#94 BBQ
富士山見えるかな~と思ったけど、雲で見えなかった。
きれいに見えるとテンション上がるんだけどなー
ログハウスに近付くにつれ、いい匂いがしてきた。
「あ……テーブルが出てる……」
庭にはテーブルとイスが用意されており、さらにBBQでよく見るコンロが設置されていた。
「どうやら外で食べるみたいだな」
確かに星空の下で皆でBBQって、最高かもしれない。
「成る程……セリウスにしてはいいアイデアだ」
またしてもライオネルがそんな事を呟いた。
──“セリウスにしては”って……よほどセリウスの料理が口に合わなかったらしい。
ログハウスのドアが開き、食材を盆に乗せたユリアが出てきた。
「あ、お帰りなさい!」
満面の笑みで迎えてくれた。
「「「ただいま」」」
──ふぉ!エプロン姿で「お帰りなさい」とか、新婚さんかよ?カーワイイ!
「外で食べるんだな」
そう言いながらゲイルがさっとユリアの元に行き、スムーズに盆を奪った。
「──!」
ああ、そうだ、カワイイとか堪能してる場合じゃなかったよ!
紳士だったら女の子が荷物持ってたら代わりに持つよな~出遅れたぜ……。
「エリック、ブルーベリーを盛り付けないか?冷蔵庫にある物も活用しよう」
ライオネルがカゴをあげ、ニコリと笑いそう言った。
「──うん、何かあるといいな」
「ああ。たぶんあるだろう」
早速ログハウスに入ろうとすると、今度はルルカとドアの所で鉢合わせた。
「あら、お帰りなさい。良いのが見つかった?」
「……面白いものが見つかったんだが、とり損ねてね。これはブルーベリーだ」
「そうなのね。ブルーベリーは何にでも合うわ。私は好きよ」
「それは良かった。ところで、外で食べることにしたんだな」
「ええ……ちょっと……セリウスが……独創的な創作料理をしだして……私とユリアで外で食べたいからBBQで!とお願いしたの」
ルルカが頬に手を当て、俯いてしまった。
「やはり……その……セリウスが作ったものもあるのか?」
「……ええ……そちらも、いただかなくてはね」
「そうか……」
「……大丈夫よ。食材はちゃんと食べられる物だったわ。ただ……」
「……ああ……」
何か共感したのか、二人で目を合わせ頷いた。
「セリウスは?」
「BBQで使う魚をもう一匹取りに生け簀に行ったわ」
「キッチンは使えるか?」
「ええ、どうぞ」
「よし、口直しを作るか。エリック、行こう」
気分を変えるようにポンとエリックの背中を叩き、キッチンに向かった。
「ん」
口直しって言っちゃったよ?
一体どんな料理が出るのかマジで楽しみになってきた。
「エリック、スイカがあった。あとコレも」
冷蔵庫を物色していたライオネルがスイカとマンゴーっぽい黄色い楕円形の果物を持ってきた。
「なんだ。取りに行かなくてもあったんだね……」
ブルーベリーを洗い、潰れていたり腐っているのを選別しながら応えた。
「ああ、だがまぁ珍しいものも見れたし、無意味では無かったと思う」
「うん、だよね。あのスイカガメ……やっぱり皆にも見せたかったな……」
「なら、明日狩りに行くか?準備していけば捕獲も可能だろう」
「うーん……」
最後振り返って俺を見ていた亀の顔を思い出した。あの、何だか俺を認めたような笑顔……。
「いや、それはいいかな」
出来れば自然と出会いたい。
「そうか……。そうだ、このスイカ、カメの形にするのはどうだ?」
「!!良いね!」
さすがライオネル、ナイスアイデアだ!
「よし、じゃあスイカは任せてくれ。エリックはマンゴーとブルーベリーの盛り付けを頼む」
「ん」
やっぱコレはマンゴーか。俺、苦手なんだよな。口がむず痒くなる……でも、エリックはたぶん平気だよな?
よし、あのよく見かける賽の目状の……花みたいにするカットをしてやろう。
きれいに盛り付けていると、工作みたいでなかなか楽しい。チラッと隣で作業するライオネルを見た。
そこには精巧に再現されたスイカガメが出来上がってきていた!
「……ライオネル……すごい……」
思わず感嘆の声をあげた。
ナイフを器用に操り、作り上げていく過程はまさしく芸術家のそれのようだ。
「ああ、興がのった。エリックのは……かわいいな。君みたいだ」
ふっと笑顔を向けられた。
「……な、何を言って……」
思わず照れてタンっとマンゴーに包丁を入れた。
「いたっ!!」
今サクッて指切った!
痛って~!血がじわっとにじみ出たきた。
止血ってどうやるんだっけ?
「!エリック」
ライオネルが側に来たかと思うと、切った左手の薬指の根元をきゅっと締め、持ちあげられた。
そのまま、はもっと第二間接まで咥えられた!
「!!」
ウキャーーッ!ドキッとしたぁ!
ちょっ!いや、お約束かもしれないけど!
かぁーっと頬が熱くなる。
「ラ、ライオネル……」
舐められてる感触がするぅ……うぅっ……なんか、嫌じゃないのが怖い!
「──気を付けるんだ」
指先に唇をつけたまま、金色の光る瞳で見つめられ、そう言われた。
「……はい……」
……何か……ぼーっとする……
「……あれ?」
切った左の人差し指を見ると、傷が無くなっていた。
「それくらいの傷なら治せる」
そう言って、スイカガメ製作に戻っていった。
「……ありがとう」
「どういたしまして」
何となく見つめあい、微笑みあった。
……これ、もうカレカノじゃない?
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