1 ……あの日、私は小さな白い繭の中にいた。
繭と継
登場人物
木枝繭 お嬢様
山上継 メイド ツインテール
柏葉かささぎ お坊ちゃん
白波いるか お坊ちゃん
プロローグ
……私をぎゅっと抱きしめて。
本編
……あの日、私は小さな白い繭の中にいた。
繭が継と出会ったのは、二人が十歳の小学五年生のころだった。継は繭の家に繭の身の回りのお世話をするメイドとしてやってきた。
でも繭は継にメイドではなくて、自分の本当の友達になってほしいと思っていた。
だけど継ぐは繭の友達にはなってくれなかった。
真面目な継はいつまでたっても、繭のメイドとして、繭のそばにずっといた。
そんな二人の関係が変わったのは、ある出来事がきっかけだった。
それは繭のお見合いだった。
お嬢様である繭には幼いころからの許嫁となる、まだ一度もあったことがない良家のお坊ちゃんがいた。
繭は自分の許嫁である婚約者のお坊ちゃんと、十四歳のときに初めて出会った。繭の許嫁のお坊ちゃんの名前は柏葉かささぎといった。
柏葉かささぎくんは、繭と同い年の優しい人だった。
でも繭は柏葉かささぎくんと結婚したいと思わなかった。
だってそれは自分の気持ちではなくて、お互いの親たちが勝手に決めた、本物ではない、偽物の愛だと思ったからだった。
だから繭は十六歳になって、柏葉かささぎくんと正式なお見合いをすることになると、家出をすることにした。
そのことを継に話すと継は繭の家出に反対をした。