第九話:日常風景?
前話と区切りたくて分けました。
この日は魔法実技があるのでアンビルは院長室で特別授業を受けていた。
「魔法において、呪文や魔力などと等しく重要なのが想像、イメージする事だ。それにより、より明確に効果が発揮される。」
「イメージがないとまずいですか。」
「いや、条件さえ満たしていれば魔法は発動するんだ。ただイメージ出来ていれば、より狙い通りの効果を発揮させやすいのさ。」
「なるほど、分かりました。これからはイメージしながら魔法を使います。」
いいこと聞いたわ。だったら小さく小さくイメージすれば普通の魔法になるかも。
「まあ、アンビル君は威力を増すイメージとかは気をつけてやって欲しい。とんでもない事になりかねないからね。」
「はい、注意してやってみます。」
「ほどほどにするんだよ。さて、少し休憩してお茶をいれよう。お菓子も用意してある。院長の特権でね。」軽くウィンクしてお茶をいれるコリンス。
「ありがとうございます、コリンス先生。」
「僕も書類仕事よりもよっぽど楽しいからね。」
「私、コリンス先生の事を詳しく知りませんでした。国王陛下の弟さんで、魔法賢者だとか。」
「弟なのは本当だけど、魔法賢者はちょっと言い過ぎというか、大袈裟に過ぎるよ。ちょっと魔法を研究して色々と詳しいだけさ。」
「でも、オルトンさんがストルクでも有名だと。」
「ああ、昔まだこの辺りの国々が小競り合いしていた頃に色々とあったのさ。」
「戦争ですか。」
「いやいや、そこまで大規模な話じゃないよ。国境付近でのいざこざとかが多かったな。今ちょうど、ラバーナ聖魔国がキナ臭くて、我が王国でも警戒して情報収集しているところでね。」
「まあ、ペーニャさんの。」
「そうだね。彼女は留学生だが、避難の一面は否定出来ないだろうね。」
「戦争になるのですか。」
「まだなんとも言えないが、人間と魔物の争いというのは、昔から続いているからね。」
「難しい問題なんですね。」
「聖魔国のあるラバーナ半島の向こうにある魔国群も関係あるんではないかと考えてるよ。多分最も近いザバスという国かな。」
「まあ、海の向こうの国ですか。」
「そう、魔物や魔人の国々だ。彼らは侵略するのが好きだからね。隙あらば攻めて来ようとするんだ。今回のラバーナ聖魔国の紛争が拡大しない事を願っているよ。」
なんという事でしょう。隣国で戦争が起きようとしているなんて。ペーニャさんも心配しているでしょう。お力になれるといいのですが。
「さあ、休憩終了だ。続きを始めよう。」
「はい、先生。がんばります。」
今日はいつものお風呂に四人並んで浸かる。
「アンビル、院長の特別授業って何やってるの。」
「魔法の成り立ちや扱い方なんかを教えて頂いてます。」
「なんだか魔法学っぽいな。」
「そうですね、そんな感じです。まだ私には実技は早いのでしょう。しっかり勉強してやってみます。」
「マルーンが羨ましがるわよ、きっと。」
「そうでしょうか、結構雑談とか多いので微妙ですけど。ペーニャさん、私ラバーナのお話を聞きました。ご家族は大丈夫ですか。」
「心配してくれてありがとう。まだなんともないみたいなの。」
「ラバーナがどうしたのだ。」
「人間と魔物が紛争中らしいのです。」
「それは心配ね、ペーニャ。」
「ちょっと前までは平和だったのに、なんでこうなったのか。」
「辛いな。何か出来る事があれば言ってくれ。」
「みんなありがとう。まだ大丈夫だから、あまり気にしないで。」
どんどんフラグが増えていく。
1日も終わり、アンビルが小川に花びらを流す夢を見ている頃、寝ていたアンビルの体がすうーっと1メートルほど浮かび上がった。そのまま垂直になり、直立したまま宙に浮いていた。
今のアンビルにキューティクルな輪は無かったが、デフォルメされたヘビの抱き枕を抱いていた。
ゆっくりと目を開けると、その眼球は血のような赤に染まっており、黒目に金の光彩が妖しく輝いていた。髪はおでこの上から巻いて左右対称なツノを形成して尖っていた。
夢の中のアンビルは花びらに飽きたのか、花ごと小川に投げ入れていた。
なんの拍子もなく、アンビルの体が可愛いヘビの抱き枕を抱いたままふっと消えた。
次は時間がかかるかもしれません。よろしくお願いします。