第二部プロローグ:アンビルレポート
オーメソ(大いなるメソッド) ダミアンチートな天然お嬢様は何も知らずに無双するの第二部と同じものです。
エルノイア王国諜報部調査室にて。
アンビルはノール暦783年9月9日朝、アーレム商会代表のアレムとその妻シエスの間に第一子として生を受ける。
3歳の時、突如として流暢に喋りだし、それから2年の間アレムに数々の提案、指示を出し、事業や経営施策を実施させ、今日のアーレム商会の礎を築いたと言う。
5歳の時、母シエスを病気で亡くす。以後は穏やかな性格の年相応の子供となり、父アレムと共にイーシトンに住み、カーメルン学園に入学、卒業して今に至る。
アーレム商会は王国各都市に店を構える規模の商会ではあったが、アンビルの指示を実行し店舗数と従業員を増やしていった。
ノール暦788年の大飢饉の際、蔓延した病で母シエスを亡くした後に、アレムへエルノイア王への訴えを懇願した後、3日ほど寝込み、回復した時には以前の記憶が無かったとされる。
カーメルン学園では学園創設以来の優秀な生徒として、時々特別個人授業を受ける事があったが本人には特に問題はなかったとされている。
卒業してエルノイア王立高等学術院への進学が決まっている。
「報告は以上です。不審な点はいくつかありますが、アンビル自身は温和で善人、悪意のない人物として認識されています。」
「不審な点とは?」
「はい、まず3歳から5歳までの言動、行動がとても幼児とは思えないもので、周囲の人間をかなり驚かせました。アーレム商会へのさまざまな施策の提案などですね。具体的には、孤児院、養護施設などの買収、経営。借金返済に困窮する家庭などへ職の斡旋など行い、生活水準をある程度維持出来るよう手助けしました。孤児や生活苦の家庭の子供にもきちんと教育が受けられるように支援し、奨学金制度を設けて、望めば誰にでも奨学金を受けて進学出来るようにしています。成人し就職の際には、希望すればアーレム商会で従業員として採用しています。」
「その結果、アーレム商会に恩義を感じて捧職する者、支援などを受けて育った孤児や子供たちなど、現在のアーレム商会にはただならぬ忠誠心を持つ者が多数を占めています。特に父アレムよりも娘のアンビルに感謝し忠誠を誓っている者も多いそうです。」
「魔法に関しては?」
「はい、これに関しては信憑性の低い話が多く、確認がとれておりません。」
「調査をしてみた感想を聞かせてくれ。」
「はい、正直驚きました。幼児に提案出来たとは思えない内容の提案ばかりで、信憑性は魔法同様低いのではないかと思っています。どのような目的、将来を描いて提案したのか興味深いと思います。もし、何か良からぬ事を企んでいる人物であったなら警戒する必要があったでしょう。何故なら王国中に忠誠心の高い配下を多数従えている人物となっているからです。
ですが、アンビル自身は特に自覚も無く、他人に命令などしない温厚で穏やかな人物ですので、それほど心配する必要はないと思います。おそらく、母親の死亡以前の記憶が無いため、感謝や忠誠など尽くされてもピンとこない為でしょう。」
「心配する必要はないと?」
「はい、正直記憶が無いのを差し引いても、本人はかなりの、その、何と言いますか、間違いなく『天然』ですよ。『人工』でも『養殖』でもなく。」
「分かった、調査報告ご苦労。下がっていい。」
「はっ、失礼します。」
シリーズ管理に挑戦中です。よろしくお願いします。