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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

ファンタジー寄せ集め

咎の大地

作者: アロエ
掲載日:2020/04/17



その世界は、危機を迎えていました。


人々はそれに抗おうとしていましたが、自分達だけではどうにもならないような局面にまで事態は進行し。そして、人間の中で最も力を持つ王とその一族たちは異世界より御子を召喚し、世界の全てを任せ、救世を望み、結果、多大なる犠牲を出しながらも御子は現れました。


―――しかし、本来一人きりで召喚されるはずの者は、何故か二人現れ彼らはこう考えます。一人は本物の御子であり、もう一人は御子を害するものであると。



「……で、何で僕の子が虐げられ、あまつさえ命を落とすような事をされるのか。理解に苦しむんだけど、何か申し開きはあるかい?」



ぶすぶすと嫌な臭いの煙が未だあがる、その真っ黒になった遺体を抱えあげた神々しいまでの美しい青年は顔を歪め、冷たい口調でそう人間の王たちに問いかけます。それは御子の存在を脅かす存在たる穢れ色を含んだ娘を忌み嫌った、王族やその臣下たちの判断で魔女を清めの炎で焼いた時に起こりました。


御子を召喚し、世界を託そうとしたその日から、今までどんよりと世界を覆っていた黒く厚い雲から一筋の閃光が生じたかと思えば魔女を処刑していた広場に彼の青年が現れ、清めの炎を手を一振りして消し去り。


そして炎が消えたのを見て、彼は足早に魔女の遺体に近づいていくと自分の真っ白い衣服が汚れるのも厭わずに魔女を抱え上げ、王たちを責めるような意味合いの言葉を言ったのです。王たちは戸惑いながらも自分たちの意思を言葉にしようとしたが、できませんでした。



『もういいのです、主様……。私がこの身を賭してまで救いたいと願った国などないと骨身に沁みるほどに理解致しました』



死んだはずの魔女の体が煙となるように宙に舞い上がったかと思えば、突然現れた男と揃いのような真っ白な少女が魔女のいたはずの場所に収まり、失意の表情にて言の葉を落としたから。


黒い、この世の穢れを集めたような黒い髪も、漆黒の双眸も。断末魔の声を醜くあげていたその薄い唇も時を戻したように戻り更にはこの世の者とは思えない程に美しく変わっていったのです。陰湿な印象を与えていたその少女の控えめな性格までもどこか神々しく、王たちはそれらを目の当たりにして初めて彼女と彼女を抱える者の言葉を理解し顔を青くして狼狽し始め。



『私は…私が愛した国と民を守りたいと思い、迫りくる脅威より守ろうと思っていましたが、私が思い、生きた時代を……思いを、受け継いだかつての祖国の血はもう、ここにはないのだと。子供ら自ら教えられました』



ぽろぽろと涙を溢しながら彼女は諦めきったように目を伏せると抱き上げた青年に頭を預け、息をか細く吐き出し力尽きたように一切の動きを止めました。



「僕は、この国を。この事態を絶対に許さない。もう二度と君達の血筋には神の加護も微笑みも慈悲も何も齎されないと知るがいい」



怒りを隠しもしない青年の鋭い眼光と震える声に呼応するかのように地が揺れ、凍てつくような風が吹き荒れ雷が轟き閃光が一筋彼らのいた場所へと落ちればそこに青年と彼女の姿はもうありませんでした。


代わりに深く深く大地に刻まれた戒めの印が断罪の場所を中心に一国に広がり、事態を漸く認識した者達が慌てて神殿へと駆けつけ、祈りを捧げようと神を模した像はそれを拒むように罅が入り石榑と化しました。


何度職人に作り直させても神殿に入れる前に崩れ、外に祈りの場を作ろうにも同じようにがらがらと音を立て壊れていきました。


神の逆鱗に触れた事実に慄き国外へと脱出しようと夜闇に紛れ動いた貴族らも印の外へと出ようとすれば何故か断罪の場へと逆戻りするばかり。


作物は元より御子を呼び出そうとする前より実りが悪く、日に日に国は弱り、けれど決して滅びを迎えられもせず少数の人間がいつまでも残され、神を呪い、自分達の祖先らに唾を吐き怨嗟ばかりが募る、痩せた人とは思えない目のぎょろぎょろとした姿で互いを罵倒し合い。


それを遠目に見た各国は恐れ、決して近づく事を許されない負の大地と呼ばれる場所と成り果てました。


今でもその神の怒りを買った不毛の地は存在し続けており、きっとその中では誰がともなく声を荒げているのでしょう。


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