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#31 ユリアサイド

エリック~ぼんやりしてたらダメだよ?

いくらライオネルを好……げふんげふん!


ユリアはどうなってるの?

「ユリア、何を着ていく?」

ルルカが聞いてきた。


「うーん、そうね……せっかくの星見だからな……」

今日は女子寮で「星見の会」が開かれる。学年会室には寄らず、直ぐに帰寮し、準備にとりかかった。


「……うん、やっぱりこれかな」

淡い緑色の浴衣を取り出した。

後で学年会室に寄ろうと思っている。

一番星が見える頃には生徒会会議も終わって、ゲイルも居るだろう。ゲイルはどんな格好が好きなのか、いまいち分からない。でも普段と違う格好で気を引きたいところだ。



「まぁ、かわいいわ!ユリアに似合いそうね」

ルルカがニコニコと笑って言った。


「ありがとう、ルルカはそれ?」


「ええ、私、浴衣はあまり似合わないの」

ルルカはブルーのワンピースを着るつもりのようだ。メリハリのある体型をしているルルカには和服はあまり似合わない。


「うん、かわいい!ルルカに似合ってるわ……胸が大きくて、羨ましいなぁ……」

ルルカはおっとりとしていて色っぽいのだ。

何となくだが、ゲイルはルルカみたいなタイプが好きなんじゃないかと思ってしまう。


「ええ?私はユリアのスレンダーな体型が羨ましいわ。どんな服でも似合いそうで……ふふ、私たち無い物ねだりね」


「──ほんとだ」


目を合わせて、ふふふと笑いあった。


ユリアは浴衣に、ルルカはワンピースに着替え、軽くお化粧した。


「晴れて良かったわ。星が綺麗に見えそう」


「うん、聖堂の森から6月◯日の夜に一番星に祈ると願いが叶うんだよね……」


この学園の女子寮に伝わる伝説なので、信憑性は分からない。でも伝統として6月◯日が晴れの時は、皆で聖堂の森に行って星見の会を開く習わしなのだった。

今夜は絶好の星見の会日和だ。


『今夜は星見の会が行われます。参加される方はロビーにお集まりください』

寮内に放送が入った。


「行こうか」

「ええ」

二人で手を繋ぎ、ロビーへと向かった。


*****


聖堂の森にはテーブルの上にサンドイッチやスコーン、クッキーなどの軽食が並べられ、立食のガーデンパーティーのようだった。


早速ルルカと二人で一番星に願いをかける。

一番星に願うこと、それはもちろん……


“ゲイルと婚約できますように……”


浴衣もゲイルの気を引きたくて選んだ。

……カワイイって思ってくれるといいな


ルルカは何を願ったのだろうか?

チラと見たら、目をつむり一生懸命何かを願っていた。

……“セリウスと婚約できますように”かな?うまくいくといいね。ルルカ、応援するからね……


綺麗に晴れた夜空には満天の星が煌めいている。とてもロマンティックな夜だ。



「あ、フクロウがいたわ」

「え?どこどこ?」


ルルカと森を散策しながら談笑していると、急に知らないグループの子が現れ「こんばんわ」と声をかけられた。

Aクラスの子達らしいのだが「ちょっといいかしら?」と、ルルカを引っ張るように、あれよあれよという間に連れて行ってしまった。


「──ルルカ」

ポツンと一人取り残されてしまった。

なんだか、嫌な予感がする……。


「ユリア・ピンクフィールドさん?」

一人になった途端、5人グループが現れた。


「あなた、伯爵家に引き取られただけの平民育ちなのですってね。それなのに、図々しいのではなくって?」

名乗りもせず、その内の一人がいきなり言い放った。

皆、身分の高そうな雰囲気だったが、誰とも会ったことはない。おそらく上級生だろう。


「──おっしゃられる事がよく分からないのですが……」


「あら……ユリアさんって……成績はいいのかもしれないけれど、貴族としての教養はお粗末なのね……」

バカにしたような笑い声が波のように5人グループに広がった。


「あなた、一年生の学年会員だからって、ライオネル様達に生意気な口をきいているらしいじゃない?……まぁ、お生まれが平民では礼儀がなって無いのは、仕方のない事なのかしら?」

クスクスと笑いながらまた違う誰かが言った。


──ああ、そういう事ね


「私はライオネル様から、セレブリティ学園内ではクラスメートとして接して良いとのお許しを頂いております。他の方々たちとも同様のお話をさせていただきました。それが無礼に当たるのでしたら、それを許可されたライオネル様に対しての批判に当たると思われますが?それは無礼ではないのですか?」


「──まぁ!本当になんて生意気なっ!たかが伯爵家の庶子のくせにっ!!」

5人の内の一人がバッと手をあげた!


叩かれる!

思わず目をつむった!


パシャン!


何かが顔にかかった。


「あら、ごめんあそばせ。手が滑ってしまったわ」


それは、ベタベタとした、葡萄のジュースだった。

せっかくの淡い緑の浴衣が、紫の葡萄の汁に染まり、どす黒い色に変わってしまった。


「──あなたのその下品な紫の瞳とよくお似合いよ」

蔑むような5人の笑い声が、静かな森にこだました……。

イジメは万国共通だね……。

妬み嫉みはみっともないぞ!

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