第六話:友人達との午後ティー
遅くなりました。
やって来た馬車に皆乗り込む。コルトは憲兵達との手続きに残るらしい。
「たまたまお近くにいてよかった。ではお嬢様、よろしいですか。」
「ありがとうロラン、お願いします。」
そう、考えてはいけないの。分かってます。
馬車に乗って安心したのか、少しずつ会話し始める。
「今日は災難でしたね。みなさん怪我とかなくって良かったです。」
いつも通りのアンビル。キューティクルの輪もいつも通りだ。
「アンビルさん、あの人はどこから現れたのですか?護衛されてるんですか?」オルトンさん、あなたの疑問はもっともです。
「どこからでしょうね。いつもどこからか分かりません。今は護衛もつけておりませんので。」
残念ながら答えを知りません。あえて言うならアーレム商会からでしょうか。
「アンビル殿、私、いや私達はあんな戦闘を間近で見たのは初めてなんだが、その、慣れているのか。」
「そうかもしれませんね。幼い時から誘拐犯?みたいな方達が寄ってくるので、慣れてしまったのかもしれませんね。」
アラニスが目を輝かせて言う。
「ティファラさんは凄いな。あの強さは騎士団でもお目にかかれないぜ。」
「ありがとうございます。」
「ティファラはすっごく気が利きます。強さなんておまけみたいなものです。ただ、ああいう時に口が悪いのはどうかと、いつも思いますけど。」
「申し訳ございません、ですがありがとうございます、お嬢様。」
「何気に、あの、コルトさん?百発百中で一矢も外してないんだけど。」マルーンさん、魔法以外で食い付くなんて。
アーレム商会に到着すると、クンドーが出迎えて挨拶する。
「アンビルお嬢様、ご学友の皆様、ようこそお越し下さいました。私、頭取のクンドーと申します。ご案内致しますので、どうぞこちらへ。」
「クンドー、お父様はどちらにいらっしゃるのですか。」
「旦那様は商談にお出かけしておいでです。」
「分かりました、ではお部屋に参りましょう。」
いつもの居室へと向かう。途中、すれ違う従業員達がようこそ、いらっしゃいませと声をかけてくる。皆イキイキしている気がする。
多分気のせいではないのだろうが、気にしたら負けである。
「では、ごゆっくり。すぐにお茶などお持ちしますので。」と、言ってクンドーは下がっていった。
ノックがあり「失礼します、お茶とプリンをお持ち致しました。」
7人分を14人で持ってきた。お茶とプリンは別々で。無駄に思うがいつもの事なのでスルーしておく。
「美味しそー、本当甘いものは別腹かもね。」
「うん、美味しいわ。」
良かった、ラバーナの方にも美味しいと言って頂けて。
「うまいっ!これは我が人生でベストプリンだ。」
アラニスさんは本当にプリンがお好きなのね。オブ・ザ・イヤーとかあるのかしら。
「喜んで頂けて嬉しいです。私も初めて食べましたが、本当に美味しいですね。」
「僕は甘いものが苦手で。」今日ぐいぐいのオルトンさん、失速。苦手ではしょうがないですよね。
「実はアレムさんに会ってみたかったのです。アーレム商会のアレムさんはストルクでも有名ですので。勿論アンビルさんも。」
まあ、どうしましょう。お父様の威厳の為にも断った方が良いのでは?
