四、ピアノ
姉の後を追ってピアノを習いピアニストになったけれど、なかなか実績を残すことができない主人公。ある日仕事先から契約打ち切りを宣告される。その後、悲しみに暮れて演奏した公演が好評を博し、知名度を一気に上げることになるが……。
当初のストーリーからかなり加筆した短編ですね。
大筋は変わってないけど文量が倍以上、下手したら三倍くらいになってます。
それでもまだ書き足りない感じ……。
旧版では自分の演奏が受け入れられなかったことを嘆いた主人公が指を切り落として終わりますが、こちらでは凱旋公演を見に来てくれた恩師が刃物を持ち出して……というシーンで終わります。
姉に比べて才能が劣る主人公に対して唯一真摯に向き合って、どの生徒よりも大切に指導してくれた優しい先生。
恩師をそう認識していた主人公ですが、実は恩師は主人公をピアニストとして大成できなかった自分の代わりとして自分の思う通りに演奏させようとしていたのです。
恩師が目指していた毎回一定であり基本に忠実な演奏。
それは大切なことなのかもしれませんが、それだけでは個性がない。
録音した音楽を流しているのと変わりないと思われても仕方がないのかもしれません。
こうして見ると恩師は旧版の主人公なのかも。
これって小説にも言えることですよね。
文章の基礎ができていないと読みづらいことこの上ないけれど、120%テンプレだけの物語では味気ないような。かといって100%オリジナルのものが受け入れられることも稀で……。
基礎を押さえつつ、程よく個性を出していくことが必要なのだろうと思いますが、難しいですね。