#34 ゲイル発見!
ドリーム王国は野生の王国でもあるんだよ。
木登りなんてへっちゃら!
という訳で、早速ゲイルを探しに行った。
俺の予想では、ああいう天の邪鬼タイプは木の上とかで寝てるのだ。
あまり人の来ない静かな所に居そうだよな……。
なので、裏庭にいるとふんだ。
「……ゲイル……何処だ?……あ」
登りやすそうな木の枝の間に背中を幹にもたれかけさせ、腕を組み寝ているゲイルを発見した。
居るし。予想通りだし!
あまりにもテンプレじゃない!?ほんとちょくちょく安易だよな!
……まぁいい。よし、頑張れ!俺!
スーッと息を吸い気合いを入れた。
「ゲイル、何か用事があったんじゃないの?そんな所で何やってるの?」
木の下まで行き、下から声をかけた。
ゲイルはうっすら目を開け、睥睨するかのようにエリックを見た。
「……別に用があるとは言ってない。お前こそ何しにきた。勉強会だろ?早く戻れ」
しっしっと野良犬を追い払うように手を振られた。けんもほろろの塩対応だ。
くぅ……ほんとコイツ……。
俺だって別に来たくて来てるんじゃないやい!
「……少し話さない?降りて来てよ」
「…………どうせライオネル辺りが行けって言ったから来たんだろ?別に話すことは無い」
「違うよ!ちょっと……気になったんだ」
いや、図星も図星、その通りなんだけど“その通りです、流石だね!”とは言えない。
「何が気になったんだ?」
「その…………ゲイルが……皆と距離を置いてる気がして……」
ほんとは距離を置いてたのは俺の方なんだが……まぁ、それはこの際置いておく。
「……俺は皆より年上で外国人だからな。そんなものだろう」
…………あれ?もしかして、ゲイルって…………拗ねてる……のか?そんな事気にするヤツだっけ?
まさか、俺が逃げ回ってたから……いや、まさかな。
「──君がそんな事を気にしてるなんて意外だ」
「あ?」
ギロッと睨まれた。
うぁぁ……怖……。でも、まぁ少し慣れたか。
「いや、その……ほら、はじめの頃さ、こうガーッとボクに来てただろ?だから、他人の事なんて気にしないんだと思ってた」
「別に気にはしてない。ただ……つまらないだけだ。親父が“隣国のことを知り世界を広げろ”だの“生涯の友達を作れ“だの言って、自分が留学したからとセレブリティに放り込んだ。俺は別に来たくはなかった」
なるほど、そういやそんな感じだったな。
……何か既視感が……。
あーあれだ!
行きたくもないのに無理やりボーイスカウト行かされた時の俺だわ!
いや~あれは苦痛だったなぁ~。結局2年間行かされたけど、ボスゴリラみたいな野郎がリーダーで、怖いが過ぎて何も心に残らんかった!
人には向き不向きがあると思う。
「分かる。親って勝手だよね。お前の為とか言ってさ……親が出来たからって子も出来るとは限らないよ。ボクなんか行きたくもない習い事に参加させられてさ、いつも怯えてちっとも楽しくない2年間を過ごしたことがあるよ」
あれはほんとに嫌だった。ストレスにしかならんかったもんな。
「……息苦しくはなかったのか?」
「ん?……まぁ、毎日ではなかったから……」
……もしかしてゲイルはホームシックじゃないのか?異国で一人な訳だし……
「……そうか、じゃあ、ゲイルは国に帰ったらいいんじゃない?“逃げるが勝ち”って言うしね」
嫌なことをいつまでも続けることなんてない。避けるのもアリだよな!
安全なホームグラウンドに帰れば落ち着くだろ。
「────お前…………」
「ん?」
──あれ?俺、変なこと言った?……ゲイルが上から射殺しそうな目で見下ろしてくるんですけど……
──え?…………俺…………殺される……?
と、突然、ドサーッ!とゲイルが上から飛び降りてきた!
「どぅひぇぁああ!!」
思わず変な声で叫んでしまった!!
なになになになに!?びびった!マジで!
突然動くなや!びびんだろうがぁ!!
「────エリック…………」
ゲイルがドスの効いた低い声で俺の名を呼んだ。
と、同時にぬぅっと褐色の手が、目の前を覆い尽くすように迫ってきた……
怖い怖い怖い!!