第四十八話:大事件
遅くなってすいません。
サーズとエマヨは喫茶店の一角で話し込んでいた。
「大体なんで言われるままに監禁されてんだよ?フーレリなんてどう見たってビステルの奴じゃねーか。」
「ああ、最初からそう言ってたぞ。ビステルからお願いがあります、とか言って訪ねて来たんだ。最近海の向こうの人間たちの大陸で、どっかにどっかがちょっかい出したら返り討ちに遭って全滅させられた、とか。それで仇討ちしたいからザバスに超法規的措置で協力して欲しいって。」
「なるほどな、ラバーナに血縁がいたか増援でもしてて全滅させられたってところか...ビステルは傭兵を貸し出したりもしてるからな。」
「問題はお前やイーノスの了解がいるだろ?説明も説得も面倒だったんだ。だからお前らに知られないように上手くやれば?って言ったら、完璧な策がありますとか言い出してさ。」
「それで監禁か、勝手にやるから了解もいらないと...なあ、お前監禁される必要なくないか?」
「あったぞ、グラタンが付いてくる。城の奴らは週一回くらいしか出してくれない。」
「お前そもそも飯食う必要ないだろ。」「必要だぞ、グラタンは美味しいじゃないか。」
そうだな、グラタンは美味しいな。サーズはエマヨの頭にゲンコツを落とした。
アンビルは馬車に戻って休んでいた。ティファラの煎れるお茶は美味しく、茶菓子の大福も美味しかった。外を見ると守備隊は引き上げて帰るところだった。
窓から手を振ると副隊長のスタット以下全員がこちらをガン見しながら帰って行く。何かあるのかしら、と思いながら見えなくなるまで長いこと手を振っていた。
「お嬢様、これからどうされますか?もう少し体を動かしますか?」ティファラが穏やかに尋ねてくる。
「そうですね、まだお日様は落ちないでしょうから、もう少し体を動かしましょう。」もう少し運動する事にして馬車を離れる。ティファラは歪なTの字の形をした棒のような物を二本持って来ていた。
「ティファラ、それは?」「こちらはトンファーと申します武具で、私の一番得意な武具でございます。こちらは木製でございますが、有事の際は金属製の物を使用する場合もございます。」先が尖っているえげつないやつである。体術を主体にしているティファラにとって、攻防一体の武器であるトンファーは鬼が金棒を持つが如しであった。
どうやらティファラにとってもアンビルは訓練相手にちょうど良いようで、久しぶりに楽しかった。
並んで歩いているとクレーターの原の北の向こう、なだらかな丘陵が続く道から大規模な商隊がやって来ていた。遠目に見てもかなりの規模で、馬車5台、護衛は40騎ほどはいるだろう大集団であった。
「どこの商会かしら、すごい規模ね。」「この時期にしては珍しいですね。」アーレム商会でもあの規模の商隊を組むのは珍しいほどの規模であった。
何故だろう、クレーターを反時計回りに回って来る。王都を目指すならそのまま時計回りで進んだ方がいいはずなのに。
「お嬢様、何やら様子がおかしいようです。私が話を聞いて参りますので、こちらでお待ち下さい。」いつの間にか現れたロランがこう告げて商隊の方へクレーターの淵を小走りに走っていった。
クレーターの向こうで商隊の先頭を行く馬上の護衛と何やら話しているロラン。話がついたのか、振り返ってこちらを向いた刹那、背を向けたロランを護衛が馬上から斬りつけた。
「あっ!」クレーターの中へ転がり落ちていくロラン。「ロランっ!!」無事を確かめようと駆けだす寸前、「お嬢様こちらへ!」有無を言わせずティファラに手を引っ張られる。「ティファラ、待って!ロランが!」悲痛の表情で訴えるアンビルだがティファラはぐいぐい手を引っ張って行く。
「お嬢様、今はお嬢様の安全が第一です。賊の目的はお嬢様である可能性は高いと思われます。」振り返りもせず告げるティファラ。小走りに目指しているのは例の岩山らしい。
「でも、でもロランが無事かだけでも...」「お嬢様、今はご自身の身の安全だけをお考え下さい。例え私の身が危うくとも、お嬢様はお一人だけでもお逃げ下さい。」普段より冷静な声音に切実さを感じてしまう。背後を見ると、商隊が速度を上げて追って来ていた。何とか岩山の麓の岩にたどり着く。馬上の敵と馬車が押し寄せ、包み込むように囲まれてしまった。
敵は馬を下りて集まって来ていた。馬車からもぞろぞろと降りて来たが、こちらは人間ではなかった。どうやら獣人らしい。皆、人型だが人間ではなかった。3,40人はいそうだ。
「悪いな、俺達傭兵には恨みなんてないんだが、アンビルお嬢様には死んでもらう必要がある。こちらの獣人の方々は仇討ちだそうでな、俺達は手伝いみたいなもんだ。」ロランを斬った先頭の男が代表して声を上げた。
「お嬢様、私が敵を引き付けます。その間に馬を奪ってお逃げ下さい。決して戻ってはなりません。よろしいですね。」ティファラが小声で淡々と話すと、武器を構えて飛び出していった。
「一人出て来たぞっ、こいつは俺達で囲め!」駆けていくティファラを傭兵達は追いかけていく。手薄になったが、獣人達が囲んでいるので逃げられない。
アンビルは茫然としていた。ロランは斬られ生死が分からない。ティファラは自分を逃がそうと決死の覚悟をして飛び出していった。何故?どうしてこんな事に?今までに感じた事のない感覚に戸惑った。
それはアンビルが生まれて初めて感じた怒りだった。仇討ち?何を言ってるの?それが私達と何の関係があると言うの?抑えようのない感情に苛立つアンビル。
「お嬢様を狙うなど不届き者め、かかって来い!」岩山から離れながら叫ぶティファラ。半分くらいはこちらに来たが、全て倒せるかは未知数だった。
続きを急ぎますが、時間がかかりそうです。すいません。