「そうですね、お父様もお戻りになれば顔をお見せになるでしょうから、その時はご紹介いたします。」
それからは話が弾んだ。
「アンビルちゃんはこんな所に住んでたのか。とんでもないお金持ちだな。」
「私自身のものではありませんので。」
「将来はアーレム商会を継ぐんじゃないの。」
「どうでしょう、今はまだ考えていません。」
『ガシャガシャガシャン!』
廊下から食器を落とす音が盛大に聞こえて、みんな壁を見る。「大丈夫か。」「なになに?」
「そういえば、合格記念セールの時、あのパパロッティ様にお会いしてお話ししましたよ。」
ダメダメ、気にしたら負けです。
また会話が盛り上がっていく。
魔法打ち上げ大会の話は異国出身の2人だけ見てなかったらしく、みんなの炎の鳥の話に驚愕していた。
先日の剣術の話はまたもやパパロッティさんの話で誤魔化せた。初めてパパロッティさんに心から感謝した。
「オルトン、ストルク神聖国ってお堅いイメージなんだけど、実際どうなんだ。」
「どうでしょう、普通だと思いますけど。そう言えばこの国には決まった宗教がないんですね。そちらの方が信じ難いですよ。」
黒髪の間から鋭い視線を向ける。
「我がストルクにはボンスラル教の聖都スジャがありますからね。ストルクの民は皆ボンスラル教徒ですよ。」オルトン君どや顔ですね。
「聞いたことがあるな、唯一、神の御告げがあるとか。」イプシルさんもよく知ってますね。
ペーニャさんが難しい顔で言う。
「最近、ラバーナはいろいろ問題があって、キナ臭いって父が言ってましたわ。」
「ペーニャちゃん、聖魔共和国の魔物と共存ってどんな風になってるの。」
「人間と魔物の住む区域を分けていて、魔物達は代表の頭の良い魔物が纏めています。それが何ヵ所かあって、ある程度力を持っています。」
「そんなの上手くいくんですか。人間相手の法など通用しないでしょう。」オルトン君嫌そうです。悪い思い出でもあるのでしょうか。
「今までは結構良かったのよ。最近バランスが崩れて、双方ギスギスしてて危ないのよ。」
「何も起きないといいね。」ミルノさんはやっぱり気遣ってくれますが、その発言はフラグなのでは。
「それとは別にヘイゼルの森に行ってみたいの。」
「ペーニャさん、私ついこないだ行きました。美しい自然のいい所でした。」
「森の守り神って言われている白い狼を調べてみたいの。ラバーナでは白き狼は神の使いとして神聖視されてるのよ。」
「我がストルクでは悪魔を守護する者として忌み嫌われてますが、真逆の存在とは面白いですね。どっちが正しいか興味深い。」
「警備隊経由で騎士団にも伝わってきてるらしいぞ。もう何人も命を救われた狩人がいて、ヘイゼルの森の守り神ってのは本当らしい。」
「班の自由研究にでもしてみる?」相変わらずミルノさんは纏めるのが上手です。
お茶とお菓子が二度追加され、その度に従業員達が押しかけてきたが、やはりいつもの事なのでスルーしておく。
門限に間に合うように馬車で送ってもらった。結局プチテゥールには行ってない。アレムの帰宅も間に合わなかった。
因みにアーレム商会ではアレムに今日のアンビル訪問は伝えない。うるさいからだ。
ティファラには従業員達からお嬢様勧誘成功報酬の沢山のデザートが進呈された。
(王都ピズニー某所にて)
「失敗だと?なんで小娘一人捕まえる事も出来んのだ。」
「見ていた者の話では、学生達を囲んだところ、どこからか援護と護衛が現れて、2分かからず全滅したと。」
「役立たず共め、どうなってる。まさかこちらの動きがバレているのか。」
「いえ、まだそうと決まった訳では。」
「何故分かる?護衛がいたならバレてるだろうが。」
「いえ、その護衛はどうもアーレム商会の者だったらしく、運悪く一人娘のアンビルが一緒の時に襲いかかって全滅したと。」
「バカが。」
「なにぶん全寮制の学院ですのでなかなか機会がないのです。」
「エルノイアでは我々が直接介入する訳にはいかんのだぞ、分かってるのか。」
「また休みの日に出かけないか見張りを付けておりますので、もうしばらくお待ち下さい。」
「もうすぐ事が起きるのだ。なんとしても人質にせねばならん。」
この者達は外見は人に見えるが半獣人の魔物であった。
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