指差し賢者は今日もここにいる
描き直し前提で書いた駄文です。
よければどうぞ
俺は、ニコラ。12歳だ。見た目は、どこにでも居る平凡な顔だと思う。両親は…いや、俺のことはどうでもいいんだ。
今書いてる事は取り止めもない独白?になると思う。
ここ最近の悩みは、身の丈ほどの杖をつき白髪で髭を蓄えローブのフードを深く被った爺さんが我が家の軒下に毎日やってくる事だ。
まあ、爺さんがやってくる事に関しては問題ないんだ。
家の軒下はかなり広めに作ってあり、急な雨が降った時などの雨除け場所だったり、触れるように長椅子があったりして村人は盤上ゲームなんかを楽しんだりしてる。
そういう訳で田舎の小さな村だからな、皆フレンドリーに話しかけるんだが、どうやらその爺さんは喋れないのか喋らないのかわからないが、一切会話をしないんだ。
もちろん、正しく教育を受けた村長なんかは地面に文字を書いて会話を試みたが、爺さんは俺と同じで文字読めないらしい。
そのせいか最初の数日は物取りや物乞いの類かと警戒もしたが、どうやらそうでもないらしく、皆様子見という名の放置を決め込んだみたいなんだ。
俺も最初の一ヶ月は、家の手伝いをしながら爺さんを警戒…むしろ観察かもしれないをしていたんだが、この爺さん日の出と共にいつのまにか現れて、日の落ち始める時間には居なくなっていた。どこに帰るのか調べようと日が落ち始め爺さんが帰ら時に追いかけてみたが、村の外に出て行ったので村の門までで断念した。
そんなこんなで、毎日来るし、いつも軒下の隅にある腰掛石に座っているので俺も追跡するのを諦めた。
爺さんは、時々長椅子で行われている盤上ゲームが好きなようで、気がつくと横に立ち盤面を覗き込んでいる。しかも、かなり強いみたいで、村人の対戦をみては劣勢の方にスッと指を刺し動かすコマと動かす先を教えるから、特定の人からは尊敬されているみたいだ。
ただ、村人のが身振り手振りで誘っても自ら指しには来ないみたいだ。
別の日には、村の子供の一人が川で遊んでいる時に無くした髪飾りを探したいと友人に話していると、子供の肩を優しく叩き、指を差していた。
子供が二、三話すと爺さんは頷き子供はすごく喜んだ顔で駆爺さんが指を差した方へ駆けて向かっていった。
しばらくしたら、子供は戻ってきて爺さんにお礼を言っていたので、どうやら髪飾りは見つかったようだ。
その日は、この爺さんは占術師だったのかもしれないなと納得して観察をやめた。
また別の日には、腰掛石に座っていつもあまり微動だにしない爺さんが妙にウロウロしているから、ちょうど近くを通りかかった、警邏のおじさんに爺さんがなんか変と話すと警邏のおじさんは爺さんの方に向かって行った。
警邏のおじさんが近づくと爺さんは身振り手振りで何かを伝え、村の境目にある森を指差していた。
警邏のおじさんは少し困った顔をすると、首から下げていた笛をピーっと長く吹き、しばらくすると弓や槍を持った人が5人ほど来て警邏のおじさんは、何か話すと駆け足で森の方へ向かっていった。
おそらく、クマでも近くに出たとでも爺さんは伝えたんだろう。家の中から見てたからよくわからなかった。むしろ警邏のおじさんは、よくわかったなと感心する
日が沈み始める頃、警邏のおじさんたちは戻ってきて帰ろうとしていた爺さんにお礼を言っていた。
この爺さんはどこに帰るんだろうなんて思いながら、この日は家に引っ込んだ。
そんなことが何回か続いたら流石に村人もこの爺さんが指を差すほうに求める答えがあったり、訪れる脅威があり事前にその脅威を取り除けるということが、胡散臭いながらも感じ取れるようになり、爺さんが軒下に現れると困り事のある村人はこぞって助言という名の指差しを受けにきていた。
別にそれが悪いとは思わないが、爺さんに頼りすぎているのは、見ていて好ましくなく俺はそんな村人を見るのをやめた。
それから幾日か過ぎ、俺は15歳になった。
15歳になると、普通の村人でも村から出て森などで木の実や野草などを取りに出ることが許され、猟師の子供は山や森で鹿や猪などを狩ったりもできるようになる。もちろんどちらの場合でも一人では無理なのでベテランと一緒にだが…。
村から出るだけなら、門番にも止められることはなくなるので、今も家の軒下にくる爺さんの寝床を突き止めることが可能になった。
だからといって日没後に無事村に帰れるかは別の話なので、追いかけたりはできないと思う。
村の外に出てるのに無事なのは、相当の手練れか、ものすごく運が良いだけなのかわかりかねる。
それにしても3年も経つのに、誰も爺さんの寝床はわからないという。
いや、そもそも日の出と共に来て日が落ちる頃に帰るのに食事を取ってるところすら見たことない。
あ、なんか人間なのかも怪しくなってきた。
そういえば、年に数回くる行商人から遥か東の地に仙人と呼ばれる賢者がいて、仙人は不老不死となり食事は霞を食べるだけと胡散臭く言っていたな。
あの爺さんに限って仙人なわけないな。
ある冬の日、俺は厄介な病気にかかってしまったらしい。
村の薬師が俺の病気を診て匙を投げたらしい。
比喩ではなく物理的に…。
数日続いている高熱によって朦朧としながらもベッドで寝ていると気がついたら、横に爺さんが横に立っていた。
いつも家にまでは入ってこない爺さんが侵入してきていることに俺は力の入らない体で身構えると、爺さんは初めて話しかけてきた。
お前喋れないんじゃないのか?
そんな関係ないことを熱でまわらない頭で考えていたが、爺さんの発した言葉は俺を困惑させた。
「ニコラ、それは死に至る病だ。ここにある薬を飲めば死なない。いや、今後死ねなくなる。選ぶが良い。」
そういうと爺さんは、怪しい丸薬をベッドサイドの机に置き「でわな。」と家から出て行った。
妙に耳に残った爺さんの声は妙に若かった。
選択肢が残された俺は本当に死ぬかはわからないが、死ぬ以外の選択肢を選んだ。
薬はよく効いたんだと思う。
7日ほど眠り続けていたそうだ。
病気のせいか、あの爺さんの薬で体が変質したのかはわからないが、肌や毛が白くなり皆にかなり心配された。
あんなことがあったからもう爺さんはいないと思い、お礼が言えなかったなと残念がっていたが、軒下を見るといつもと同じで爺さんはそこに居た。
読めない爺さんだ。
ただ、村の薬師も諦めた病を治せるってことは賢者なんだろうなと思った。