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#72 図書館にて

すねらーと更新(転生したら~と同様の入り方です)


誰の話を進めるか迷いつつ。とりあえず主役のエリッキュンを進めようかと頑張りました!


ちなみにこの世界での“ペン”は鉛筆の事です。


よろしくお願いします。



「エリック、この本のこことここを抜粋して、書き写してくれるか」


ライオネルが一冊の本をエリックの前にトンと置き、手渡した。


「!────ん……」

今書いていたメモをチェックしながら、なんでもない風にその本を受け取った……。



──ビビッたぁ~。別の事考えてたから、急に声かけられて、びっくりしたわい!

いや、俺もね、ちょっと緊張してたみたいだ。別に意識してる訳じゃないけどね?


機械的にペンを動かしながらチラッとライオネルを見た。


本を選び、確認するようにペラペラとめくり、また戻す作業を繰り返している。

その涼しげな横顔はいつもと変わらずキラキラしてる。



「──ふぅ…………」

思わずため息が出た。


──アレはただの事故だ、事故!あんなのカウントされたら……俺がかわいそうだろ!


馬車での事を思いだし、ぎゅっと手に力が入り、バキッとペンの先が折れてしまった。


「……あ、しまった……ペン折れたからちょっと、削ってくる」


そう言って削り機のある窓辺へと移動した。


折れたペンを削りながらまた思いは馬車での出来事に向かった。


……ライオネルは王族だし、ああいうのは慣れてるよな……でも俺は女の子の手すらまともに握った事ないんだゾ?

学校行事のマイムマイムでも、恥ずくて手を繋ぐフリしてたし?


……なのに……アレって……ファーストキ……ってぇ!ちっがーう!!ぜってぇ違うし!


ガリガリガリガリとペンを削った。


……だいたいさぁ~よく考えたら、ここって乙女ゲーな訳じゃん?例えライオネルとキ……しても、したのはエリックであって、俺じゃないよな!?

そうだよ、俺が汚された訳じゃないじゃん!

あ~良かったぁ~いや、別に意識して無いけどね?全然、柔らかくてビックリしたんじゃないよ!?


ガリガリとペンをさらに削った。



唇が触れた時の感触が忘れられず、必死で自分に言い訳をしするエリッキュン……。


ペンが削られ、20センチ以上あった長さが半分程になっているのにも関わらず、まだガリガリガリ……と削るのであった。



「エリック」

と、突然ポンと肩に手がかかった。


「うひゃ!」

ビクッと肩が震えた!


「!?どうした!?」


そのビックリしたエリックにライオネルも後ずさりした。


「や……ちょっと考え事してて……」


「エリック、ペンくずで何か作る気なのか?」


「へ?」


「……それ……もう削る必要無いだろ?」


「…………あ…………」

手元を見た。

山のようなペンくずが、こんもりと鎮座していた。


……いつの間に?ペンが、5センチくらいになっちゃってるよ……。あぁ……やっちまった……なんか、ペンくずが鰹節みたいだな……。


などとどうでもいい事を考えつつ、削る手を止めた。


「……考え事してた。……ごめん」


「……何を考えてたんだ?」


「──え?」


「そんなになるまでペンを削って、何を考えてた?」


「っ!──何って…別にっ……大したことじゃ……」


「大したことじゃなくてその惨状かい?」


「………………ボクにとっては……大した事だけど……ライオネルには何でもない事だよ。たぶん……」


「言ってみてくれ」


「………………っ何でもないって!気にしないで」


「──エリック……」



そんなの恥ずかしくって言えるかよ!

察しろ!天然王子め……。


ああ!ってか、何で俺モヤモヤしてんの?どうでもいい事だろ?事故だろ?気にしてんの俺だけじゃん!そうだよ。言っちまえばいいんだ。「ちょっと口ぶつかってビックリしちゃったんだよね~これってキスにはならないよね?」って軽くさぁ!そしたら笑って「気にしすぎだエリック」ってなるさ!


よし!モヤモヤ解消するぞ!

顔をあげ、ライオネルを見た。


ライオネルもエリックを見た。

バチっと目があった。


「──ライオネル……その……あの……ボクは……」


カァーーーっと頬に血がのぼるのが分かった!


──ぎぇ~~~っっ!何赤くなってんのぉ、エリックぅ!いや、これ、おかしいだろ?


「~~~~~~っその…………さっき……ボク……」

ああ!何故か言葉にならないんだけど?


くるっと回れ右!でライオネルの視線を避けた。そのまま逃げるようにその場からそそくさと逃げ出そうとした。


「エリック!?」


ライオネルの驚いたような声が聞こえる。


──いや、もう、ほんと何やってんの?エリック!!


「──…………トイレ……」

ピタリと止まり、ぼそりと呟いた。


「え?あ、ああ……分かった……その……気をつけて……?」

戸惑いながらライオネルが言うのが聞こえた。

コクリと頷き、足早にその場を去ったのだった。




「──エリック……どうしたんだ……?」


図書館に入ってからも何処か上の空で作業をしていたエリックだったが、先ほどの挙動不審は何なのか?


必要以上に削りに削られたペンを見た。

山のような削りくずが盛られ、ゴミ箱は一杯になっていた。


エリックは顔が赤くなる以外、あまり態度に出ないけど、さっきはかなり動揺してるように見えた。


動揺する原因……一つ考えられるのは先ほどの事故だった。


だが、あれくらいで動揺するものか?

貴族たるもの、5歳を過ぎれば異性とのやり取りなど、色々教えられるはずだった。

中には手取り足取り実践させる者までいる。


それは身分が高い者ほど跡取り問題などで顕著だったが……伯爵家では違うのかもしれない。

レッドクローバー家では次男となると自然に任せているのか?……最低限の知識だけで、実践は伴ってない……?


ハッとした。


──そうか……エリックは……本当に、経験が無いのかもしれない。雰囲気からついからかうようにチェリー扱いしていたけど、本気でそうだとは思っていなかった。だけど、本当だったら?


……まさかの未経験?


……だとしたら、さっきの事故は……事故ではなくなる。意識しても仕方ない事だろう。


「──エリック……」


スリッと自分の唇を触った。


エリックの真っ赤な頬をして、見開いた澄んだ青い瞳を思い出した。

ついで柔らかな唇と甘い息がかかった時の事をまざまざと思い出した。


ライオネは気にしていなかった。

だが、あんな初な態度をとられると、意識せざる得なくなってしまった。


カァっと自分の顔に熱がこもるのが分かった。

「…………参ったな……」


自分と並び首席で、頭が良く、クールな印象だった。

だが中身は純粋で思いやりがあり、態度には出にくいものの、すぐ顔が赤くなる照れ屋だった。何よりライオネルを気遣っているのが単純に嬉しかった。


そして、先ほどのキス一つで真っ赤になり狼狽えるエリックが思い出された。


「────エリック…………可愛いが過ぎるだろう……どうしたものか……」


こんな風に心が動かされるのは、ライオネルにしても初めての経験だった。


両手で顔を覆い、またペンくずを見た。


ぐちゃぐちゃで、ごちゃごちゃとした溢れんばかりのペンくずが、まるで今の自分の気持ちみたいだと、じっと見つめるのだった…………。


認めようとしなかった心境の変化が、だんだん誤魔化せなくなってきたライオネル!完璧王子様が崩れてきたかなぁ~?

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