを皆殺しにした。
尊敬したキャラの心情までは、同じに出来なかったがそれ以外の部分で少女はそのキャラと同じ道を辿った。高校ではいじめに会うようにわざと振る舞った。そして同じように復讐という名目で皆殺しにした。もちろん殺し方は作中と同じように。
「私は悩んでいたの。自分の中にある知りたいという欲を満たしたいと。そして結果が出た、だから嬉しいってだけの話」
少女はサイコパスというもの自体に固執していない。仮に殺された生徒が少女の事をただのイキっているだけの奴と言っていたら、それはそれで少女は納得するだろう。
あくまでも少女の目的は疑問を解決して得られる真実または新たな考え方だ。だから少女は今まで見せてきた笑顔よりも更に笑顔になりながら言葉を続ける。
「今回のことで間接的に思いついた新たな考えを聞いてほしいの!結局イキリイキリ言う奴は自分が100%安全と思っているから言ってくるってことに。いざ殺されそうになると手の平返すのにね。あとねもう1つ気づいたことがあるんだ。もしこの世界がアニメみたいに作られた世界だったら私の事もイキってるって言ってくる奴がいるんだろうなってことに。本当そういう馬鹿は嫌になるよね。実際こんなにも多くの犠牲の元出た結果なのに、何もされていない部外者の分際で蔑ろにするわけだからね。私よりよっぽどやってる事酷いと思うんだ」
少女の知的好奇心が異常に高いのには理由がある。
こうやって新たな考え方や自分の事をベラベラと話すのを見ているとよく分かる。
自分の考えを披露することによって人に褒めて貰おうとしているのだ。
つまるところ承認欲求が高いということ。
そして少女は一通り話して満足したのか手に持っている鎌を無造作に振るった。