招かれざる客
次々と降り立つ実働部隊の機体に紛れ、一機の胡州軍制式アサルト・モジュール『飛燕』がハンガーに歩いてくる。
「おい、これで終わりじゃないのか?」
コントロールルームで叫ぶ島田の声を聞きながら誠は目立たないように着替えを終えてハンガーを一望できるコントロールルームにやってきた。
「あ!役立たずだ!」
シャムの叫びがこだまして誠にパイロットスーツのままのかなめ、カウラ、シャムの視線が誠に向いた。
「確かにナンバルゲニア中尉ほど働いて無いですけど……」
「こいつはどうでもいいそれより……」
かなめの言葉に誠はハンガーに目を向けると紫色の見慣れない飛燕の機体の後ろを歩いているところだった。
「誰だあれは。使者は一機しか許可出してねえぞ」
『許可が要るの?』
突然モニターが和服姿の妙齢の女性を映し出した。
「げ!」
誠のとなりで突ったっていたかなめが表情を曇らせながらうめいた。
「お母様!お久しぶりです」
かえでが屈託のない表情を浮かべてモニターの中の女性に声をかけた。
『かえでちゃんはかわりないみたいね……それにしても……』
「フン!」
明らかに機嫌が悪そうなかなめを見て誠は質問を飲み込んだ。
「あのー、失礼ですが。摂州州軍の関係者の方で?」
どこか漂う高貴な雰囲気に飲み込まれながらコントロールルームの中心に座っている島田が声をかけた。
『これはこれは、いつもかなめちゃんとかえでちゃんがお世話になっているみたいで……申し遅れました、私は二人の母の西園寺康子と申します』
「はあ……」
あまりの展開に康子の機体を誘導していた島田が呆然とした表情で誠達に目を向けてきた。。
「オメー等そろそろ着替えて……って『摂州の鬼姫』」
『ああクバルカ中佐ね。いつもうちの娘達がお世話になって……ちょっとお待ちになってね』
事態が読めずに突っ立っているランを無視して康子は通信を切った。全員がそのままコントロールルームのガラス窓まで駆けていきハンガーを見下ろすとそこにはすでに機体の固定を終えていた金吾に手を取られてアサルト・モジュールから降り立つ赤い和服の女性の姿が見えた。
「年考えて着物を選べよ……」
「でもあれだろ、康子様は『エターナルチルドレン』だろ?年を食わないなら年齢も関係ないだろ」
カウラの突っ込みを受けてかなめは静かにうなだれた。ハンガーから見えるらしく康子は屈託のない表情でかなめに手を振る。
「お母様!」
こちらも屈託なく手を振るかえで。誠が視線を向けるとその隙をついてかなめがコントロールルームから逃げ出そうとしていた。
「おい、西園寺。テメーが貴賓室に通せ」
逃げ出そうとしていたかなめにランは冷静に声を掛ける。かなめがいかにも困ったという様子でふりかえる。
「お姉様は少しお母様が苦手ですから。僕が案内します」
かえではそう言うと渡辺要大尉を引き連れコントロールルームを出て行った。
「嫌な予感しかしねえな」
かなめはそう言って肩を落とすとそのまま誠達についてコントロールルームを出ていくことにした。




