二、どうも
こちらも初期のお話です。
一見無害な「挨拶してくるだけのサラリーマンのおじさん」ですが、これが現実になると一気に「不審者事案」になるから世知辛い。
怪異ならどうなんだろう?
やっぱり怪しいことは怪しいですよね。
「怪」異だし。
このサラリーマン風の幽霊の場合、自分が死んだことに気が付いていないのかもしれません。
気付かないから毎日主人公の住む部屋の外を通りかかって挨拶して……という暮らしを続けているのかな、と。
彼は通りかかった家すべてで「どうも」と声を掛けているのか。
あるいは主人公にだけ「どうも」と声を掛けるのか。
とにかく、害はないんだけれど、どうにも気味が悪い。
私はそういう雰囲気の話が好きなんですよね。
元のお話を読んだことがある方はお気付きだと思いますが、このお話はオチが大きく変更されています。
というのも、電子書籍化の際に編集担当さんとお話しする中で「文字数の縛りを取り払って全体の『怖さ』を底上げして行こう」という方針が決まっていたのです。
お互いにどうすればより怖くなるかアイディアを出し合う中で出たのが「生まれたばかりの子供を認識し、声を掛けてくる」でした。
かくして、無害でむしろ印象の良かったサラリーマン風の男は凶悪な怪異となったのでした。