第百三十一話:その後のコメンザ
遅い、短い、進まないですいません。
よろしくお願いします。
謁見から数日後のアーレム商会コメンザ支店を訪れていたドマクテ大臣とスラバト商会代表のスラバトは、応接室でアレムと会談していた。
「それでは城壁修繕の物資はアーレム商会が受け持ち、人夫などの手配はスラバト殿にお願いするという事でよろしいですかな。」今日のアレムは黒い作務衣を着て髪は下ろしている。なんの事はない普段着だが悪気はなかった。
「よろしいのですか?それではアーレム商会の負担が大きくなってしまいます。国から費用が出ているとはいえ、アーレム商会は足が出てしまうのでは?」スラバトはかなり驚いている。ドマクテも同様だった。
「なに、構いませんよ。うちのアンビルが破損させてしまったのです。全部負担してもいいぐらいですよ。」破壊である。娘想いのアレムは言葉だけでも軽くしてみたのだが、逆に軽々壊した感が増してしまう。
「いや、さすがはアーレム商会の鷹アレム殿だ。これでは頭が上がりませんぞ。」ドマクテも感心していた。アレムには打算や計算など一切なかった。
「それに今後の事業提携など、我がスラバト商会としては申し分ない計らい、感謝致しますぞ。」今後の商品の確保、流通、卸し、販売など事細かに事業提携、統合活用する話が進んでいた。経営が芳しくなかったスラバト商会にとって、正に渡りに舟だった。
因みにスラバトからアーレム商会傘下に入りたいと直々に申し出があり、アーレム商会がコメンザ王家御用達商会となるまで二年かからないのであるがアレムは夢想だにしていない。
「ところでお嬢様は如何お過ごしですか?巷で随分と評判になっているようですが...」ドマクテが興味津々で尋ねてくる。
「お陰様で友人達と楽しく過ごしておりますよ。今日は皆でピクニックに行ったみたいです。スラバト殿、トメルモ山の別荘をお貸し頂きありがとうございます。コメンザは良い所ですな、海も山もあって。」アレムはゆったりとソファーに腰掛け遠い目をした。
「そのトメルモの別荘なんですが、最近周囲に魔物がよく出没するらしいのです。柵などで対策してありますし、なんと言ってもアンビル嬢ですからな、心配する事もありますまい。」スラバトの余計な一言は勿論ただのフラグであった。
アンビル達はトメルモ山へピクニックに来ていたのだが、実状はただの逃避行だった。コメンザでアンビルとエクスカリバーは話題になりすぎ、アーレム商会コメンザ支店は連日満杯の来客で売り上げの最高記録を更新し続けている。
買い物客達の目的は当然アンビルだった。
一体どんな少女なのか、見てみたいと思うのは当然だろう。更にそれが美しいと評判のアーレム商会の一人娘アンビルなのである、誰もが一目見てみたいと押し掛けるのは必然だった。
連日詰めかける買い物客によってアンビル達の自由は完全に奪われてしまい、アンビルは海水浴どころか窓から顔を出す事すら出来なくなった。折角のバカンスが台無しである。
色々考えた末、ちょっと落ち着くまで王都を離れて山にある別荘で過ごす事にした。メンバーはアンビル達一向と薔薇乙女聖騎士団、サナビルとその婚約者でスラバトの娘パルケルも同行していた。A.S達はアーレム商会周辺の警備の為同行していない。
今回の騒動でアンビルと共に一気(無駄)に有名になったA.S (アンビル・スクワッド)には余所からの転属希望者、新規の入隊希望者が大挙しており、危うくコメンザ軍を乗っ取る勢いだった。
出発前にアンビルから「そういえば皆さん、安全第一で何よりも人命と安全を優先して下さいね。」と、挨拶され「はっ!命懸けで取り組みます。」などと、ベタなやりとりをしていた。今はアンビルもサナビルも不在の為、大人しくアーレム商会の周辺警護、近辺整理に当たっている。
後に厳し過ぎる訓練の為命を落とす者が続出する(実際はしない)と言う伝説の救出部隊、通称A.S、俗称ホワイトショルダーが人命救助、治安維持を最優先にするのはこの時のアンビルの何気ない一言に端を発しているのである。が、勿論アンビルは後にもとんと気付かない。
ありがとうございました。




