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#148 学生寮にて

ライオネル、セリウス、ゲイルは幼馴染。

疎遠になった時があったけど、今は仲良しさん。


それぞれ複雑な思いがあるとです。

セリウスが今度の発表で使う資料を纏めていると、ライオネルが部屋を訪ねてきた。


「いらっしゃい、部屋に来るの久しぶりじゃない?ま、とりあえず座ってよ。こないだもらったお茶を淹れるからさ」

「ああ、すまない」


セリウスの部屋にはこじんまりとした丸テーブルに二脚の椅子が窓辺に設置されている。テラス席のようなソレは海を感じさせる白と青だ。


ぼんやりと座るライオネルは無表情で何を考えているのか分からない。が、わざわざ部屋を訪ねるという事は……。

──何か、あったんだろうな


「……バニライトにミルクを入れるとそれだけでも甘いんだけど、疲れてる時はハチミツを入れるといいよ」


お茶をいれ、そう言ってライオネルの前にハチミツの瓶を置いた。


「……ハチミツか。子供の頃寝る前に乳母がよくハニーミルクを作ってくれたな……」

スプーンにハチミツを一掬いだけとり、ゆっくりかき混ぜながら、幼い日を思い出したのか少し懐かしそうにそう言った。


「ああ、マリアさんか。優しい人だったよね」

「……そうだな」


マリアは、ライオネルと、兄のアウレリウス二人の乳母だった。ライオネルが7歳の時に亡くなったが、穏やかで優しい人だった。


二人はしばらく黙ってお茶を飲んだ。


ライオネルはあまり自分の事は言わない。王族としてペラペラと内情を話すのはタブーだが、側近であり、親友である自分セリウスには、もう少し本音を語っても良いだろうと思うのだが……


……エリックに会ってからずいぶん素直になったよね。表情も作った笑顔だけじゃなくなって、豊かになったし……



「セリウス、君は個人的にカーペンター家のプリウスと話した事はあるか?」

カップを持ったまま、少し目を伏せて尋ねた。


「プリウスか……これと言って無いかな。挨拶くらいはするけどね。何?プリウスがどうかした?」

おっと、もしかして、ライオネルも見た?


「……最近、カフェテリアのメニューが変わったろ?」


突然話題が変わった。


「うん?あ、あぁ、果物を扱ったのが増えたよね。マンゴーパフェは美味しかった」


「それだよ。マンゴーもそうだが、我が国では育たない果物をふんだんに使ったメニューがいきなり増えた。おかしいと思わなかったか?」


「……うん、確かに。ああいう果物は高級品だし、そうそう出回ることは無かったね」


「ああ、高位貴族か、裕福な商人の嗜好品としてくらいのものだった」

そう言ってじっとカップを見ていた。


少し溶け残ったハチミツが底に溜まっている。それを一気に飲み干し、カップをソーサーに戻した。


「調べたんだが、あれ等は主にドリーム国からの輸入だったんだ。今までは色んな国から輸入してたはずが、セレブリティでは90%がドリーム国からの物に代わっていた」

90%といえばほぼ独占状態ということだ。


「……そこにプリウスが絡んでるってことか」

「プリウスというより、兄上だな。そしてドリーム国といえば?」

「……ゲイルだね」


ライオネルがコクリと頷いた。


なるほど、繋がった。

あの時話していたのはプリウス延いてはアウレリウス王太子の指示だったわけだ。


「なるほどねぇ〜〜だからゲイルは学校にあまり来てなかったのか。なーんかコソコソしてるなとは思ってたけどね」

「ああ。スイカガメの事で借りができたから、今回の事がその見返りだったんだろうな」


「……一学生にそこまで求めるか。さすがブラックダイヤ」

「まぁ、ホントのところは聞いてみないと分からないが」


「実は僕もゲイルとプリウスが話してるとこ見たんだよね。あえて聞かなかったんだけど、どうしてプリウスだったのかな?繋ぐならライオネルの方がいいと思うんだけど」

「……ゲイルは政治的野心は皆無、むしろ逃げてただろう?今回強引にでも、直接国政に関わらせたかったのかもな。ブラックダイヤ公爵家としては、第二王子の私より、次期王の兄上との繋がりを深めたかったのだろう」

ふっと自嘲気味に笑った。


「……だから王太子側近のプリウス?」

「……プリウスとしても私を介してより、直接交渉できる窓口ができれば兄上のプラスになると考えたか。いずれにせよブラックダイヤと直接繋がれる貴重な機会だった訳だ」


「あ〜やだやだ!まだ僕らは学生なんだからさぁ〜そういうのは卒業してからにしてほしいよ」

セリウスが肩を竦め、そう言った。



「そうだな。私も友人として、早くゲイルに戻ってきて欲しい」

「……うん、だね」


落ち込んだ気分を払拭すべく、新しく紅茶を淹れなおした。

ライオネルも話してスッキリしたのか、少し表情が和らいでいた。



「──そう言えば、今日エリックは朝から街に出かけたみたいだ」

「ああ、だからいろいろ熱心に聞いてきたんだね」

「相手は誰やら……」

「そうだね。まぁ……エリックだから……」

「「………………」」


新しく淹れられた紅茶は先程より甘く感じられた。

黙って静かにお茶を嗜みながら“どうせユリアくらいしかいないだろう”と、二人の心の声は一致していたのだった。


E:え?ボクのデート相手はユリアだってバレてる?

L&S&G:当たり前だ


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