#133 お誕生日会
訪れてくれて感謝感激!
ただそれだけです。
遅くったって、継続することが大切なのだと思うのです。
頑張って続けることは、きっと結果に繋がるのだと信じてる。てへ。
「お誕生日おめでとう、セリウス!」
今日はセリウスの誕生日を祝う会だ。
本来なら大勢を招待し、大規模なパーティーを開くところなのだろうけど、学年会ズで話し合った結果、ユリアの提案もあり、セレブリティにいる間は、それは取り止める事にした。
行われるのは慎ましやかに学年会室でのメンバーだけによる、飲食はそれぞれ持ちよりのプチパーティーだった。
持ちよりと言ってもさすが高位貴族、オードブルからデザートまでずらっと揃っていた。
ミルクもいつもと違う学年会室に居心地が悪かったのか、いつの間にやら姿を消していた。
「ありがとう、すごく美味しいよ」
セリウスが嬉しそうにルルカの作ったクッキーを食べている。
「そんなに難しいものではないのよ。セリウスは紅茶が好きだから……合うかと思って」
刺繍が得意なのは聞いていたが、料理はユリアと同レベルのお粗末なものなはず。それがまがりなりにも形を成したのは、かなり頑張った結果だろう。
少し頬を赤くし、口ごもりながらそう言うルルカはいつものお嬢様然とした雰囲気はなく、恋する乙女のようでとてもカワイく皆をほっこりさせた。
「ふふ、僕もゲイルと同じ16歳だ。何だかすごく大人になった気分だよ」
セリウスが感慨深げに言った。
「ええ、良かったわね」
「……でも、よく考えたらゲイルとセリウスって半年もかわらないよね?」
「一年のうちの半年は大きいだろう」
「えーそうかなぁ~?でも……」
などと何やら誕生日の話で盛り上がっていた。
「……ライオネル……聞いていい?」
隣のライオネルの袖を軽く引っ張り、囁き声で聞いた。
「何をだ?エリック」
「あのさ、ゲイルの誕生日っていつ?」
セリウスとゲイルが半年ほどの差とは初耳だ。てか、皆当然のように知ってるんだな!
俺なんか誰のも知らないんだけど?
「──知らないのか?まぁ、エリックらしいというか……2月14日だ。……ちなみに、ルルカは11月7日、私は12月25日でユリアは3月3日だ。いくら社交に疎くても、メンバーの誕生日くらい覚えておいた方がいい」
「──うん、そうだね……ごめん、もう覚えた」
そうだよな~ここは貴族社会なんだもんな。
それにしても、こういうのはシステムが教えてくれるもんじゃないの?いつからか、全く聞こえなくなったけど。
順番で行くと……ゲイル、セリウス、ルルカ、ライオネル、ユリア……あれ?エリックは……ヤバ……自分の誕生日知らんって……。
「──じゃあ、ボクの誕生日も覚えてるよね?」
よし、ここはライオネル頼りだ。
「当たり前だ」
ちょっと呆れたように言った。
うん、で、いつ?続きは?
期待を込めた目でライオネルを見つめた。
「──1月15日だろう?違うのか?」
「──うん、そうだよ。合ってる……」
と思う。
ライオネルが間違った情報をつかまされるはずないよな?はは……。後で確認しないと。
「驚かさないでくれ」
「ごめん、いやライオネルって会った人の誕生日、全部覚えてたりする?」
「そんな訳無い。まぁ、特に親しい者か、重要人物くらいか」
「……だよね……」
良かった。俺は人の顔もろくに覚えられない。はっきり言ってこのメンバー以外覚えてない。その上興味もない人の誕生日とか覚えるなんて絶対ムリ。
クラスメートすら顔も名前もおぼろ気だ。
「どうしようもないが、セリウスに先を越されたな……」
「まぁ、ルルカにも越される予定だしね?」
「ふっ……君には勝てるぞ?」
「あーそれね、ほんとどうしようも無いよ」
年齢は変えようがないもんな。
セリウスはもともとお兄さんっぽいし、ルルカもお姉さんっぽい。俺としては問題ない。
「……セリウス、顔崩れてる」
「まぁ、野菜を千切ってただけの婚約者候補殿からの手作りだ。嬉しいんだろう」
「──なるほど……?」
……手作りお菓子かぁ……知らん子からもらっても怖いだけだけど、自分の好きな子からだったら、そういうもんなんだろうなぁ~。セリウスのやつ、頬がゆるみきってるじゃん。ザ・リア充って感じだよなぁ。
なんだかんだ談笑したあと、皆それぞれ用意した品をセリウスに贈った。
食事は立派だったが、楽団や余興もなく、飾りなどは手作り感満載の、それこそホームパーティーレベルのお誕生日会だったが、セリウスはとても嬉そうだった……。
そろそろ門限なのでお開きにしようとなったところで、セリウスが徐に立ち上がった。
「皆、今日はありがとう。こんなに心のこもった誕生日会は初めてだった。沢山の人に祝われるのもいいけど、親しい友人に祝われるのは別格だね……嬉しかった」
そう言いながら紳士の礼をした。
「これは僕から皆へのお返しだよ」
そう言って何やらバックから紙袋を取り出し、一人ずつ渡してきた。
皆お礼を言いつつ受け取った。
「セリウス、これ、なぁに?」
ユリアが受け取りながら聞いた。
「ふふ、後でのお楽しみ。寮に帰ってから開けてみて。皆に同じものと、もう1つ違うものが入ってるんだ。そうそう、ゲイル、君には夏休み色々お世話になったから特別に」
「いや、いらん」
「何故!?」
ゲイルの拒絶にセリウスがガーンって顔をした。
「嫌な予感がする」
危険を察知する野生の勘だろうか?無表情にそう言った。
「ゲイル……それは失礼だぞ」
ライオネルが嗜めるように言った。
うん、そうよね、いくらゲイルでも……等と皆からの非難を浴びバツが悪くなったのか、
「…………いただいておく」
そう言ってしぶしぶの体で受け取った。
「ふふ、大丈夫だよ。きっと気にいってくれるはずだよ」
セリウスが笑いながらそう言った……。
*****
自室に戻ったエリックは部屋着に着替え、ベッドに座り、早速貰った紙袋をあけた。
「……おー」
出てきたのは青い翼をモチーフとしたブローチだった。
ついていたカードには『僕らの友情の証に』と添え書きがあった。
「ふーん、つまりお揃いのやつをつけろって事か。セリウスデザインかな?……格好いい」
男女どちらがつけても違和感のないデザインで、制服に合いそうだ。襟章にするのか……?
「明日皆に合わせよう……」
ファッションに自信のない俺には率先して着ける勇気はない。周りのイケメンに合わせることにした。
「ん~で、次は……」
もう1つ、皆に違うものを入れたと言っていたけど……なんだろう?
袋に手を入れた。
ちょっとがんばる。